【3600】 ○ 滝田 ゆう 『滝田ゆう落語劇場 (第1輯・第2輯)』 (1983/04 文春文庫) 《『滝田ゆう落語劇場(全)』 (1988/09 ちくま文庫)/『滝田ゆう落語劇場(全2巻)(双葉漫画名作館)』 (1991/08 双葉社)》 ★★★★

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正統派ラインアップ。漫画で(起承転結ではなく)「オチ」が愉しめる。

滝田ゆう落語劇場.jpg
滝田ゆう落語劇場 〔第1輯〕 (文春文庫 (302‐1))』『滝田ゆう落語劇場 第2輯 (文春文庫 302-2)』['83年]/『滝田ゆう落語劇場 全 (ちくま文庫 た 11-2)』['88年]/『落語劇場 1巻 (双葉漫画名作館) 』『落語劇場 2巻 (双葉漫画名作館) 』['91年]
滝田ゆう落語劇場 1巻』『滝田ゆう落語劇場 2巻』[Kindle版]
滝田ゆう落語劇場Kindle版.jpg 作家の名作22篇をコマ漫画に仕立てあげた『滝田ゆう名作劇場』('78年/文藝春秋、'83年/文春文庫、'02年/講談社漫画文庫)、野坂昭如の作品を描いた『怨歌劇場』('80年/講談社、'83年/講談社文庫)に続く「劇場シリーズ」第3弾は、落語をコマ漫画にしたものです。

 第1輯は「王子の狐」「素人鰻」「蕎麦の羽織」「夢の酒」「猫の災難」「味噌倉」「死神」など20話、第2輯では「青菜」「狸賽」「二階ぞめき」「包丁」「ぬけ雀」「茶の湯」「あくび指南」「千両みかん」など18話、合計で38編を所収。個人的には内容を知らないものもありますが、落語に詳しい人からすれば、正統派ラインアップではないでしょうか。

滝田ゆう落語劇場3.jpg 読んでいて、これまでのシリーズと違うのは、(「落語劇場」と謳っているので当然だが)元が小説ではなく落語であるということです。そのため、無意識的に起承転結の「結」を求めて読んでいたら(小説を読むという行為はだいたいそうしたものだ)最後に「オチ」が来て「落とされる」というところでしょうか。そうした面白さ、愉快さが、ああ、やっぱり落語だなあと。

東海林さだお.jpg 漫画家でこの手のオチを描く人っていないかなあと思ったら、東海林さだおがいた! あの人はエッセイも、昭和軽薄体と呼ばれる独特なリズム感のある文体だなあ。本書を読んで落語を聴きたくなったというのはフツーでしょうが、東海林さだおのエッセイを読みたくなった、というのはちょっと変わっているかも。

 本書は、'83年にいきなり文庫で、講談社文庫で第1輯、第2輯として出版され(「輯(しゅう)」というのは「集」みたいな意味か)、その後'88年にちくま文庫の全1巻として刊行されていますが、さらに'91年に「双葉漫画名作館」として第1巻・第2巻が刊行されています。

 落語なのでセリフが大事です。読み易さからすると、「双葉漫画名作館」版が単行本サイズであるためお薦め。作者独特の小さな吹き出し(その中になぜか無意味な絵が描かれている)のようなものもあることですし(ただし、絶版のため入手しにくいと思ったら、シリーズでこの「落語劇場」のみKindle版がリリースされた。端末で画面拡大ができるので便利かも)。

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