「●人事・賃金制度」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1196】 小室 淑恵 『新しい人事戦略 ワークライフバランス』
「●講談社現代新書」の インデックッスへ
特に1箇所、パラダイム転換となるユニークな提言があった。
『人事制度イノベーション』(2006/06 講談社現代新書)滝田 誠一郎 氏
人事情報・人事政策専門誌のライターとして20年にわたり企業の人事戦略や人事制度改革を追い続けてきた著者による「成果主義」が抱える問題への回答試案といったところでしょうか。
サブタイトルの意味は成果主義を否定しているのではなく、成果主義の歴史は脱・成果主義の歴史でもあり、あくまでも次なる成果主義はどうあるべきかという修正回答案です。
その前に成果主義の歩みを振り返り、また現在の問題点として、成果に応じた報酬格差がキチンとついていないことを挙げているのは、現場を見てきた著者らしい指摘で、その原因として、評価・目標管理制度の運用問題と併せて、「差をつけられない」というメンタリティの問題を指摘しているのも鋭いです。
第3章(90p-167p)の人事・賃金制度の提案部分で、メリハリのある処遇方法や人材活用のヒントとして幾つか示していますが、特権・特別待遇などの非金銭的報酬で報いるというのは巷でも論じられていることであり、「社内FA制度」なども既に大企業を中心に実施例は多い。
個人的に、最も必要であり、ユニークかつ"パラダイム変革"的だと思ったのは、3章の冒頭で述べられている「世代別逆転」成果主義という考えで、若年層ほど成果主義の色合いが強い賃金制度にすべきであるというもの。
同評価であれば上位職層ほど多く昇給するのが当然、という考えが、長く人事の仕事をしている人ほどあるのではないでしょうか。
これではバブル崩壊後に入社した社員は、いつまでたっても今の中高年の賃金水準に届かず、そうした将来シナリオを理解した若い社員から順に会社を去っていく...。
少子化による人材難はもう始まっており、「世代別逆転」成果主義というコンセプトは、ひとつ念頭に置くべきものであるように思いました。
《読書MEMO》
●第3章 人を活かす人事・賃金制度のヒント(90p-167p)
1.ジェネレーション・ギャップ賃金制度―「世代別逆転」成果主義
〈メリハリのある処遇方法 ①〜③〉
2.フリンジ・ベネフィット制度―プロセス評価に応じた特権・特別待遇
3.マイレージ制度―成果以外の貢献度をポイント化して特権・特別待遇
4.報酬ミリオネラ制度―報奨金で貢献に報いる
〈人材活用のヒント ①〜③〉
5.中高年コーチ制度-スタッフ管理職のモラールアップ
6.社内ダブルワーク制度-社内人材バンクを通じた社内アルバイト
7.社内人材マーケット制度-自己申告制度・社内人材公募・社内FA