「●上司学・リーダーシップ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1677】 マーカス・バッキンガム 『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』
Energy(情熱)、Energize(元気づけ)、Edge(決断力)、Execute(実行力)。
『ジャック・ウェルチ リーダーシップ4つの条件』 (2005/11 プレジデント社)
本書は、ウェルチのリーダーシップ論の成り立ち及び展開と、それに沿って彼がGEで行った経営改革や人材育成戦略について、識者の評価を交えながら紹介し、またそのDNAを受け継いだ経営者たちはどうであったかが書かれています。
彼の言う「リーダーシップ4条件」とは、「Energy(エネルギーまたは情熱)、Energize(元気づける)、Edge(決断力)、Execute(実行力)」ですが、CEO就任当時は「頭脳、心、ガッツ」という原初モデルだったというのが面白い(ウェルチ自身としては整合性のとれたものだったが、人に伝わりにくかった?)。
また、マネジャーを、タイプA(右図1)「価値観に忠実で成果を上げる」、タイプB(右図2)「価値観に忠実だが必ずしも成果を上げるとは限らない」、タイプC(右図4)「価値観に忠実ではないが成果を上げる可能性がある」の3タイプに分け、タイプBやCをタイプAに変身させるのは困難で、試みる価値もなく、将来的にはよその企業へ押し付けるべき人材だとしています。
From General Electric's year 2000 annual report.
これも1種の原初モデルで、後にもっとわかり易いマトリックス型人材モデル(右図)として提示していますが、例えば、本書の中でも述べられている、「差別化とは、極端であることだ。最も優れた者に報酬を与え、無能な者を排除する」といった成果主義や、「トップ20%、活力のある70%、底辺10%」という選別主義の考え方の基となっているように思えました。
有名な「ナンバー1、ナンバー2」戦略がドラッカーの影響を受けたものであることは知られていますが、「企業にカリスマは不要である」という考え方でもドラッカーと一致し、"カリスマ性"よりも"情熱"を重んじたというのは興味深いです。
個人的には、日本人の情緒的指向性としては、競争に価値を置く"情熱家"よりも、なんとなく共存を図る "カリスマ"の方へ向かいやすく、日本版ウェルチが誕生しにくい原因になっているのかも、と思った次第です。
翻訳モノの"ウェルチ本"は少なからずどれも、彼の自伝『ジャック・ウェルチ わが経営』('01年/日本経済新聞社)と被ってしまう傾向にあり(その"絶賛"姿勢も含め)、本書も本としては悪くはないのですが、もう少し「華々しい結果」より「苦労したプロセス」について書いて欲しかった気もします。