【3383】 ◎ 向井 蘭 (編著) 『教養としての「労働法」入門 (2021/03 日本実業出版社) ★★★★☆

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本書を読んで自身の労働に関する「教養」に磨きをかけるのもいいのではないか。

教養としての「労働法」入門2021.jpg教養としての「労働法」入門』['21年]

 かつては劣悪な労働環境改善や、長時間労働の是正などのために、近年では同一労働同一賃金、ハラスメントなどへのルールを定めてきた労働法ですが、本書は、海外諸国の制度と比較しながら、労働基準法や労働契約法などが制定された歴史的な背景などから労働法を解説した入門書です。

 序章で労働法とは何かを概説し、また、政令・省令・指針・通達・告示のそれぞれの位置づけや役割を解説しています。ここでは、背後にある価値観が労働法制全体に影響を与えるとしています。第1章では、労働法の歴史と現在を、労働基準法、労働組合法、労働契約法のそれぞれについて解説しています。

 第2章では、日本の「解雇」に関する規制について、諸外国との比較で見えてくる特徴や、日本の解雇規制の歴史と最近の問題点を解説しています。また、採用・内定・試用期間、有期労働契約のルールも解雇規制の延長で考えると理解しやすいとし、さらには「解雇」規制を表の規制、「配置転換」を裏の規制と捉えると、強大な配転命令権がなぜ生まれたのかが見えてくるとしています。

 第3章では、多様な雇用の在り方とそれらを取り巻く法制度について解説しています。まず、労働者とは誰か、労働法の保護を受ける者について解説し、職業紹介や労働者派遣についても説明しています。さらには、正規雇用・非正規雇用との関連で、「同一労働同一賃金」改革に関する法改正のポイントを整理し、高齢者雇用についても、日本の特徴と法施策について述べています。

 第4章では、労働時間と有給休暇について扱っています。ここでは、なぜ「8時間労働」や「週5日勤務・週休2日制」が世の中のスタンダードになったかを歴史的経緯から解説するとともに、年次有給休暇の起源とそれがどのように発展してきたかを述べており、興味深く読める章となっています。

 第5章では、労働環境をテーマとし、セクシャル・ハラスメント、パワーハラスメントについて、これまでの経緯と現在の法規制の内容、今後の課題を諸外国との比較において述べています。また、安全配慮義務の法規制の成り立ちや変容についても解説しています。

 第6章では、懲戒ルールについて、懲戒処分はどこまでできるかを考察し、第7章では労働組合について、現代的労働組合と「不当労働行為」などの関連する概念について再整理しています。

 本書では、「役に立たない知識が役に立つ」と考え、労働法を考える上でヒントになる情報を盛り込んだとのことです。確かに、労働法の歴史を学ぶことや、諸外国の制度と比較しながその特徴を知ることは、これまで当たり前と思って受け入れていたことについて、また別の視点を提供してくれるものであるように思いました。

 法改正をひたすら追いかけ、その対応に追われるばかりが人事パーソンのあるべき姿ではないことは明白であり、労働法の現在や将来に対して、自分なりに見識や展望を持つということも大切ではないかと思われます。本書を読んで自身の労働法に関する「教養」に磨きをかけるのもいいのではないでしょうか。

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This page contains a single entry by wada published on 2024年1月25日 15:56.

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