【3362】 ◎ HRインスティテュート/三坂 健 『この1冊ですべてわかる 人材マネジメントの基本 (2020/07 日本実業出版社) ★★★★☆

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テキストだが、単に総花的・羅列的ではないのがいい。通読するだけで新潮流が分かる。

人材マネジメントの基本』.jpg人材マネジメントの基本.jpg 『この1冊ですべてわかる 人材マネジメントの基本』['20年]

 本書は、人材マネジメントとは「個人(社員やメンバー)が、所属する組織や社会のために、能力を最大限に引き出し、発揮することを支援する組織の関わり」であり、その重要性はますます高まっているとの考えのもと、人材マネジメントの基礎知識、導入の方法から最新トピックまでを網羅したものです。

 まず序章において、これまでの、人材は会社の「資源」であるという「ヒューマンリソース」の見方をベースに、人材にいかに効率的に働いてもらうかを考える従来型の管理型マネジメントに加えて、今後は、人材は会社の「仲間」であるという「ヒューマンリレーションシップ」の見方のもとに、人材にいかに主体的に働いてもらうかを考える、個人の主体性を重視したマネジメントが重要性を増すとしています。また、これまでの管理的なマネジメントではなく、委任的なマネジメントが求められるとして、ハーバード大学のリンダ・ヒル教授が提唱する、「羊飼い型のリーダーシップ」(逆さまのピラミッド)という概念を紹介しています。

 第1章では、人事マネジメントの具体的な「定義、目的、役割」について、第2章では、人材マネジメントを取り巻く、特に重要な「組織変化とその対応方法」について解説しています。第3章では、人材マネジメントの入り口である「人材の獲得」に関するトレンドや考え方、具体的な方法について、第4章では、獲得した人材の「育成方法」についてOJTとOFF-JTの両側面面から解説しています。第5章では、「人材の評価」の考え方、具体的な方法と「目標管理」の在り方を新しいトレンドも踏まえ解説し、第6章では、「人材を輝かせる組織の在り方」「組織デザイン」について、第7章では、企業や組織が人材とともに「持続的に成長するために必要な関わり」「カルチャーの形成」に関する考え方と取組方法について解説しています。

 このように網羅的であり、各章においてテーマに沿った基本を押さえながらも、例えば第2章では、時代の要請に沿った人材マネジメントの在り方を論じる中で、働き方改革、通年採用、副業解禁、女性の抜擢人事、男性の育休取得、介護離職問題、シニア人材活用、外国人雇用といったトレンディかつ具体的なトピックを扱っています。

 同じように、第5章の「人材の評価」では、テレワークの社員をどう評価するか、第6章の「組織デザイン」では、"パワハラ""逆パワハラ"を生まない組織基盤を構築するにはどうすればよいか、SDGsに対応する人材マネジメントとはどようなものか、といったことにも触れらています。

 形態はテキスト的でありながらも、内容的に単に総花的・羅列的ではないのがいいと思います。序章以下の随所に、著者らのコンサルティング経験をベースにした考え方や主張も織り込まれていること、また、章を追うごとにテーマがより根源的なものになっていくことが、全体を読みやすく、また、最後まで読み通せるものにしていると思います。

 もちろん関心のある部分から読むのもいいし、通読するだけでも、人材マネジメントの基本と最近のトレンドに関する知識が身につくと思います。また、人事部に配属になったばかりの初学者に限らず、ある程度経験がある人事パーソンが読んでも、目指す方向性の確認などにおいて、少なからず示唆が得られるのではないかと思います。

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