【3381】 ○ 熊平 美香 『リフレクション(REFLECTION)― 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』 (2021/03 ディスカヴァー・トゥエンティワン) ★★★☆

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リフレクションについての気づきを与えてくれるが、実践はまた別か。

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リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術 オリジナルフレームワークPPT・PDF特典付き』['21年]

 本書では、リフレクションとは、自分の内面を客観的、批判的に振り返る行為であり、「内省」という言葉が最も近いとしています。リフレクションの目的は、あらゆる経験から学び、未来に活かすことであるとし、このスキルを応用していくことで、自分自身だけでなく、他者への理解を深めて成長を促進したり、組織をまとめるリーダーシップを育んだりすることができるとしています。本書は、そうしたリフレクションスキルを身につけるための基本メソッドを紹介したものです。

 第1章では、リフレクションの質を高めるメタ認知のフレームワーク「認知の4点セット」(意見・経験・感情・価値観)と、リフレクションの基本となる5つのメソッド(自分を知る・ビジョンを形成する・経験から学ぶ・多様な世界から学ぶ・アンラーンする)を紹介しています。この章は、本書の"読みどころ"になるかと思います。

 第2章は「リーダーシップ編」であり、メンバーの主体性を引き出すチーム型リーダーになるには、リフレクション(認知の4点セット)をどう活用すればよいかを説いています。ここでは、ぶれない軸をつくるリフレクション、自分自身のモチベーションを高めるリフレクション、感情を上手に扱うリフレクション、思考の柔軟性を高めるリフレクション、対話力・傾聴力を高めるリフレクションなどを紹介しています。

 第3章は「育成編」であり、自立型学習者を育てるにはどうすればよいか、部下育成にリフレクションを活用する方法を紹介しています。ここでは、先に述べた5つのメソッドを自分だけでなく他者にも応用することを説くとともに、自分の頭で考える力を育むにはどうすればいいか、信頼関係を構築するにはどうすればよいか、相手の強みを引き出したり成長を支援するにはどうすればようか、などを解説いています。

 第4章は「チーム編」であり、どのように他者と協働(コラボレーション)するかを説いています。ここでは、組織のパーパス(目的)・ビジョン(ありたい姿)・バリュー(組織文化)の定義にも認知の4点セットを活用することを推奨するとともに、ビジョンを浸透させるにはどうすればよいか、多様性を価値に変えるにはどうすればよいか、などについても認知の4点セットから説明し、最後に、ピーター・センゲが提唱した「学習する組織」を作るための5つの規律(ディシプリン)を紹介しています。

 著者自身が「学習する自立型組織を目指す人のためにハウツー本」として執筆したと述べているとおり、本書におけるリフレクションの基本となる5つのメソッドは、ピーター・センゲの「学習する組織」における5つのディシプリンを、その実践方法として再構築したものであるようです。

 リーダーにはリフレクション(内省)が不可欠であるとはよく言われるものの、そのことを掘り下げて一冊にまとめた本は少なく、その点ではリフレクションにフォーカスして書かれた本書は、読む価値はあったかと思います。また、リフレクションのメソッドを自分だけでなく他者にも応用することを説いているのはユニークです。

 体系的にも整理されていて、最新のリーダーシップや組織開発に関する理論も随所で紹介されています。マイドフルネス、レジリエンス、グロースマインド、ウェルビーイングといったことにも触れていれば、ティール組織やホラクラシーといった言葉も出てきます。

 ただし、読み終わって、やや漠たる、少しもっとした印象が残るのは、本書におけるリフレクション・メソッドのスタートは、結局は自身の認知の在り方ということになるためではないかとも思いました(認知心理学(論理療法におけるABC理論(出来事(A)、信念(B)、結果(C))を想起させる)。本書を読んで〈気づき〉を得られるのは、それはそれでいいのですが、それがイコール実践というようには、すぐにはならないのではないかという感想も抱きました。

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