【3500】 ○ 映画秘宝編集部 (編) 『映画秘宝2022年5月号―最後はサイテーだ!映画秘宝がおくるサイテー映画の華麗なる世界!!』(2022/03 双葉社)★★★☆(○ ユーリー・オーゼロフ「ヨーロッパの解放(全5部)」 (70年/ソ連) (1970/07 松竹映配) ★★★/× スピルバーグ「1941」 (79年/米) (1980/03 CP) ★★)

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双葉社刊最終号。「ベスト映画」より「サイテー映画」特集の方が面白さで言えば面白い?

「映画秘宝」2205.jpg   東京暮色  1957.jpg 「ヨーロッパの解放 1970.jpg 「1941.jpg
東京暮色 デジタル修復版 [DVD]」「ヨーロッパの解放 HDマスター 1 <クルスク大戦車戦>(通常仕様) [DVD]」「1941 [DVD]
映画秘宝 2022年5月号 [雑誌]
映画秘宝 2205.jpg 双葉社刊の月刊「映画秘宝」の最終号です。このあと約2年の休刊期間を経て昨年['23年]12月、新たに設立された「合同会社秘宝新社」が雑誌の権利を取得し、今年['24]年1月19日発売の3月号から、月刊誌として約2年ぶりに「再々創刊」されていることは、これまでのこの雑誌の経緯と併せ、前エントリーに書きました。

 最終号が「サイテー映画」特集となるところがこの雑誌らしいです。因みに、1つ前の4月号が「映画猛者101人が選ぶ、2022年オールタイム映画ベストテン!」という特集なのですが、この「サイテー映画特集」でも「新世紀アメリカ・サイテー映画10傑」とか「日本のサイテー映画」といったジャンル別ランキング方式をとっていて、20以上の分野ごとのラインアップを、その分野にこだわりを持つ評論家が挙げており、思いもかけない映画が出てくるあたりは、こちらの方が、役に立つかどうかはともかく(笑)、面白さで言えば面白いかもしれません。
 
東京暮色157a.jpg10『東京暮色』.jpg 因みに、「日本のサイテー映画」(浦山珠夫)には、小津安二郎の「東京暮色」('57年/松竹)が入っていたりしますが、選者の浦山氏は、「サイテー映画の後始末」という視点で、「期待を裏切られてガッカリしたけど、改めて見るとなかなか」という映画を選んだとしています。「東京暮色」についても、主人公が鉄道自殺する、このやりきれなさが味わいなのだが、当時の評価では、「大人はわかってくれない」といった普遍的テーマを小津が扱ったことへの観客の違和感が、「失敗作」のレッテルにつながったとしています。個人的には小津は、キネ旬のランキングなんか気にせず(この映画は1957年度「キネマ旬報ベストテン」で第19位だったが、笠智衆によれば、小津安二郎自身がそのことを自虐を込めて語っていたようだ)、もっとこういう映画を撮って欲しかったです。評価は○
 
「ヨーロッパの解放.jpg「ヨーロッパの解放」2.jpg 「サイテー戦争映画」(大久保義信)では、4作挙げられているうちの1つが「ヨーロッパの解放」('70年~'71年)であり、これは全5部計468分の大作(7時間48分。観ていて、終いには、どれが何の戦いなのかわからなくなってくる(笑))。第1部は、史上最大の作戦と言われる1943年夏のロシア西部要衝クルクスの戦いがメイン、第2部はハリコフ奪回からドニエプル河渡河そしてウクライナ"解放"へ、第3部は1944年のベラルーシ"解放"戦。第4部はポーランドやチェコスロバキアの"解放"戦、第5部はベルリン戦から終戦へ―大久保氏に言わせると、これらが「史実の歪曲や無視、曲解のオンパレードで描かれる『これそ国策映画』」で、「これじゃ『ヨーロッパの侵略』だろう」としています(なるほど、ソ連の頃からロシアは変わっていない)。ただし、個人的には、初めて観た時はついていくのが精いっぱいで、あまりそこまで考えませでした。評価は△
 
「1941」.jpg「1941」3.jpg 「スティーブン・スピルバーグのダメ映画5選」(尾崎一男)で1位は「フック」('91年)、2位は「1941」('79年)になっています。選者の尾崎氏は、「1941」が駄作の筆頭のイメージがあるが、精緻なサンタモニカ公園のミニチュアや、それを攻撃する「1941」三船.jpg日本軍の奇襲攻撃シーンなどに見るべきところは多く、年を経るにつれてカルト的な評価を得て悪評も薄らいだ感があるとしています。ただし、本分であるコメディ演出は笑えないともしていて(三船敏郎はなぜこんな映画に出てしまったのか)、こちらは個人的には、世間評と同じくスピルバーグの一番の駄作であるように思われ、初めて観た時から評価は×

 「サイテー映画」とされていても、個人的な評価が必ずしも一致しないのは当然なことだし、カルト的人気で評価を挽回しているものもかなり含まれているように思いました。こうした特集にさえ取り上げられない「箸にも棒にも掛からない」映画もたくさんあるわけで、こうした特集に取り上げられるということは、それだけ観た人にインパクトを残したという面もあるように思います。


東京暮色 有馬稲子 .jpg東京暮色_640.jpg「東京暮色」●制作年:1954年●監督:小津安二郎●製作:山内静夫●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●時間:140分●出演:原節子/有馬稲子/笠智衆/山田五十鈴/高橋貞二/田浦正巳/杉村春子/山村聰/信欣三/藤原釜足/中村伸郎/宮口精二/須賀不二夫/浦辺粂子/三好栄子/田中春男/山本和子/長岡輝子/櫻むつ子/増田順二/長谷部朋香/森教子/菅原通済(特別出演)/石山龍児●公開:1957/04●配給:松竹●最初に観た場所(再見):(18-06-28)((評価:★★★★)

「ヨーロッパの解放」03.jpg「ヨーロッパの解放(全5部)」●原題:ОСВОЬОЖЛЕНИЕ(OSVOBODZHDENIE)●制作年:1970-71年●制作国:ソ連●監督:ユーリー・オーゼロフ●製作:エマ・トーマス/チャールズ・ローヴェン/クリストファー・ノーラン●脚本:ユーリー・オーゼロフ/ユーリー・ボンダリョフ/オスカル・クルガーノフ●撮影: イーゴリ・スラブネヴィッチ●時間:468分●出演:ニコライ・オリャーリン/ラリーサ・ゴルーブキナ「ヨーロッパの解放」3.jpg/ミハイル・ウリヤーノフ/イヴォ・ガラーニ/フリッツ・ディッツ/スタニスラフ・ヤスケヴィッチ/ブフティ・ザカリアーゼ●日本公開:(第1部・第2部)1970/07/(第3部)1971/07/(第4部・第5部)1972/08●配給:松竹映配●最初に観た場所:三鷹オスカー(83-12-11)((評価:★★★)

「1941」2.jpg「1941」●原題:1941●制作年: 1979年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作: バズ・フェイトシャンズ●脚本:ロバート・ゼメキス/ボブ・ゲイル●音楽:ジョン・ウィリアムズ●時間:118分●出演:ジョン・ベルーシ/ネッド・ビーティ/ダン・エイクロイド/ロレイン・ゲイリー/マーレイ・ハミルトン/クリストファー・リー/ティム・マシスン/三船敏郎/ウォーレン・オーツ/ナンシー・アレン/ジョン・キャンディ/エリシャ・クック/ジェームズ・カーン(クレジットなし)●日本公開:1980/03●配給:コロンビア ピクチャーズ●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(80-07-08)(評価:★★)●併映:「ローラー・ブギ」(マーク・L・レスター)

《読書MEMO》
●1957年度キネマ旬報ベストテン
1.米
2.純愛物語
3.喜びも悲しみも幾年月
4.幕末太陽傳
4.蜘蛛巣城
6.気違い部落
7.どたんば
8.爆音と大地
9.異母兄弟
10.どん底
11.地上
12.あらくれ
13.雪国
14.南極大陸
15.メソポタミア
16.世界は恐怖する
17.風前の灯
18.大阪物語
19.東京暮色
20.正義派
20.くちづけ
22.満員電車
23.黄色いからす
24.殺したのは誰だ
25.糞尿譚
26.女体は哀しく
27.挽歌
27.倖せは俺等のねがい
27.土砂降り
30.明治天皇と日露大戦争

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