【3454】 ◎ ジャック・ウェルチ/スージー・ウェルチ 『ウィニング 勝利の経営 (2005/09 日本経済新聞社) ★★★★☆ 《再読》

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○経営思想家トップ50 ランクイン(リンダ・グラットン)

「人」の問題の重要性を訴えている本。初読時の評価○から◎に変更した。

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ウィニング 勝利の経営』['05年]

 2020年に逝去したゼネラル・エレクトリック社の前CEOジャック・ウェルチによる本書は、強烈なリーダーシップでGEを再建したウェルチが、「人材採用のチェックポイント」「ライバル会社に勝つ戦略の選び方」から「昇進するためにやるべきこと」「人に辞めてもらうときのポイント」まで、「勝つためには何をすればよいのか」ということについて、経営やビジネス全般にわたって述べた本です。

 PARTⅠ「最初の四つの原則」では、「すべての底に流れるもの」、つまり著者の経営哲学の四つの原則について書かれています。第1章で「ミッションとバリュー」の重要性を強調し(バリューをミッションより上位に持ってきているのが興味深い)、第2章で「率直さ」の絶対的必要性とそれをどう人から引き出すかを、第3章で「選別」は残酷な弱肉強食主義だという意見に反駁し、能力主義に基づく選別の効用を、第4章で「発言権と尊厳」は誰にでもその権利があることを説いています。

 PARTⅡ「あなたの会社」では、会社の組織の仕組み、人材、業務手順、カルチャーについて書かれています。第5章で「リーダーシップ」、第6章で「人材採用」、第7章で「人事管理」、第8章で「別れ道(解雇)」、第9章で「変化(変革)」、第10章で「危機管理」について取り上げており、人事パーソンにとっては読みどころではないかと思います。たとえばリーダーシップについては、リーダーが守るべき8つのルールを挙げ、まず第1のルールとして、リーダーはチームの成績向上をめざして一生懸命努力するべきであり、リーダーの時間とエネルギーはメンバーが成果を出すためのサポートに投入すべきで、具体的には①評価する、②コーチする、③自信を持たせるの3つのサポートがあるとしています。人材採用においては、候補者が「4つのE」(Energy(エネルギーまたは情熱)、Energize(元気づける)、Edge(決断力)、Execute(実行力))を持っているかどうかを識別せよとしています。また、人事管理については、人事部門を組織の上の方において権限を与え、官僚主義に陥らない評価システムを使い、よい人材の士気を高めるべきだとしています。

 PARTⅢ「あなたの競合会社」では、自社の外の世界について語っています。第11章で、戦略的優位性をいかに作り上げるかを、第12章で、意味のある予算策定法について、第13章で、新規事業で成長する方法、第14章で、Ⅿ&Aによる成長について述べ、最後に第15章で、品質管理の手法であるシックス・シグマについて、その効用を説いています。

 PARTⅣ「あなたのキャリア」では、個人が職業人生の軌跡とクオリティをどう管理するかを述べています。第16章で、「天職」を探し当てたら仕事は趣味になるとし、第17章で、昇進には近道がないとしています。また、第18章で、誰もが一度や二度は遭遇する嫌な上司のもとで働くということについて語り、第19章で、仕事と家庭のバランスをとるために上司とどう向き合うかを述べています)。そしてPARTⅤ「最後のまとめに」として、第20章でQ&Aが付されています。

 このようにして見ていくと、前半部分のほとんどは人事マネジメントの話で占められていることが分かり、「選別」することの重要性や人材採用、人事管理におけるポイント、人を辞めさせる際の留意点等について触れられています。したがって、人事パーソンにお薦めです(よくまとまっていて読み易いのは、共著者である妻で元ハーバード・ビジネス・レヴュー誌の編集長スージー・ウェルチの功績か)。

 GEにおいてウェルチは、部下に敢えて過大なノルマを与えて克服させ、業績・人材も同時に伸ばすという、いわゆるストレッチ・ゴールの手法も採っていました。組織論の1つとして日本にも導入する企業が現れましたが、過大な要求に精神的に切れてしまう社員も少なくないため、成功とは言い難いものとなってしまいました。本家のGEでも、後にウェルチの人材育成の手法は時代遅れだとして軌道修正を図っています。

 こうしたこともあって、ウェルチは「20世紀で最も成功した偉大な経営者」とかつて言われたほど現在は評価されていないようですが、個人的には本書を再読して、改めて「人」の問題の重要性を訴えている本であることが再認識させられ、(世間の逆を行くみたいだけれど敢えて)初読の時の評価○から◎に変更しました。

【2701】 ○ 日本経済新聞社 (編) 『マネジメントの名著を読む』 (2015/01 日経文庫)

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