【3485】 ○ ローレン・B・ベルカー/ジム・マコーミック/ゲイリー・S・トプチック (佐々木寛子:訳) 『マネジャーの全仕事―いつの時代も変わらない「人の上に立つ人」の常識』 (2023/11 ディスカヴァー・トゥエンティワン) ★★★★

「●マネジメント」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3333】 テレンス・ディール/アラン・ケネディー 『シンボリック・マネジャー

新任マネジャーに限らず振り返りにいい。人事パーソンにとっても同様。

マネジャーの全仕事3.jpgマネジャーの全仕事4.jpgマネジャーの全仕事.jpg
マネジャーの全仕事 いつの時代も変わらない「人の上に立つ人」の常識』['23年]

 "The First-Time Manager" 1983/11・1993/03・2012/01・2021/10

 本書は、原著が1981年に初版刊行され、7度の改版を経て40年以上読み継がれている新任マネジャーのための教科書です。全6部43章にわたって、「人の上に立つ人」の常識を説いています。初版刊行以来7度目の改版であり、内容がその都度アップデートされているため、古さを感じさせないものとなっています。

 第1部は、新任マネジャーに向けた総論であり、ある意味、最重要事項になりますが、その中に、部下をちゃんと褒めることや、積極的傾聴をマスターすることなど、コーチング的なものが含まれているのが興味深いです。

 第2部は、マネジャーとしての新しい仕事にどう取り組むかを述べています。チーム・ダイナミクスというものを活かして強い職場を作ることを説くとともに、マネジメントとリーダーシップの違い、問題のある部下のマネジメント、採用と面接、解雇などについて解説しています。日本企業で人事部がやるような仕事も多分に含まれています。

 第3部は、部下の心を掴み、人を動かすにはそうすればよいかを説いています。部下のモチベーションを高めるにはどうすればよいか、自律的でイノベーティブな組織を作るにはどうすればよいかなどを指南し、リモート勤務(拠点外勤務)におけるマネジメントや、職場でのソーシャルメディアの利用についても述べています。

 第4部は、人事評価をどう行うかについて述べていますが、業績評価だけでなく、職務記述書の作成や昇給の判断までがマネジャーの業務に含まれているのが、日本と比べ特徴的です。その中で、振り返り面談について詳しく解説しているのが印象的でした.

 第5部は、マネジャーとして成長し、さらに上を目指すにはどうすればよいかについて述べています。EQを高めること、「成功する人」になること(相手への自分の見せ方も含め)、文章力を高めることを推奨し、会議のマネジメントやプレゼンテーション技術の高め方についても解説しています。

 第6部は人としての総合力を高めることを説き、ストレスへの対処の仕方や、ワーク・ライフ・バランスの重要性、マネジャーの品格について述べています。誰もが人として成長すべきであり、マネジメントの技法だけでなく、人間としての総合力を高めることが重要であるという考えが、本書の根底に貫かれていることが見てとれます。

 日本のビジネスパーソンにも共感をもって読める内容です。例えば第1部で、「褒めるのは人前で、叱るのは個別に」の原則は時に検討を要するとし、同僚の前で褒められることをきまり悪く思う人もいるし、褒められなかった同僚の嫉妬を買うこともあるため、おおいに褒めたい場合は個別に呼んで褒めた方がいいとしており、これなどは腑に落ちる読者も多いのではないでしょうか。

 書かれていることは「基礎の基礎」ですが、「一生役立つ」との謳い文句のとおり、どの階層のマネジャーが読んでも、自身の振り返りに役立つように思いました。研修などにおけるテキスト的な意味での「教科書」というよりは、一人ひとりが自ら読みたいと思って読む「啓発書」の色合いが強いかと思います。

 前述のとおり、米国企業では前線にいるマネジャーが日本企業でいう人事の仕事を負っている部分がかなりあることが窺え、そのため、人事パーソンが読んでも得るところが少なからずある内容となっています。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1