【2665】 ○ 谷内 篤博 『個性を活かす人材マネジメント―近未来型人事革新のシナリオ』 (2016/09 勁草書房) ★★★★

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今後の人事の潮流を(コンセプチャルに)俯瞰するうえでお薦め。

個性を活かす人材マネジメント.jpg   谷内 篤博.jpg 谷内 篤博・実践女子大学教授
個性を活かす人材マネジメント: 近未来型人事革新のシナリオ』(2016/09 勁草書房)

 グローバル化した企業・社会で必要な人材マネジメントとはどのようなものか。本書は、企業の人事部、コンサルティング会社を経て、現在大学で教鞭を執る著者が、従来の人事管理論を超えて、今後求められるキャリア形成や新たなマネジメントシステムを解説したものであり、全体的な流れとしては集団主義から個性尊重主義へのパラダイムシフトを提言しています。

 まず序章では、企業を取り巻く環境の変化を概観するとともに、これまでのわが国の人材マネジメントの特徴を踏まえ、その変革の方向を大きく
①組織的管理(コントロール)から自律的管理(ディベロップメント)へ
②集団主義から個人尊重主義へ
③会社主導のキャリア形成から個人の自律性を重視したキャリア形成へ
④中央集権的な人事部から戦略的・分権的な人事部へ

の4つに集約し、本書の論理展開に結びつけています。

 第1章では、環境の変化を大きく2つに分け、1つは市場や消費者の変化と経営のグローバル化、もう1つは働く人々の社会観・組織観や仕事観の変化を取り上げ、こうした変化に応えていくために、人事パラダイムを集団主義から個人主義へと転換していく必要があるとしています。

 第2章では、わが国の戦後の人事制度の歴史的変遷を概観し、人事制度の発展段階を4段階に分け、その特徴を明らかにしています。
 (1)第1段階:戦後復興期(1945~1959年)――年功主義人事
 (2)第2段階:高度経済成長期(1960~1969年)――職務主義人事
 (3)第3段階:経済変動期(1970~1990年)――能力主義人事
 (4)第4段階:バブル経済崩壊後(1991~2010年)――成果主義人事

また、コンピテンシーモデルの人事制度としての妥当性、信頼性についても言及するとともに、第5段階としての新たな人事制度を提言しています。それが、個性尊重主義であるということです。

 第3章では、これまでの組織的管理を中心とする人材マネジメントから、個人の自律的管理を重視した人材マネジメントに転換していくことを強調するとともに、自律的管理の人材マネジメントの大きな枠組みを提示し、また、自律的管理に求められるキャリア・アドバイザーとしてのミドル像についても解説しています。

 第4章では、前章の提言に基づき、自律的管理の人材マネジメントを展開するための具体的なインフラ整備として、個人と組織の新たな関係づくりと人事部に求められる新たな役割・機能について解説するとともに、キャリア・オプションの多様化や個人の自律性を重視した新たなワークシステム(複線型人事制度、職種別採用とドラフト会議、社内公募制とFA制度等)について解説しています。

 第5章では、キャリア自律に基づく具体的なキャリア形成のあり方を、最新の理論や考え方を踏まえ解説しています。同時に、自立した個の組織外への流出を阻止する人事施策(A&R施策)についても先進事例を踏まえ、経済的インセンティブ、心理的インセンティブの両面から解説しています。

 第6章では、組織イノベーションの創出に向けた個人尊重主義人事の展開に求められる組織マネジメントとリーダーシップについて解説しています。まず、組織イノベーションを生み出すためにはミドルが戦略ミドルに脱皮するとともに、組織形態もネットワーク型オーケストラ組織に転換する必要性を述べています。また、戦略ミドルに求められるリーダーシップスタイルも創造的リーダーシップに転換していくべきことを、先行研究から著者なりの結論として導き出しています。

 終章では、本書で提唱した人事革新の今後の展望と残された課題について解説しています。

 コンセプチャル度の高い本ですが、企業経営者や人事担当者、経営コンサルタントや研究者、学生などターゲットは広く想定して書かれているとのこと。著者も述べているように、第5章・第6章が本書で提示されている人事革新の核心部分であり(この部分をもっと膨らませて欲しかった気もする)、第5章ではキャリア形成のあり方とA&R施策について、第6章では組織マネジメントとリーダーシップについて書かれています。

 集団主義から個性尊重主義への転換という大きな流れに沿ってかっちりと纏まった内容であり、やや堅めの内容ですが、人事パーソンであれば、今後の人事の潮流を(コンセプチャルに)俯瞰するうえで、こうした本を読んでみるのもいいのではないでしょうか。本書に書かれている変革の方向性は的確な指摘であり、現役の人事パーソンであれば、「近未来型」と言うより、もう既に起きていることとして捉えられるのではないでしょうか。個性尊重主義の人事は2000年代から言われ続けていることであり、先進事例なども紹介されていますが、そうした事例を参照しつつ、自社の中ではどうやって人事革新を進めていくべきかを具体的に検討し、実施して行く時期に来ているように思います。

《読書MEMO》
●戦略ミドルに求られる新たな役割・機能(第6章・216p)
①ビジョン策定機能
 内外の経営環境、自社の競争力の分析の中から戦略課題を抽出し、その達成に向けたビジョン(ロードマップ)を策定する
②コンダクター(旗振り役)機能
 策定されたビジョンや目標の達成に向け、組織メンバーを組織化するとともに、自ら先頭に立ってメンバーを引っぱっていく
③チャネラー機能
 組織内外の情報ネットワークを駆使し、コミュニケーションセンターとしての情報の中枢機能を果たす
④バッファー機能
 ビジョンや目標達成のプロセスで発生する組織間のコンフリクトや、上司と部下の期待する役割のズレなどの調整を行い、組織全体の協働へと導いていく。
⑤カタライザー(触媒)機能
 ナレッジの創出に向け個人の自律性を促すとともに、集団や個人の間に化学反応を引き起こし、組織の創造力を高める。



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和田泰明

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