【3402】 ◎ マシュー・ケリー (橋本夕子:訳) 『ザ・ドリーム・マネジャー (2008/10 海と月社) ★★★★☆

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従業員の夢の実現を支援する会社、部下が個人としても伸びていけるようにする管理職こそ理想。

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The Dream Manager』['07年]マシュー・ケリー
ザ・ドリーム・マネジャー モチベーションがみるみる上がる「夢」のマネジメント』['08年] 

 本書は、働く者全員が「やりがい」と「愛着」を感じる会社を作るにはどうすればよいか、そのためのシンプルで楽しいアイデアを示した本であり、第Ⅰ部が「物語」形式のビジネスストーリーに、第Ⅱ部が「実践ガイド」になっています。

 第Ⅰ部「物語」の第1章「変化のきざし」では、物語の舞台である清掃会社の総務担当取締役のサイモンと創業社長のグレッグが、年400%にもなる離職率に頭を悩ませています。サイモンは、「離職率の高さは士気や作業効率、顧客の満足度の低下にもつながります」「現場の従業員はビジネスについて、われわれの知らないことを知っているんです」と言って、従業員にアンケートをとることを進言します。そして、アンケートをとってみると、社員が辞めていく最大の理由は、通勤の足だったことが判明、つまり、交通手段がないことによる通勤問題でした。そこでサイモンはシャトルバスの運行を提案しますが、グレックはいくら費用がかかるのか心配します。それに対しサイモンは、「問題は、いくらかかるかではなく、いくら無駄にせずにすむかです」と言い、グレッグもシャトルバスの導入を認め、結果として離職率は大幅に下がります。

 第2章「夢はかなう!」では、サイモンが離職問題をめぐる幹部会議において、従業員が今やっている仕事と、彼らが夢見ている豊かな未来とを結びつけない限り、この問題は永遠に解決しないとし、「ここで働くことが自分の望む未来につながると具体的に示すことこそ、唯一の方法だ」と発言、アシスタントのサンドラの助けを借りながら、社員に「あなたの夢は何か」を訊くアンケートを実施する準備にかかるとともに、社長のグレッグに、社員の夢を実現できる手助けをする「ドリーム・マネジャー」の必要を説きます。グレッグは、悩んだ末に、サイモンの「マネジメントの方法自体を革命的に変えられる」との言葉に後押しされるように、ドリーム・マネジャーを探すことにOKを出します。サイモンとサンドラはあらゆるところに求人広告を手配し、ひきもきらない応募者の中から最終的にショーンという人物をドリーム・マネジャーに迎えます。

 まず管理職がショーンとのセッションを設けることになり、最初にセッションを受けたジェフは、当初この試みに懐疑的だったものの、大陸横断旅行という自分の夢の実現にむけて一歩踏み出します。さらに、「部下が具体的な夢を持てるようになり、それが実現したら、彼らは顧客に対しても同じことをするようになる」とサイモンは説き、セッションは一般社員にも行われ、ドリーム・マネジャーのショーン自身が、人は、ただ夢を語るだけで自然とその実現に向かうようになるという事実に驚かされたように、リタはドリーム・マネージャーと会った132日後に夢だったマイホームの取得を実現し、そのほかにも多くの社員が夢によって人生を取り戻します。

 第3章「ハッピーエンド」では、その後も、夢が現実となる文化のなかでは、仕事への情熱と、やってやれないということないという自信とが無限に生みだされることが次第に明らかになったとしています。グレッグ自身も、「ビジネスが失敗するときにはたいてい、少ない戦力に大きな間接部門がぶらさがっている。逆に成功する企業では、全員が戦力と化すものだ」と痛感するようになります。また、サイモンは、「わが社では物足らなくなった人がいた場合に、外の働き口を探してやることが仕事になります」と言います。離職率ゼロが、組織の目標ではないということです。サンドラは、「ドリーム・マネジャーは忠誠心をも生む」と言い、ミッシェルは。「人は人生の多くの時間を働いて過ごすわけですから、仕事は楽しいものであるべき」だとし、サイモンはさらに、「夢は、あなたがどんな人間かだけでなく、明日のあなたがどうなりたいと願っているかも教えてくれる」と言います。

 第Ⅱ部の「実践ガイド」では、まず、自分の夢の実現に向けたステップとして何をやっていくべきか、また、夢のカテゴリーとしてどのようなものがあるかを示して、このドリーム・マネジャー・プログラムというものが広い応用範囲があることを強調するとともに、これからの時代の「忠誠心」とは、社員と会社が互いに「自分の理想を実現する」という目標を理解することがその土台となり、21世紀の管理職がなすべきことは、会社を発展させる方法を見つけるとともに、部下が仕事上でも個人としても伸びていけるよう手を貸せる人ということになるとしています。

 いいことづくめの夢のような「物語」に思えるかもしれませんが、本書のモデルとなった清掃会社が実在します。社員は「会社が自分を思ってくれている、だからその会社のために働きたい」と考えるという、実にシンプルな思想のもと、その実践例を示した本であると言えます。「社員満足向上には、給料を上げ、労働時間を減らすのが最善で唯一の方法」「個人の夢は個人でなんとかすべきである」といった考えに見直しを迫る本でもあり、一読をお勧めします。

《読書MEMO》
●目次
はじめに
・組織を動かす1人ひとりが理想の自分になろうと懸命に努力すれば、その組織は理想の状態に近づく
・「ビジネスウィーク」は今後10年間に、あらゆる分野、地域、産業で役員クラスの21パーセント、一般管理職の24パーセントのポストが空席になるだろうと報じている。
・人は会社のために存在しているわけではない。会社が人間のために存在する。
第Ⅰ部・物語
1.変化のきざし
・現場の従業員はビジネスについて、われわれの知らないことを知っている
・問題は、コストがいくらかかるかではなく、いくら無駄にせずにすむかです。
2.夢はかなう
・人間を特別な存在にしているものは、豊かな未来を想像し、未来に希望を託し、その未来に向かって歩む能力です。
・これからふたりでやりたいこと、行ってみたい場所、ほしいもの、大切にしたい人間関係、それぞれの夢を紙に書き出すこと
・人を仕事に引き止めるものは、「やりがい」と「進歩し成長している実感」。
・「この中で、これから半年以内でかなえたい夢はなんですか?」
・大切なのは完璧さを求めることではなく、"自分が進歩していることに注意を向ける"ということです。
・『偉大な書物を読もうとしない人間は、字が読めない人間と得るものになんら変わりはない』
・部下が具体的な夢を持てるようになり、それが実現したら、彼らは顧客に対しても同じことをするようになる
・人は、ただ夢を語るだけで自然とその実現に向かうようになる
・希望は計画から生まれる
・相手の夢を理解しようとすること、その夢の追求や実現に手を貸すことが、いかに人間関係を変える力強い原動力になりうるか。
・お互いの夢に関心を払うとき、あらゆる人間関係は必ずよりよいものになる。
・ビジネスマンのほとんどにとって、ビジネスとはお金を稼ぐことで、金をかけて問題を解決するという発想がないからです。
・社員は、認められたいんです。
・プロセスへの全員参加
3.ハッピーエンド
・本当の貧しさとは、機会が与えられないこと。
・ビジネスが失敗するときにはたいてい、少ない戦力に大きな間接部門がぶらさがっている。
・逆に成功する企業では、全員が戦力と化す。
・離職率ゼロが、組織の目標ではない。
・人間を人間らしく扱えば、相手もまた人間として応えてくれる。
・企業活動においては、ビジネスを動かすのも組織を動かすのも人。
第Ⅱ部・実践ガイド
・計画を立てることは1人でもできる。大変なのは、最後までやりぬく意志を持ち続けることだ。
・新時代の忠誠心は、「たがいの価値を高めあう」ことで築かれる。
・社員が自分自身のためにやらないことを、会社のためにやってくれると期待するのはまちがっている。
・夢の実現に向けて
 (1)ドリーム・ブックを用意する
 (2)夢を書きはじめる
 (3)夢に制限を設けない 
 (4)ドリーム・ブックに書き込むときには日付を入れる
 (5)夢が実現したら、その日付も加える
・勇気の言葉
・大きな一歩を踏み出すことを恐れるな 
・リスクをとる勇気のないものは、人生で何も成し遂げることができない
・時宣を得たアイデアほど力強いものはない
・勇気をもて。そうすれば偉大な力が助けてくれる
・人生の大きさは、勇気の大きさに等しい
・車を運転するのにもお金を使うにも歳をとりすぎ、ついに思い出と思索だけの日々が訪れたとき、はたして世の中のために出来ることがあるだろうか
・夢の種類
 (1)肉体(2)感動(3)知性(4)精神世界(5)心理(6)物質(7)仕事(8)経済(9)創造性(10)冒険(11)後世に残すもの(12)性格
・夢実現ステップ
  ステップ(1):夢リストを作る(12カテゴリ、100リスト)
  ステップ(2):毎朝30分。部下(パートナー)と話す。心から関心をもつ。
  ステップ(3):部下を集めてドリームセッションを行う。
  ステップ(4):人事面接を利用し、各人の夢のなかからあなたが力になれる夢をひとつ選び、1年以内に達成できるよう励ます。

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