【3380】 ◎ マイケル・アブラショフ (吉越浩一郎:訳) 『アメリカ海軍に学ぶ「最強のチーム」のつくり方―一人ひとりの能力を100%高めるマネジメント術』 (2015/05 知的生きかた文庫) ★★★★☆

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「できるリーダー」の部下の能力を100%引き出すマネジメント術。読みやすく説得力がある。

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アメリカ海軍に学ぶ「最強のチーム」のつくり方: 一人ひとりの能力を100%高めるマネジメント術 (知的生きかた文庫 よ 19-2)』['15年]

 本書は、『即戦力の人心術―部下を持つすべての人に役立つ』('08年/三笠書房))の文庫化・改題版で、内容は、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦「ベンフォールド」の艦長として300名以上のクルーを率い、機能不全に陥っていた同艦を"海軍No.1"と呼ばれるまでに大変革させ、海軍中にその名を轟かせたという元海軍大佐が、「できるリーダー」は何をしているのか、その具体的な思考方法を明らかにし、部下一人ひとりの能力を100%引き出すマネジメント術を、自身の経験に基づいて説いたものです(原題: It's Your Ship -Management Techniques from the Best Damn Ship in the Navy(2002))。

 第1章「「硬直した組織」に、ガツンと変化を起こす」では、硬直した組織に変化を起こすために著者はまず、部下の身になって、何がいちばん大事かを考えたとしています。そして、もっとよいやり方はないか部下に聞いてまわり、いいアイデアは惜しみなく褒め、実績として高く評価したとのことです。「自分たちの提案を大事にしてくれる上司」に対しては、部下たちは心を開き、信頼を寄せてくれるものであるとしています。

 第2章「部下を迷わせない、確たる「一貫性」」では、単に命令するだけでは部下は動かず、①目標を明確にし、②その任務を達成するための十分な時間・資金・材料を部下に与え、③部下に十分な訓練を受けさせなければならないとしています。そして、結果だけではなく、正しいやり方を重視し、そのことが明日のワシントン・ポストの一面に掲載されて全米中に知られることになって、それを誇りに思うだろうかを問うてみるとしています。

 第3章「「やる気」を巧みに引き出す法」では、部下のやる気を引き出すには、組織内のすべての人間との出会いを大事にしたとのことです。また、自分の部下をよく知っていることは、実に大きな資産で、部下を上手く指導する手段ともなるとしています。

 第4章「明確な「使命」を共有せよ」では、管理職にとって重要なのはチームの力であり、そのためには「集団の知」が必要であるとしています。また、部下がどれだけ上司の命令について知っているかということと、彼らがそれをどれだけうまく実行できるかということには直接的な関係があるとしています。

 第5章「チームで「負け組」を出さない!」では、組織全体が勝利すれば、そこにいる全員の勝利であり、負け組が必要な組織など偽物であるとしています。また、部下を見限ったりせず、力になるつもりだというシグナルを送ると部下は安心できるとしています。

 第6章「なぜ「この結果か」をよく考える」では、部下に服従を求めるだけでなく、アイデアや自発性を引き出すことが必要であり、「自分自身で判断し、行動する」ことを身につけさせれば、部下がその後どのような人生を歩んだとしてもそれは彼らにとって貴重な財産となるとしています。

 第7章「「合理的なリスク」を恐れるな!」では、「合理的なリスク」を恐れてはならず、ときには失敗しても冒険する人間を称え、昇進させるべきであるとしています。

 第8章「「いつものやり方」を捨てろ」では、マニュアルはおよび腰な行動の原因となり、本当に重要なものを見えなくするとし、日ごろから自分たちの仕事において「いちばん大事なこと」をおろそこにするなとしています。懸命に働くな、賢明に働けとも言っています。

 第9章「あなたはまだ、部下をほめ足りない!」では、部下の些細に思える意思表示を見逃さず、コミュニケーションを重ねることで、親密で協力的な雰囲気が生まれるのだとしています。また、前向きで、直接的な励ましこそが効果的なリーダーシップの本質であるともしています。

 第10章「「頭を使って遊べる」人材を育てよ」では、どんな組織でも、友人たちと楽しむことは、お金では換算できない、大きな精神的つながりを生み出すとしています。

 第11章「永遠に語り継がれる「最強のチームワーク」」では、リーダーの役割は「管理すること」よりも、「いかに才能を育て、延ばすか」にあるとして本書を締めくくっています。

 著者自身が「この武勇伝」と呼んでいるように、実際に著者が経験したエピソードばかりで構成されているため、読み物を読むように読めます。アメリカ海軍が舞台になっていますが、企業組織にも通用することがほとんどであり、机上の空論ではなく、実際の指導経験と成功例に支えられた内容となっているためり、読みやすくて説得力がある良い本だと思いました。広くお薦めできるものです。

《読書MEMO》
●第1章:「硬直した組織」に、ガツンと変化を起こす
・艦長室で報告を待っているのではなく、積極的に艦内を歩きまわって意見を吸い上げる。
・何をするにも必ずもっと良い方法があると考えよ。
・どんな小さな提案であっても、いいアイデアは惜しみなくほめ、その提案者の実績として高く評価した。
・自分たちの提案を大事にしてくれる上司に対しては部下たちは心を開き信頼を寄せてくれる。
●第2章:部下を迷わせない、確たる「一貫性」
・目標を明確にし、それを行うだけの時間と設備を与え、部下がそれを正しく行う為の適切な訓練を受けていることを確認しない限り、もう二度と命令を口にすることはしない。
・結果だけではなく正しいやり方を重視する。明日のワシントン・ポストの一面に掲載されて全米中に知られることになってそれを誇りに思うだろうか、恥と思うだろうか。汚い手を使って目標を達成しても必ず敵をつくり、長い目でみるとマイナスである。
●第3章:「やる気」を巧みに引き出す法
・艦にいる全ての人間との全ての出会いを一番大事なものとして扱う。
・艦にいる全員の名前を覚える。
・自分の部下をよく知っていることは、実に大きな資産で、部下を上手く指導する手段となる。
●第4章:明確な「使命」を共有せよ
・部下がどれだけ上司の命令について知っているかということと、彼らがそれをどれだけうまく実行できるかということには直接的な関係がある。
●第5章:チームで「負け組」を出さない!
・組織全体が勝利すれば、そこにいる全員の勝利である。
・負け組が必要な組織など偽物である。
・部下を見限ったりせず、力になるつもりだというシグナルを送ると部下は安心できる。
・悪い知らせを持ってくる人間をないがしろにせず信頼関係を築いておくことで、悪い知らせほどすぐ耳に届くようにする。
●第6章:なぜ「この結果か」をよく考える
・「自分自身で判断し、行動する」ことを身につけさせれば、部下達がその後どのような人生を歩んだとしてもそれは彼らにとって貴重な財産になる。
●第9章:あなたはまだ、部下をほめ足りない!
・前向きで、直接な励ましこそが効果的なリーダーシップの本質である。
・彼らを機械のように扱うのをやめれば、彼らの業績は向上する。
・あらゆる重要な業務でクロストレーニング(複数の仕事ができるよう訓練すること)を実施することが必要であり、そうしないと重要な業務に精通している人間が一人だけになってしまい、何かあったときに惨事が起こる可能性がある。

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