【3382】 ◎ 高橋 潔 『ゼロから考えるリーダーシップ (2021/04 東洋経済新報社) ★★★★☆

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ユーモアに助けられて肩が凝らずに読み通せるリーダーシップの「教科書」。

ゼロから考えるリーダーシップ2021.jpgゼロから考えるリーダーシップ』['21年]

 本書は、企業組織の研究を心理学と経営学の両方から研究してきた著者によるリーダーシップの「教科書」であり、マネジャーとリーダーはどう違うのか、リーダーシップはカリスマや積極的な人だけのものなのか、リーダーは何を考えているのか、といったリーダーシップにまつわるさまざまな疑問に答えながら、リーダーシップ理論の体系とその中身を解説しています。

 まず、第1章で、リーダーシップとは何か、第2章で、リーダーとマネジャーの違いは何か、第3章で、マネジャーとして、リーダーとして必要な素養とはそれぞれどのようなものかを解説しています。第4章では、トヨタグループへの調査結果と照合させながら、学術上、リーダーシップの3要素として、業務を担うリーダーシップ、人間関係を担うリーダーシップ、変革を担うリーダーシップがあることを紹介しています。

 続いて第5章では、マネジメントやリーダーシップは本当に組織で役に立っているのかを調査から分析し、リーダーシップとマネジメントはともに組織に不可欠だが、それを両立させる黄金比は3:1であるとしています。つまりポジティブ(リーダーシップ)とネガティブ(マネジメント)の比率バランスが3:1であることが理想であるという、「3:1の法則」を提唱しています。

 第6章では、リーダーシップ理論のビッグファイブ・パラダイムとして、①特性理論、②行動理論、③条件適合(コンティンジェンシー)理論、④リーダー・メンバー交換関係(LMX)理論、⑤変革型理論の5つがあるとして、それぞれを解説しています。この章はとりわけ、読者のリーダーシップに関する"理論武装"に資するであろう章となっています。

 第7章では、リーダーシップと脳の機能の関係を解説し、業務志向・対人志向の2要素と未来志向・現在志向の2要素の掛け合わせから、業務遂行型リーダーシップ、チームワーク型リーダーシップ、ビジョン型リーダーシップ、育成型リーダーシップという4つのリーダーシップと、それに呼応する、ゲームリーダー、チームリーダー、イメージリーダー、ドリルリーダーという4タイプのリーダー像を示しています。

 第8章では、リーダーシップはどうすれば育成できるのか、知識と経験でリーダは育つのかを考察し、第9章では、リーダーにとって対話が持つ意味は何か、対話がもたらすリーダーシップの効果について解説しています。

 第10章から11章にかけては、リーダーにとってビジョンとはどういうことかを述べ、リーダーの器はビジョンで決まるとし、ビジョンはどうすれば鍛えられるのかを解説しています。

 第12章では、リーダーには集団を引っ張るリーダーだけではなく、従者(サーバント)として集団を支えるリーダーや、リーダーシップをメンバーと分かち合うリーダー(シェアド・リーダー)もいるとしています。その上で、最終章の第13章では、日本型リーダーシップの本質とは何かを考察しています。

 しっかりした内容で、リーダーシップの歴史を踏まえつつ、最近のトレンドも押さえた本であったと思います。前提としてリーダーシップをマネジメントと峻別する立場に立っていること、リーダーシップの解説においてポジティブ心理学の知見などが織り込まれていることなどが特徴的です。

 ともするとガチガチに固いテキスト本になりがちな内容であるにも関わらず、随所にアニメ等にまつわるネタなどをギャグ的にを織り交ぜているため、そうしたユーモアに助けられて固さが緩和され、肩が凝らずに読み通せるのも、類書にはない特長かと思います。リーダーシップ理論について初学者が入門書として読むのもいいし、ベテランが復習のために読むのもいいと思います。

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