【3066】 △ マキノ 省三 「忠魂義烈 実録忠臣蔵 (1928/03 マキノキネマ) ★★★

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主役がダメ。その勝手な演技に悩まされたマキノ省三自身も、この作品を失敗作とみなしていた。

忠魂義烈 実録忠臣蔵 1928.jpg  「実録忠臣蔵」01.jpg
Talking Silents10「実録忠臣蔵」「雷電」 [DVD]」伊井蓉峰(大石内蔵助)
 マキノ省三(1878-1929/50歳没)監督の1928(昭和3)年3月14日公開作。1910(明治43)年)に「忠臣蔵」を監督して以来、幾度となくリメイクし続けた同監督が、50歳を迎えるのを記念して作られたその集大成とも言われた作品「実録忠臣蔵」02.jpg。しかし、撮影終了後の同年3月6日、京都市上京区の牧野本宅で編集中に出火して大量のネガフィルムと牧野本宅が全焼、残存部分が編集されての封切りでした(討入りの場面は、同じキャストによるマキノ雅弘監督の「間者」より挿入)。太平洋戦争の戦禍で多くの日本映画のフィルムが四散消滅する中、松田春翠(1925-1987/62歳没)が発掘し、数本のポジフィルムより編集・復元、1968(昭和43)年、マキノ省三を偲ぶ40年忌と無声映画鑑賞会の10周年記念公開用に再製作されたものです(弁士:松田春翠)。

 忠臣蔵の定番の吉良上野介(市川小文治)が浅野内匠頭(諸口十九)の賄賂が少ないことに怒って、服装のことなどで何かと内匠頭をいたぶる様がじっくり描かれていて、松の廊下の刃傷沙汰まではなかなかいいのではないかと思って観「実録忠臣蔵」03.pngていました。内匠頭に切腹の沙汰が下ったことを告げる早馬が赤穂城へ向かう―と、ここまでが前編なので、前の方が相当に重いとも言えます。

 ところが続く後編、場面が赤穂城に切り替わり、大石内蔵之助(伊井蓉峰)が登場してからがダメで、当初、主役の大石内蔵助には實川延若や松本幸四郎をあてていたのが松竹の妨害で頓挫し、止むなく新派劇の俳優・伊井蓉峰を大石役としたそうですが、演技が時代がかっていて口をへの字に曲げるばかりの下手くそぶり。それにどう見ても大石のカリスマ性とは程遠い"悪役顔"で、「祇園一力茶屋の場」での芸妓らとの遊興シーンで、内匠頭の命日さえ忘れてその日に鍋焼きを食らう様は、本物の"バカ殿"に見えてしまいます(演技が上手いという意味でなく)。

嵐長三郎(嵐寛寿郎)(脇坂淡路守)/片岡千恵蔵(服部市郎右衛門)
「忠魂義烈 実録忠臣蔵」04.jpg 本作に脇坂淡路守(内匠頭に切られた上野介にわざとぶつかって服の袖に血をつけ、「紋所を血で汚すは」と一括、扇で上野介の額を打つ)の役で出演した嵐長三郎(のちの嵐寛寿郎)は、伊井を「うぬぼれ、度がすぎてますわ。ロケで金屏風立てて小便しよるんダ、アホクサイやら腹が立つやら、指差して笑ろうたら付人に見つかって告げ口された」「ここで思い入れあって大石泣くという芝居ダ。ちっとも泣かしまへん。ああ肝芸で心で耐えているんやなと見ていると、キャメラ・パンして離れてからクククーッ、と拳を眼に持っていきよる。写ってへんがな」と酷評し、自身がマキノプロ退社を決意した理由に、伊井の尊大さとそれを許した省三らスタッフの対応にあったと語っています。因みに、この作品にお目附・服部市郎右衛門(四十七士が仇討を成就して泉岳寺行こうとした際に、両国橋で行く手を塞ぎ、行き方を示唆)役で出た片岡千恵蔵も一緒にマキノプロを退所しているので、相当ひどかったのでしょう。

「忠魂義烈 実録忠臣蔵」05.jpg 伊井の勝手な演技に悩まされたマキノ省三自身もこの作品を失敗作とみなしていたらしく、牧野邸火事の際、「『忠臣蔵』は焼けて良かったと」と語ったとされています。代わって省三の妻・知世子が陣頭指揮を執り、残ったフィルムを編集させて、同月14日には公開にこぎつけたとのことです。

マキノ雅弘(大石主税)

 個人的評価は映像だけだと「×」ですが、1920年代の貴重映像であることや、当時18歳のマキノ雅弘が大石主税役で出ていたりする珍しさと、松田春翠の活弁が聴けるのが救いで「△」としました。

[実録忠臣蔵]-s.jpg「忠魂義烈 実録忠臣蔵」図1.jpg「忠魂義烈 実録忠臣蔵」●制作年:1928年●製作総指揮・監督:マキノ(牧野)省三●脚本:山上伊太郎/西条照太郎●撮影:田中十三ほか●時間:80分 / 64分(再編集版)●出演:伊井蓉峰/諸口十九/市川小文治/勝見庸太郎/月形龍之介/中根龍太郎/嵐長三郎(嵐寛寿郎)/片岡千恵蔵/片岡市太郎/杉狂児/中根龍太郎 /マキノ正博/小島陽三/松本時之助/中村東之助/小岩井昇三郎/山本礼三郎/金子新/市川小莚次/松村光男/荒木忍/川田弘道/菊波正之助/秋吉薫 /中田国義/若松文男/静間静之助/梅田五郎/守本専一/大味正徳/斉藤俊平/児島武彦/大谷万六/都賀清司/松尾文人/都賀一司/津村博/尾上松緑/藤井六輔/大国一郎/マキノ正美/児島武彦/嵐冠/染井達郎/松村光男/嵐冠吉郎/原田耕造/大味正徳/柳妻麗三郎/中村東之助/松本熊夫/西郷昇/南部国男/木村猛/森清/大谷鬼若/橘正明/嵐長三郎/星月英之助/矢野武夫/市川小文治/豊島龍平/小岩井昇三郎/東郷久義/佐久間八郎/英まさる/坂本二郎/沢村錦之助/武井龍三/天野刃一/八雲燕之助/鈴木京平/市川谷五郎/川島清/藤岡正義/牧光郎/有村四郎/小金井勝/松坂進/市原義雄/マキノ登六/久賀龍三郎/潮龍二/マキノ梅太郎/大谷万六/徳川良之助/守本専/荒尾静一/高山久/嵐冠三郎/尾上延三郎/玉木悦子/花岡百合子/石川新水/マキノ智子/松浦築枝/渡辺綾子/住ノ江田鶴子/三保松子/河上君江/水谷蘭子/岡島艶子/鈴木澄子/大林梅子/五十川鈴子/都賀静子/広田昴/玉木潤一郎/大岡怪童/大国一郎●公開: 1928/03●配給:マキノキネマ(評価:★★★)

          




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和田泰明

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This page contains a single entry by wada published on 2021年9月18日 00:44.

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