【3408】 ◎ ジョン・アデア (小林 薫:訳) 『最良の指導者(リーダー)とは何か。 (1989/10 PHP研究所) ★★★★☆

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リーダーシップは学んで得られ、仕事を成就するグループにより発揮される。

not boss nut leader John Adair.jpg『最良の指導者(リーダー)とは何か。』.jpg  ジョン・アデア.jpg ジョン・アデア
最良の指導者とは何か』['89年]

Not Bosses But Leaders: How to Lead the Way to Success』['87年]

 本書は、英国のリーダーシップ論の権威が、若きマネジャーが経営者として成長する課程を通して、具体的・合理的・実践的なリーダーシップ論を展開した本です(原題:Not Bosses But Leaders: How to Lead the Way to Success)。

 第1章では、リーダーシップ研究の3つのアプローチとして、リーダーに共通する特性があるとの前提に立つ方法、リーダーは資質ではなく状況によって誰がリーダーになるのかが決まるという前提に立つ方法、グループを構成する仕事、個人、チームという3つの要素こそがリーダーシップを発揮する対象であるとの前提に立つ方法を挙げています。以下、本書は、この3番目の方法を軸とするリーダーシップモデルを展開していきます。

 第2章では、チーム作りと意思決定について、仕事、個人、チームを3つの重なり合う円とし、その相互関係を述べています。仕事を達成することで、チームがまとまり、個人も満足するが、チームが満足なものでなければ、つまり、チームが結束に欠けていれば、仕事の達成度が悪くなり、個人の満足も減少するし、また、個人の要求が満たされなければ、チームの団結力が薄れ、仕事の達成度も悪くなるとしています。

 第3章では、リーダーシップとマネジメントの概念について整理しています。リーダーは変革を好み、リーダーシップとはインスピレーションであるとしています。さらに、マネジャーは必要だが、リーダーは不可欠であるとしています。

 第4章では、リーダーの力量を判断するチェックポイントを列挙するとともに、リーダーシップとは学んで得られるものであり、そのための訓練が必要であるとしています。

 第5章では、ビジネスの成功の鍵は戦略的思考のプロセスにあり、善良さと知性と経験こそがリーダーとしての英知を生み出すとしています。また、リーダーに不可欠な要素として、相手の言うことを「聴く」ことができなければならないとしています。

 第6章では、戦略的リーダーシップの原則として、計画だけでな部下をく行動させるために必要なことは何か述べています。

 第7章では、リーダーは惜しみなく与える存在であり、部下への気配りは最も重要であるとしています。

 第8章では、リーダーシップと権力(パワー)の行使の関係について、リーダーシップとは、賢明で鋭敏な感覚をもってする権力の行使であるとしています。また、リーダーとは、同等者の中の第一人者であり、まず部下や同僚に敬意を表せとしています。

 第9章では、上からではなく内側からのリーダーシップこそ最高の指導力であるとし、また、リーダーは人々に方向感覚を与えるとしています。

最良の指導者(リーダー)とは何か。 .jpg 著者は、組織におけるリーダーシップ論とリーダーシップ開発では世界的権威として認知されていますが、その理由は、自らが作り上げた機能的リーダーシップモデルによって、古代ギリシャ時代から定説であった「リーダーシップは生まれながらに持った先天性のもの」という認識から、「リーダーシップは訓練と経験によって後天的に誰もが身に付けられるもの」という自身の主張を裏付け、これまでの常識を覆したためであるとされています。

 本書では、本書に登場する若いマネジャーが実証しているように、ほんの少しばかりよけいに考え実践することにより、誰でもリーダーシップを大きく向上しうるとしています。そして、これからの社会に必要なのはボスではなくリーダーであると言っています。

 リーダーシップは学んで得られるもので、仕事を成就するグループを通して発揮されることを説いた、読みやすく、説得力もある内容であり、人事パーソンにお薦めできる本です。

 しかし、この頃の小林薫って、『1分間マネジャー』『1分間リーダーシップ』をはじめ、いっぱい翻訳してたなあ。

《読書MEMO》
Wikipediaより抜粋
●アデアの最大の功績は、はるか昔から主流であった「リーダーシップは生まれながらの資質によるものである」というそれまでの定説であったリーダー偉人説から、「リーダーシップは後天的なものであり、訓練と経験によって誰もが身に付けることができるもの」とし、それまでの常識を覆したことにある。
●彼はリーダーシップとマネジメントを明確に区別しており、マネジメントが力学、統制、システムに根差しているのに対し、リーダーシップは人に根ざしており、その発揮する対象は仕事、チーム、個人という3つの要素が重なり合った領域に働きかけるものとした。
●彼の思想は実用的であり、働く環境に関わらずすべてのマネジャーに当てはまる。また自著についても実際に現場で働くマネジャーやリーダーのために書かれたものが多く、その内容は緻密な分析に基づき慎重に書かれている。一部のリーダーシップ論者が書くような研究や学問のための著書ではないことも彼が現場や実用性を重視していることがうかがえる。また意思決定、イノベーション、モチベーション、コミュニケーションといったリーダーシップの実務的側面についても研究対象としており、彼の考えの多くは当時の時代を先取りしたもので、現在でも広く教えられ利用されている。

●優れたリーダーとなるために必要な7つの品格
リーダーシップにおいてパーソナリティやキャラクターを切り離すことはできないように、彼が提唱するリーダーが持つべき一定の資質というものが存在する。
 1.熱意:すべきことを一生懸命にする
 2.誠実さ:信頼関係を作り出す資質。また善や真実といった外部の価値観を固守するという意味も含まれる
 3.タフネス:リーダーはしばしば人々への要求者であり、ときにその水準が高いがゆえに周囲は不満を持つ。リーダーは立ち直りが早く、また粘り強い。
 4.公明正大:リーダーはお気に入りをつくらず、成果に対しては公平に報酬と罰を与える。
 5.温かさ:リーダーシップは感情をも包含するものだ。人々のために実践し、人に気を配り思いやる心は不可欠である。
 6.謙虚さ:最上級のリーダーたちが持つ特質でもある。優れたリーダーのしるしは、進んで傾聴し、うぬぼれたエゴを排除することである。
 7.信頼:不可欠な基本的要素である。

●リーダーシップを発揮する3つの対象領域(スリーサークル)
これらの欲求に対し、彼は仕事、チーム、個人、この3つこそがリーダーシップを発揮する対象であるとする。 すなわちチームメンバーは自分のリーダーに、
 ・「職務を遂行する手助けをしてほしい」
 ・「チームワークのシナジーを生んでほしい」
 ・「個人の要求に応えてほしい」
と期待するというものである。
この理論は、比喩的に3つの重なり合う円(スリーサークル)で描かれている。 この3つの円はそれぞれ
 ・仕事(Task)
 ・チーム(Team)
 ・個人(Individual)
を示しており、グループの欲求に対して、リーダーが取るべき基本的な行動の対象を表している。
仕事は1人の力だけでは達成できない。チームは職務を全うしたい欲求を持っている。チームが成功するには、絶えずグループの結束を高め、維持することが不可欠であり、団結したい欲求が備わっている。チームは団結すれば成功し、分裂すれば失敗する。個人の要求は、物質的なもの(給料・報酬など)と精神的なもの(評価、達成感、地位、仕事上での他者との関わりなど)がある。
また「仕事」「チーム」「個人」、3つの欲求は部分的に重なり合う必要がある。
 ・仕事を達成することで、チームがまとまり、個人も満足する。
 ・チームが満足なものでなければ、つまり、チームが結束に欠けていれば、仕事の達成度が悪くなり、個人の満足も減少する。
 ・個人の要求が満たされなければ、チームの団結力が薄れ、仕事の達成度も悪くなる。

●リーダーシップを発揮する目的、リーダーの役割
仕事・チーム・個人のバランスを俯瞰的に捉え、ニーズを満たすことがリーダーシップの発揮となり、リーダーシップを発揮する目的は下記の3つとも捉えることができる。
 1.タスクや目標を達成すること
 2.チームを作り、団結を維持すること
 3.個人の能力を開発すること

●7つのリーダーシップの実践行動(7 core Functions)
3つの領域において、期待に応えるために実践する7つの機能が存在する。これらの行動を起こすことがリーダーシップを発揮することになり、リーダーに求められる核となる行動と主張する。
 1.リスクを明確にする
 2,計画する
 3.統制する
 4.支援する
 5.評価する
 6.動機づけする
 7.模範となる

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