【2898】 ○ 浦上 早苗 『新型コロナVS中国14億人 (2020/06 小学館新書) ★★★☆

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中国の新型コロナウィルスの封じ込め戦略を紹介(政治的なことにはあまり触れず)。

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中国・武漢市、全市民にPCR検査実施へ(日経電子版2020年5月12日)
新型コロナVS中国14億人(小学館新書)

武漢封鎖.jpg ネットメディアで活躍する筆者が、新型コロナウィルスの中国の戦い方をレポート的に紹介し、日本における対策との違いを明らかにしたもの。著者は、中国を「隠蔽で初動が遅れ、ウイルスをばらまいた国」という一面のみでとらえるべきではないと言い、「中国が嫌いな人にこそ本書を読んで欲しい」とも言ってます。実際、中国は、人権国家ならば到底出来ないような強硬な対応策を断行し、今年['20年]春節の前に武漢をロックダウンするなどして、中国全土で人の集まる場所を公共・民間を問わず閉鎖するなどしてきましたが、その結果、4月にはコロナの封じ込めに成功したと公表するに至っています。

武漢  病院.jpg 武漢に昼夜突貫工事の10日間の工期でベッド数1000床の巨大コンテナ病院が建設され、5Gを用いた通信システムにより遠隔診断し治療法が指示され、医療用ロボットが体温測定や消毒、医療品の運搬を行った―。スピーカーを搭載した5Gドローンが住宅地を巡回し、お喋りしている人やマスクをつけていない人を家に追い返したりし、仕舞には「ウィルスをばらまいたら死刑」になるという法律を作ったりとか、我々から見ればやり過ぎではないかと思われることもあったりしましたが、本書を読んで、全部が全部「共産党の一党独裁国家だからできたのだ」で片づけてしまうのも確かに知恵が無いように思われました。

アリババ CT画像から20秒で診断.jpg PCR検査なしでもCT画像からコロナを診断してもよいとされ、アリババ・グループのAI技術がCT画像から20秒で診断(その的中率は96%とのこと)、3月上旬までに中国の160の病院で採用されるなどし、それ以前、2月には、これもアリババ提供の行動監視アプリ「健康コード」が杭州で導入され、赤・黄・緑で表示され、緑であれば自由に行動ができ、黄は1週間、赤は2週間の自宅待機が要請されたとのこと。こうしたことから窺えるのは、政府が全体を統括してはいるものの、実質的なリーダーは医師と企業(IT企業)だったとのことです。さらに言うと、中国国民はそもそも政府をあまりあてにしておらず、自分自身を守るためにいち早く自ら動いたとのこと、タイトルはそのことをも意味しているのでしょう。

 こういうのを読むと、中国に比べて日本の場合は、リーダーは一体どこにいるのかと言っていい体たらくで(国も自治体も責任を取りたがらないのだろう。と言って、医師・専門家の言うことを素直に受け入れるわけでもない)、対応の遅さもありますが、加えて、著者の言うように、IT環境が中国と比べ周回遅れの状況であるなどといった根底的な問題も見えてきます。

 本書についてのAmazon.comのレビューを見ると、中立的な立場で書かれているという評価が多くみられる見られる一方で、一部に、あまりに中国寄りで、すべて「中国は正解」の立場からのレポートになってしまっているとの批判も見られました(「どちらに大きく味方するでない中立的文章が特徴です。いや、今回はちょっと中国よりか。」というのもあった(笑))。

 著者も、中国が最初は新型コロナウィルスの発生を隠蔽したように、この国は政治面で大きな問題を抱えており、それは今後も繰り返されるだろうと言っているし、中国政府の初動対応の失敗については中国人自身が誰よりも怒っている、としています。ただし、政治的なことはそれ以上にはあまり踏み込まず(著者は九州のブロック紙・西日本新聞の記者出身で、中国のエキスパートだが基本的には経済ジャーナリスㇳ)、中国の新型コロナウィルスの封じ込め戦略に重点を置いて、そちらの方を紹介する内容になっているので、「中国をアゲる」意図が無くても、ウェイト的にそういう見られ方をしてしまうのではないでしょうか。

 実は、個人的にも、その辺りが引っ掛かりました。中国が新型コロナウィルスの封じ込めにおいて為した多くの施策の中には、日本が学ぶべきことも多いかと思いますが、日本はなぜ同じことが出来ないのかを考える際に、政治的な背景をあまり考える必要がないものと、そこに引っ掛かるものとがあるように感じられました(評価は、ややどっちつかずだが星3つ半にした)。

《読書MEMO》
●その後の動向
・2020年9月8日:テレビ朝日/中国がコロナに勝利宣言 武漢残った日本人も招待
「新型コロナ拡大の責任」伏せて中国が事実上終息宣言.jpg

・2020年10月17日:テレビ朝日/中国・武漢で"コロナとの闘い"展覧会
中国・武漢でコロナとの闘い展覧会.jpg

・2020年12月9日:産経新聞/「ウイルスの発生源は中国ではない」と訴える中国政府の大キャンペーンが再び活発に
ウイルスの発生源は中国ではない」.jpg

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