【3363】 ◎ 労務行政研究所 『第3版 はじめて人事担当者になったとき知っておくべき、⑦の基本。⑧つの主な役割。―入門編(人事の緑本)』 (2020/08 労務行政) ★★★★☆

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「人事の緑本(入門編)」第3版。「赤本(基礎編)、青本(応用編)と併せてお薦め。

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第3版 はじめて人事担当者になったとき知っておくべき、7の基本。8つの主な役割。(入門編)』['20年] 『人事担当者が知っておきたい、8の実践策。7つのスキル。』(2010/08 労務行政)

 企業が継続的に成長していくうえで欠かせない経営資源であるヒト、モノ、カネ、情報のうち、最も重要なのが「ヒト」であることはドラッカーの指摘を待つまでもありませんが、経営管理においてその「ヒト」の部分を担うのが人事労務管理の役割であるといえるでしょう。

 では実際問題として、人事部に新たに配属になった若手社員がいたとして、人事労務管理(人材マネジメント)の全体像がどれぐらい把握されているかというと、とりあえずは目の前の仕事をこなすことに忙殺され、近視眼的にしか自らの仕事を捉えられていないということもあるのではないでしょうか。

 本書は、人事労務管理を担当する初心者から中堅クラスを対象に、人事の業務全般が体系的に把握できるように解説された入門書であり、2012年刊の初版、2017年刊の第2版に続く第3版であるとともに、2010年刊の『人事担当者が知っておきたい、⑩の基礎知識。⑧つの心構え。―基礎編(人事の赤本)』『人事担当者が知っておきたい、⑧の実践策。⑦つのスキル。―ステップアップ編(人事の青本)』の姉妹本になります。

 これまでと同様、第1章で「人事の基本」として7つの仕事を挙げ、第2章以下、人材確保、人材活用、人材育成、働き方や報酬マネジメント、働きやすい環境の整備、労使関係と社内コミュニケーションを良くすることなど、人事にとって重要な8つの役割について解説されています。

 原則として見開きごとに1テーマとなっていて、要点を絞って簡潔に解説されているうえに図説もふんだんに使われていて、内容的にもオーソドックスであり、新任の人事パーソンにも入門書として読みやすいものとなっています。

 こうした入門書において「読みやすさ」と「内容に漏れがなく一貫性があること」は大きなアドバンテージになるかと思いますが、本書はその両方を満たしており、人材マネジメントの基本的なコンセプトから、諸制度の枠組み、「採用」から「退職」までの業務の流れ、労働法・社会保険に関する基礎知識などが、バランスよくコンパクトに網羅されています。

 さらにこの第3版は、近年の法改正への対応はもちろん、最近注目の人事に関するトピックやテーマにも触れ、例えば、職場環境の整備のところでは、メンタルヘルスケア、ハラスメントの防止、ワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティへの対応といった節が新たに設けられています。

 また、最終章では、環境の変化に伴うこれからの人事の課題として、これまでも触れていた少子高齢化、グローバル化、企業の社会的責任に加え、HRテックとピープル・アナリスティック、日本型雇用慣行とその変容、人事管理(PM)と人的資源管理(HRM)という節が新たに設けられていて、まさに「今」読むに相応しい入門書となっています。

 従来の人事労務管理の入門書が、実際には「マネジメント」領域までは踏み込んでおらず、実務中心のいわば「アドミニストレーション」偏重であるものが多いのに対し、この「緑本」「赤本」「青本」のシリーズを通して感じるのは、何れも人材の「マネジメント」という視座がしっかり織り込まれていることです。

 部下に人事部の役割や仕事を教える際に、実は伝えるのに最も苦労するのがその「マネジメント」の部分であり、その点を含めてカバーしている点にこのシリーズの特長があるように思います。

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