【133】 △ ジェフリー・A・クレイムズ (沢崎冬日:訳) 『ジャック・ウェルチ リーダーシップ4つの条件―GEを最強企業に導いた人材輩出の秘密』 (2005/11 プレジデント社) ★★★

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Energy(情熱)、Energize(元気づけ)、Edge(決断力)、Execute(実行力)。

ジャック・ウェルチ リーダーシップ4つの条件.jpg  『ジャック・ウェルチ リーダーシップ4つの条件』 (2005/11 プレジデント社)

 本書は、ウェルチのリーダーシップ論の成り立ち及び展開と、それに沿って彼がGEで行った経営改革や人材育成戦略について、識者の評価を交えながら紹介し、またそのDNAを受け継いだ経営者たちはどうであったかが書かれています。

 彼の言う「リーダーシップ4条件」とは、Energy(エネルギーまたは情熱)、Energize(元気づける)、Edge(決断力)、Execute(実行力)」ですが、CEO就任当時は頭脳、心、ガッツという原初モデルだったというのが面白い(ウェルチ自身としては整合性のとれたものだったが、人に伝わりにくかった?)。

Four Types of Managers.png また、マネジャーを、タイプA(右図1)「価値観に忠実で成果を上げる」、タイプB(右図2)「価値観に忠実だが必ずしも成果を上げるとは限らない」、タイプC(右図4)「価値観に忠実ではないが成果を上げる可能性がある」の3タイプに分け、タイプBやCをタイプAに変身させるのは困難で、試みる価値もなく、将来的にはよその企業へ押し付けるべき人材だとしています。

From General Electric's year 2000 annual report.

 これも1種の原初モデルで、後にもっとわかり易いマトリックス型人材モデル(右図)として提示していますが、例えば、本書の中でも述べられている、「差別化とは、極端であることだ。最も優れた者に報酬を与え、無能な者を排除する」といった成果主義や、「トップ20%、活力のある70%、底辺10%」という選別主義の考え方の基となっているように思えました。 

 有名な「ナンバー1、ナンバー2」戦略がドラッカーの影響を受けたものであることは知られていますが、「企業にカリスマは不要である」という考え方でもドラッカーと一致し、"カリスマ性"よりも"情熱"を重んじたというのは興味深いです。
 個人的には、日本人の情緒的指向性としては、競争に価値を置く"情熱家"よりも、なんとなく共存を図る "カリスマ"の方へ向かいやすく、日本版ウェルチが誕生しにくい原因になっているのかも、と思った次第です。
 
 翻訳モノの"ウェルチ本"は少なからずどれも、彼の自伝『ジャック・ウェルチ わが経営』('01年/日本経済新聞社)と被ってしまう傾向にあり(その"絶賛"姿勢も含め)、本書も本としては悪くはないのですが、もう少し「華々しい結果」より「苦労したプロセス」について書いて欲しかった気もします。

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月16日 22:23.

【132】 × 米倉 誠一郎 『脱カリスマ時代のリーダー論』 (2005/06 NTT出版ライブラリーレゾナント) ★☆ was the previous entry in this blog.

【134】 ○ 沼上 幹 『組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために』 (2003/03 ちくま新書) ★★★★ is the next entry in this blog.

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