【2835】 ○ 伊藤 明夫 『40億年、いのちの旅 (2018/08 岩波ジュニア新書) ★★★★

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時々手にして、人類存在の神秘、いのちの不思議さに思いを馳せるのもいい。

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40億年、いのちの旅 (岩波ジュニア新書)』['18年]『人類が生まれるための12の偶然 (岩波ジュニア新書)』 ['09年]

 40億年に及ぶとされる、地球における生命の歴史を、いのちとは何か? いのちはどのようにして生まれたのか? どのように考えられてきたのか? というところからその歴史をひもときながら、人類の来た道と、これから行く道を探っった本。

 第1章で「いのち」とは何かをを考え、第2章で、「いのち」の特徴である多様性と普遍性がどのようなものか、それらがゲノム・DNAを通じてどのように発揮されてきたかを考えています。

 第3章では「いのち」の始まりとその後の進化について考え、「いのち」の旅の方向づけに大きな影響を与えた事項・イベントとして、光合成と酸素呼吸の出現や真核細胞の登場、性の出現、陸上への進出など7項目に焦点を当てています。

 後半の第4章、第5章、第6章では、ヒトの過去・現在・未来についてそれぞれ考えています。まず、化石とDNAからヒトの進化の旅を振り返り、次に、地球上で生き物の頂点に君臨する現況を改めて考え、最後に、これからヒトはどのような旅をするのかを考えています。

 こうした学際的な内容のヒトの歴史に関する本では、同じ岩波ジュニア新書に眞淳平著『人類が生まれるための12の偶然』('09年)がありましたが、あちらは宇宙や地球の誕生から説き起こしているのに対し、こちらは40億年前の生命の誕生から説き起こしていることになります。

 また、著者の専門が細胞生化学であることもあってか、細胞内小器官の話など細胞学に関する説明はやや高度な内容を含んでいたように思いますが(と言っても高校の教科書の生物基礎程度の知識があれば何とかついていけるか)、減数分裂における遺伝子の組み換えの説明などは分かりやすい方だったと思います。

 最新の研究成果も織り込まれています。個人的に興味深かったのは、ネアンデルタール人と現生人(ホモ・サピエンス)の関係で、共に約90万年前にアフリカかヨーロッパのどこかで誕生したホモ・ハイデルベルゲンシスを先祖とし、ネアンデルタール人はヨーロッパにいたホモ・ハイデルベルゲンシスから進化したと考えられ、現生人は、20万年前アフリカにいたホモ・ハイデルベルゲンシスから進化したと考えられとのこと。先祖が同じでも、先祖のいた場所が違うのかと。

 陸上に生息する動物の個体数の総重量が一番重いのはウシで、2番目がヒトだが、以下、スイギュウ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ウマと続くという話も興味深かったです。要するに、これら(ヒト以外)は全部"家畜"であって、ヒトは自分たちが生きるために、膨大な量の生物を飼育しているのだなあと。

 巻末に長谷川真理子著『進化とはなんだろうか』['99年/岩波ジュニア新書]など関連の参考図書が紹介されています。時々この種の本を手にして、人類が存在することの神秘、自分が生まれてきたことの不思議さに思いを馳せるのもいいのではないでしょうか。

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