【1215】 ◎ 斎藤 智文/Great Place to Work Institute Japan 『働きがいのある会社―日本におけるベスト25』 (2008/06 労務行政) ★★★★☆

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日米の「働きがいのある会社」の比較は大いに参考に。調査の今後に期待できる。
 
働きがいのある会社65.JPG働きがいのある会社1.jpg 日本におけるベスト25.jpg 『働きがいのある会社―日本におけるベスト25』 (2008/06 労務行政)

 米フォーチュン誌がヘイグループと共同で毎年発表している「世界で最も賞賛される企業(The World's Most Admired Companies)」ランキングというのがありますが、これとは別に同誌は、サンフランシスコに本部があるGreat Place to Work Institute(GPTW)がサーベイしている「最も働きがいのある会社ベスト100(100 Best Companies to Work For)」というのを'98年からから発表しています。

 本書は冒頭で、この「働きがいのある会社ベスト100」がどのような経緯で始まり、何を基準としてそのように選ばれるか、過去にどのような企業が選ばれ、それらにはどのような特徴があるかが詳しく書かれていますが、やはり上位に来る企業はどれも、経営理念、人材育成理念がしっかりしている一方、ワーク・ライフ・バランス施策が充実しているのがわかります(アメリカのベスト100に選ばれた会社の29%は、社内託児所があるという)。

 '08年のランキングを見てみると、Googleが2年連続で1位で、以下、Quicken Loans、Wegmans Food Markets、Edward Jones、Genentech、Cisco Systems、Starbucks、Qualcommと続きますが(因みに、本書刊行後に発表されている'09年のサーベイではGoogleは4位。'09年の1位は'08年14位だったNetwork Appliance)、「世界で最も賞賛される企業」(こちらは'08年、'09年と連続してAppleが1位)と顔ぶれがかなり異なるように思え、また、1年間でかなり順位が変動するのも興味深いです(過去11年間全てランクインし、平均順位が最も高いのはSAS Instituteだが、'07年は48位、'08年は25位)。

 これと同趣の調査をGPTWが'07年から日本でも始め、本書はその'08年版の調査結果の取り纏めでもあるわけですが、「働きがいのある会社」の日本版の'08年のトップはマイクロソフトで、以下、ソニーマーケティング、モルガン・スタンレー証券、リクルートエージェント、アサヒビール、堀場製作所、日本郵船、キッコーマン、日本ヒューレット・パッカード・・・と続き、ただ野次馬的に見ていっても興味深いです。

 但し、本来注目すべきはこの調査の特徴で、「信用」「尊敬」「公正」「誇り」「連帯感」というGPTWの評価分類別要素を日本企業にも適用し、人材理念の質的な検証すると共に、「働きがい」を高める具体的な施策について「採用する」「歓迎する」「触発する」「語り掛ける」「傾聴する」「育成する」「配慮する」「祝う」「分かち合う」といった組織風土面の従業員意識調査を行っていて、これらはそれぞれの企業で従業員がどのような気持ちで働いているかを知るうえで大いに参考になります。

 その上で更に、労働時間(年間所定労働時間、年間総労働時間、フレックスタイム制度、在宅勤務制度)や年次有給休暇(日数・平均取得率)、育児・介護等の休暇の有無(法定期間を超える育児・介護・子の看護休暇、育児・介護のための短時間勤務制度・始業就業時間の繰上げ繰り下げ・時間外休日労働の免除など)といった客観数値、制度の有無も評価対象としていて(育児・介護については国の次世代育成支援推進策のガイドラインに沿っている感じ)、社風や経営理念など定性的なものから諸指標、具体的な制度の有無など定量的なものまでトータルで評価しランキングされていることが分ります。

 フォーチュン誌の「最も働きがいのある会社ベスト100」と比べると、「日本企業のベスト25」においてさえもまだまだ改善の余地があることを本書は物語っていますが、日本の企業が今後こうしたワーク・ライフ・バランス施策面における充実度を競い合っていくことは、その動機が企業PRのためであったとしても、日本人全体の働き方を変えていく契機になるのではないかと、個人的には、この調査の(まだ3年目だが)今後に期待を寄せる次第です。

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