【3458】 ◎ マイケル・A・ロベルト (飯田恒夫:訳) 『なぜ危機に気づけなかったのか―組織を救うリーダーの問題発見力』 (2010/02 英治出版) ★★★★☆

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問題解決能力より問題発見能力。リーダーがマスターすべき7つのスキルと能力。

なぜ危機に気づけなかったのか 2010.jpgなぜ危機に気づけなかったのか.gif マイケル・A・ロベルト.jpg Michael A. Roberto(現ブライアント大学教授)
なぜ危機に気づけなかったのか ― 組織を救うリーダーの問題発見力』['10年]

 優れたリーダーは、危機を未然に防ぐべく、問題を発見する能力を身につけている―。本書では、ハーバード・ビジネス・スクール教授などを歴任し、戦略的意思決定を専門とする著者が、多くの経営者へのインタビューと、ビジネス・政治・軍事・スポーツ・医療など数々のケーススタディを分析し、優れた問題発見者となるために、リーダーがマスターすべき7つのスキルと能力を示しています。

 第1章で、問題の解決よりもむしろ問題の発見の方が重要であるとし、それに続く7つの章で、その7つの問題発見のスキルと能力を一つずつ説明しています。

 第2章「フィルターを避ける」では、リーダーの周囲の部下たちは情報にフィルターをかけることがあるが、そうしたフィルタリングが起きる理由と、リーダーがそれを避けるための5つの手法を解説しています。

 第3章「人類学者になる」では、リーダーはあたかも人類学者のように、自然な環境の中で人々の集団を観察することを学ばなければならないとし、効果的な観察を行うためにすべきこと、してはならないことを説いています。

 第4章「パターンを探す」では、優れた問題の発見者は、問題のパターンを探し、見分けることができるとし、そうした直観を鍛え、強化し、パターンを認識する能力を高めるにはどうすればよいか解説しています。

 第5章「点を結びつける」では、一見バラバラな情報の断片の中から「点をつなぐ」能力を磨かなければならず、そのためには情報の共有が必要であり、情報の共有を阻む理由は何か、情報の共有を促進する方法を説いています。

 第6章「価値ある失敗を奨励する」では、優れた問題の発見者になるには、部下にリスクを取ることを促し、失敗から学ぶ方法を教えなければならないとし、また、失敗の中にも、学習と改善の機会となる「役に立つ、低コストの失敗」があるとしています。

 第7章「話し方と聴き方を教える」では、リーダーは自分自身のコミュニケーション能力だけでなく、組織全体のコミュニケーション能力も磨かなければならないとし、対人コミュニケーションの改善方法を説くとともに、それを個人だけではなくチームとして訓練することが重要だとしています。

 第8章「ゲームの録画を見る」では、スポーツチームの偉大なコーチや監督が、過去の試合や演技の録画を見てチームが抱える問題を把握するように、リーダーは、自らの行動を振り返り、反省のプロになることで、デリベレイト・プラクティス(計画的に熟慮された練習)を考えなければならないとしています。

 最後の第9章では、優れた問題発見者となるための心構えの要素として、「知的好奇心」「システム思考」「健全な偏執狂」の3つを挙げています。

 リーダーに求められるのは、問題解決能力より問題発見能力であるという趣旨の本です。各章で事例を挙げて解説していますが、ビジネスの場面だけでなく、9.11テロで情報統合に問題があったことや航空機事故なども事例に引いています。一方で、言説のエッセンスが個別の章立てして整理されているため、相互作用的に説得力を持たせているように思いました。

 指摘している7つのスキルと能力は、リーダー個人の姿勢の視点だけでなく、組織論的な視点もあり、自分自身と自分のいる組織や職場のことを省みながら読み進めるのもいいかと思います。

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