【3392】 ○ ジェフリー・フェファー (村井章子:訳) 『ブラック職場があなたを殺す (2019/04 日本経済新聞出版) 《社員が病む職場、幸せになる職場―スタンフォードMBA教授の警告』 (2021/10 日経ビジネス人文庫)》 ★★★★

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「●メンタルヘルス」の インデックッスへ ○経営思想家トップ50 ランクイン(ジェフリー・フェファー)

ブラック企業を辞められない人に再考を促す本だが、人事パーソンにとっても極めて啓発的。

ブラック職場があなたを殺す.jpg ブラック職場があなたを殺す2.jpg  社員が病む職場、幸せになる職場.jpg   Dying for a Paycheck.jpg
ブラック職場があなたを殺す』['19年]『社員が病む職場、幸せになる職場 スタンフォードMBA教授の警告』['21年]『Dying for a Paycheck: How Modern Management Harms Employee Health and Company Performance―and What We Can Do About It』['18年]
社員が病む職場、幸せになる職場3.jpg 本書は、スタンフォード大学ビジネススクール教授で、『人材を活かす企業』などの著作で知られる著者が、職場のストレスはどうやって解決できるかという問題に取り組んだものです(原題:Dying for a Paycheck「給料のために死ぬ」)。2021年には『社員が病む職場、幸せになる職場―スタンフォードMBA教授の警告』と改題されて文庫化されました。

 第1章では、健康な行動は健康な職場から生まれるとし、経営者には選択肢があって、それは、従業員の心身の健康と幸福を重視する方針を掲げ、それによって従業員の医療費、欠勤、労災を減らし、労働意欲や生産性を高める選択肢と、従業員を病気や死に追いやる職場環境を、意図的または無知ゆえに創出または放置すろ選択肢だとしています。

 第2章では、解雇、無保険、シフト勤務、長時間労働、雇用の不安定など10種類の職場ストレス要因を挙げるとともに、それらストレス要因が超過死亡数や医療費に及ぼす影響を統計的に分析しています。この中で「無保険」が、解雇や雇用不安定を上回って超過死亡数の最重要要因となっているのは、米国ならではでしょう。

 第3章では、解雇や雇用不安定が健康に及ぼす影響を分析し、人員削減で企業業績が上向くという統計的証拠はなく、企業は安易に人員削減やレイオフをするべきではないとしており、このあたりの著者の主張は、『人材を活かす企業』から一貫しています。

 第4章では、長時間労働、仕事と家庭の両立困難などについて考察しています。ここでは、日本における「過労死」に言及し、長時間労働が起きる要因を労働者側と企業側の双方から分析しています。また、仕事と家庭の両立が困難となる原因を分析する一方、ワーク・ライフ・バランスに配慮している企業例を紹介しています(米国は日本より両立のプレッシャーが強いのかも)。

 第5章では、健康な職場を支える二大要素として、「仕事の裁量性」と「ソーシャルサポート(困ったときに周囲の助けを得られること)」を挙げています。仕事の裁量性が健康に影響するのは、それが仕事満足度に繋がるためであるとし、また、ソーシャルサポートが自然に生まれる環境づくりをしている企業は、社員を大切にする文化を育んでいるとして、その事例を紹介しています。

第6章では、健康によくない職場で働く人々が、そうとわかっていて辞められない理由を分析し、生計維持のため、有名企業であること、辞める気力が残っていないこと、力不足だと思われたくないことなどを挙げており、 そうしているうちに異常がいつしか正常になってしまう危険性を説いています。

 第7章では、まとめとして、変えられること、変えるべきことは何かを考察し、企業や社会は産業心理学などの手法を活用して従業員の健康と幸福を計測し、社会は「社会的公害企業」を公表する一方、好ましい企業は表彰するなどすべきであるとしています。

 本書に一貫しているのは、従業員の健康と企業の利益は両立するという考えであり、人間の健康と幸福は企業経営においても最も重視されるべきものであるという主張です。直接的には、ブラックな職場だとわかっていながら会社を辞められない人に再考を促す本と言えますが、実証的・理論的であり(とりわけ心理学的側面からの分析に説得力がある)、人事パーソンにとっても少なからず啓発される要素の多い本だと思います。

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