【1672】 ○ ウォレン・ベニス/バート・ナナス (伊東奈美子:訳) 『本物のリーダーとは何か (2011/05 海と月社) 《ウォーレン ベニス/バート ナナス (小島直記:訳) 『リーダーシップの王道』 (1987/03 新潮社)》 ★★★★

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『リーダーシップの王道』の最新版。"原著"の中ではかなり読み易い方。

ウォレン・ベニス 本物のリーダーとは何か.jpg  ウォーレン・ベニス.jpg  リーダーシップの王道.jpg
Warren Bennis 『リーダーシップの王道』['87年]
本物のリーダーとは何か』['11年]

 リーダーシップ論を語るに際して必ずその名が挙がるウォレン・ベニス(Warren Bennis)とバート・ナナス(Bart Nanus)ですが、本書は、1985年に原著が刊行された"Leaders"(邦訳『リーダーシップの王道』('87年/新潮社))の'07年改定版の翻訳で、本書以前に'95年に第2版、'03年にペーパーバック版が刊行されていますが、旧著を何度かブラッシュアップし、時代に適合させている点は、ピーター・ドラッカーなどと"やり方"が似ているかも(但し、ドラッカーがリーダーシップを単独テーマとして取り扱うようになったのは、かなり後の方だが)。

リーダー.jpg 本書の前半部においては、「リーダーであるかどうかは生まれつきの資質による」というリーダーシップに関する従来の「誤解」を解くとともに、優れたリーダーが組織を導くための戦略として、
 戦略Ⅰ:人を引きつけるビジョンを描く、
 戦略Ⅱ:あらゆる方法で「意味」を伝える、
 戦略Ⅲ:「ポジショニング」で信頼を勝ち取る、
 戦略Ⅳ:自己を創造的に活かす、
 の4つを挙げています。
 この4項目が彼らのリーダーシップ観の核であり、本書の後半部は、この4項目に各1章を割いて解説するものとなっています。

 「ビジョンなき組織に未来はない」というのはその通りだと思いますが、特徴的だと思われる点は、リーダーはビジョンを描くだけではなく、組織のメンバーがビジョンを理解し、参加し、自分のものとしてもらうために、組織の「社会構造」を設計しなければならないとしている点で、社会構造の形態としては3つあり、合理的組織、個人的組織、形式的組織があるとしています。
 リーダーは、組織全体が自分のビジョンを受け入れサポートするよう、組織の社会構造を管理し、必要に応じて変えることができなければならないということであり、これが、あらゆる方法で「意味」を伝えるということに当たります。

 その際に重要なのが、組織の「ポジショニング」を明確にするということであり、組織を取り巻く環境の中で組織が生き残っていくのに最適な場所を確立しなければならないとのことですが、環境とは常に変化するものであり、その変化に対応するための、選択可能な戦略と実際的な方法をも示しています。

 4つ目の「自己を創造的に活かす」の部分は、組織の学習能力の向上に主眼を置いて説かれており、学習する組織を作るためのポイントを、「オープン」と「参加」という2つのキーワードで解説しています。

 最後に、リーダーシップに関する5つの神話が示され、「リーダーシップは、一握りの人にしかない技術である」といった「神話」を再度否定していますが、本書は、こうした旧来のリーダーシップ観のパラダイム変革を促しただけでなく、ジョン・コッターの「変革のリーダーシップ」論やピーター・センゲの「学習する組織」論の先駆け的要素をも含んでいます。

 また、マネジメントとリーダーシップの違いを明確にした点でも、ジョン・コッターなどに与えた影響は大きいかと思われますが、一方で、ヘンリー・ミンツバーグなどからは、まさにその点を批判されています

 このように、リーダーシップ論は、ドラッカーならドラッカーだけを読んでいればいいといいうものではないでしょう。また、理論をそのまま適用するのではなく、基本的エッセンスを応用の足がかりとすることが肝要なのでしょう。

 できれば多くの先人達が自ら著した本を読むことが、環境の変化に対応可能な、自分なりの「基本」を持つことができるようになる近道ではと思います。そうした意味では、本著は"原著"の中ではかなり読み易い(元々の英語版も読みやすい方だと思うが、改版を重ねる内に翻訳の方も更に読み易くなった?)方だと思います。

【2202】 ○ ダイヤモンド社 『世界で最も重要なビジネス書 (世界標準の知識 ザ・ビジネス)』 (2005/03 ダイヤモンド社)

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ウォーレン・ベニス(Warren Bennis、生年1925年) アメリカの経営学者。リーダーシップ論で有名。2014年7月31日死去、89歳。

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