【3397】 ○ 沢渡 あまね 『なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか (2021/12 SB新書) ★★★★

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職場の問題点だけでなく、人事についての自分の意識のセルフチェックにいいかも。

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なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか (SB新書)』['21年]沢渡あまね氏

 本書では、日本の職場は、国際調査を見ると、人間関係、生産性、やりがい、満足度などの点で「世界一」ギスギスした職場とされているとした上で、日本の職場のどこに問題があるのか、働きやすい職場に生まれ変わるにはどうしたらよいかを、そのアイデアを提案しています。

 はじめに、日本の職場がギスギスする3つの主な要因として、①旧態依然のマネジメントや働き方、②旧態依然の職場環境、③ジェネレーションギャップを挙げ、職場のギスギスを解消させる3つのシフトとして、マインドシフト、マネジメントシフト、スキルシフトを挙げています。その上で、以下、ケースごとに職場のギスギスを生む要因を紐解き、それをどう解決していくか、3つのシフトをどう仕掛けていくかを、本文3章にわたってまとめています。

 第1章では、環境によるギスギスについて取り上げています。ここでは、職場環境によるギスギスとして、人が辞めていく、情報が共有できない、管理職・上司が現場を知らない、相談や提案がしにくい一方通行のコミュニケーション、誰に何を訊けばいいのか分からない、部門間の連携が取りにくい、といった6つの問題を、さらに、労働環境によるギスギスとして、公平すぎて不公平な働き方、テレワークで仕事がはかどらない、物理的環境がよくない、という3つ問題を挙げて、それぞれの原因と問題解決のヒントを示しています。

 第2章では、スキルやメンタリティによるギスギスについて取り上げています。スキルとキャリアによるギスギスとして、組織は集団主義だが行動は個人主義であること、雑用が多くてスキルが伸びないこと、日本特有の採用ミスマッチ、待遇で区別される非正規社員と働かなくても大丈夫な正社員、の4つの問題を、メンタリティによるギスギスとして、新しいことへの挑戦を拒む「5教科主義」「減点評価主義」、いまだに目立つ根性論、確認が多くてイライラの部下としっかり仕事しているか不安の上司、という3つの問題を挙げて、それぞれの問題解消のためのポイントを示しています。

 第3章では、制度によるギスギスについて取り上げています。ここでは、毎日出社しなければいけない、条件が厳しくて働けない、自分が動いても何も変わらない、終身雇用がモチベーションを下げるといった、制度に起因する問題を取り上げ、問題解決の道筋を示唆 しています。

 読んでいて、自分の職場も同じような問題を抱えていると思われる読者は多いのではないでしょうか。そうした問題の特効薬的な解決方法を示すというよりは、マインドシフト、マネジメントシフト等を促すことを主眼として、解決のためのアプローチを示しているように思えました。

 帯に「こんな職場は危険信号」とあって「コロナ禍依然と働き方が変わらい」とありますが、「テレワークで仕事がはかどらない」という問題については、テレワーク以前の仕事のプロセスに問題があるとしていて、なるほどと思いました。すごく斬新なことが書かれているわけではありませんが、自分の職場の問題点のセルフチェックにはいいかと思います。

 本文の最後で「終身雇用がモチベーションを下げる」と言い切って、企業として人材に投資する一方、成長しない人たちには厳しい人事制度に変えていくべきであるとし、おわりには、「気合・根性主義の体育会系カルチャー、そろそろおやすみなさい」とあります。これからのあるべき人事についての自分の意識のセルフチェックにもいいかもしれません。

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