【3405】 ○ 田澤 由利 『テレワーク本質論―企業・働く人・社会が幸せであり続ける「日本型テレワーク」のあり方』 (2022/02 幻冬舎) ★★★★

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テレワークが生み出すたくさんのメリット(啓発的)。テレワーク課題の克服法(実践的)。

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テレワーク本質論 企業・働く人・社会が幸せであり続ける「日本型テレワーク」のあり方』['22年]

 テレワーク専門のコンサルティング会社の設立者である著者によれば、感染防止のために多くの企業がテレワークを実施し、企業も働く側もそのメリットを実感したものの、コミュニケーションやマネジメント、生産性の低下などの課題にぶつかり、後戻りする企業が増え始めていて、一方で、課題を克服し、さらにテレワークを推し進め、大きく成長していく企業もあり、テレワーク推進はいま岐路にあるとのことです。

 第1章では、会社のテレワークが、コミュニケーションが取れない、マネジメントができない、生産性が上がらないといった課題にぶつかっているのならば、それは、テレワークに対する先入観や思い込みから「間違ったテレワーク」を実施したためであるとして、12の「間違ったテレワーク」の類型とその問題点を挙げ、この問題に向き合わずしてテレワークの成功はないとしています。

 第2章では、テレワークは、企業にとっては生産性向上、人材確保、働く人にとってはワーク・ライフ・バランス向上、さらには日本における労働力確保、少子化対策、地方創生など、数多くのメリットを生み出すものであるとしています。さらに、そうしたテレワークがなぜ日本では普及しにくいのか、その理由を考察し、欧米の真似でない日本型のテレワークの実現を訴えています。

 第3章では、適切なテレワークを導入するための考え方や方向性を、「仕事が限られると思い込むなかれ」「一緒に仕事をしている感を大切にせよ」「雑談してしまう〈場〉をつくれ」「ホウレンソウをデジタル化せよ」など「テレワークを成功に導く心得十か条」としてまとめ、それぞれを解説しています。

 第4章では、テレワークのコミュニケーションをよりリアルに近づけるための重要な要素として、①リアルタイムの会話、②話しかけるきっかけ、③チームの業務遂行、④インフォーマルな会話、⑤チームの一体感、の5つを挙げています。また、オンライン会議を活性化したり、オンラインとオフラインの人が混在する ハイブリッド会議をフェアに行うためのヒントや、雑談しやすい「場」と「雰囲気」のつくり方、「ホウレンソウ」をデジタル化する際のコツなどを説いています。

 第5章では、テ レワークでのマネジメント実践のポイントとして、通常の労働時間制度、フレックスタイム制、みなし労働時間制などのパターンを示し、テレワーク時の労働時間管理の方法と就業規則・運用ルールについて解説するとともに、自社で開発した、社員が「いつ」「どこで」「どんな仕事」をしているかを確認できるツールを紹介し、時間あたりの成果をどう把握するかを解説しています。

 第6章では、テレワークの広がりによるオフィスの変化やワーケーションへの関心の高まり、まちづくりへの活用や障がい者雇用の促進などの可能性を挙げ、日本型テレワークが企業・働く人・社会全体のウェルビーイングを実現するとして、本書を締めくくっています。

 テレワークは単なる「感染防止のための在宅勤務」ではなく、企業にとっても、働く人にとっても多くのメリットとがあるものであり、さらに社会にとっても、労働力確保、少子化対策、地方創生など多くのメリットを生み出すものであって、企業、働く人、社会全体を幸せにするとしている点が啓発的です。

 一方で、第4章における「テレワークでのコミュニケーション実践のポイント」などはたいへん具体的であり、オンライン会議を企画したりファシリテーターを務める人にはすぐにでも使える配慮や工夫などもあって、参考になるかと思います。

そうした人に限らず、テレワークに課題を抱える人やテレワークを進めたい人にお薦めですが、著者が本当に読んでほしいのは、テレワークの必要性に疑問を感じている人なのもしれません。


労働問題・人事マネジメント・仕事術

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