【3500】 ○ エリック・ロメール 「レネットとミラベル 四つの冒険」 (87年/仏)(1989/07 シネセゾン) ★★★☆

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「友だちの恋人」の撮影の合間に撮られた作品。まったく性格の異なる都会の娘と田舎の娘の共同生活。
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レネットとミラベルの四つの冒険/コーヒーを飲んで (エリック・ロメール コレクション) [DVD]」ジョエル・ミケル/ジェシカ・フォルド
 エリック・ロメール監督による1987年公開作「友だちの恋人」の撮影の合間に撮られたのが、同一主人公らによる4つの短編から成るこのオムニバス映画で、ロメール監督は田舎の娘レネット役のジョエル・ミケルの体験談に着想を得て本作を企画し、少人数のスタッフと16ミリフィルムで撮影を敢行したそうです。

1話「青い時間」.jpg 自転車のパンクをきっかけにミラベル(ジェシカ・フォルド)は、ある田舎道で、この町の納屋のような家に一人で住み、絵を描いて暮らしているレネット(ジョエル・ミケル)と出会う。彼女はミラベルに、夜明け前に1分間だけ音のない世界になる"青の時間"を体験させようと家に泊まるよう誘うが、せっかくのチャンスが車の音で失敗に終わる。落胆するレネットに、ミラベルはもう1晩泊まることを告げ、二人はその昼間に田舎の生活と自然を満喫する。そして2泊目の夜明け、二人は"青い時間"を味わい 感動する―。(第1話「青い時間」)

1話「青い時間」2.jpg 同監督の「緑の光線」に似ているように思いました。シリーズ第5作「緑の光線」('86年)は、孤独なヒロインがバカンスの最後の日に知り合った若者と一緒に、日没前に一瞬だけ見えるという太陽の「緑の光線」を見に行くという話でしたが、「青い時間」では、それぞれ田舎と都会に住む若い女性同士の組み合わせ。二人の出会いから、性格の全く異なる二人が打ち解けていく様ががごく自然に描かれていていました。自然も美しいし(「緑の光線」と同じく、チーズで有名なブリー地方が舞台)、レネットの住まいも悪くなかったです。でもパリで絵の勉強をするために、彼女はミラベルのアパートへ―。

2話「カフェのボーイ」.jpg 秋になり、パリのミラベルのアパートで同居し、美術学校に通うレネットは、ある日ミラベルと待ち合わせしたモンパルナスのカフェで、奇妙なボーイ(フィリップ・ロダンバッシュ)と出会う。小銭を持っていないミラベルがコーヒー代に200フラン札を出すと、ボーイは「どうせ友だちなんか来ないんだろう。飲み逃げしようとしてもそうはいかない。おつりが出せないから小銭で払え」と無理難題を言う そこにミラベルがやってきて、彼女は500フラン札を出してボーイと押し問答が続くが、ボーイが席を離れた隙に二人はお金を払わず逃げてしまう しかし、レネットは翌朝、代金を払いにカフェに行く―。(第2話「カフェのボーイ」)

 レネットがモンパルナスのカフェに行く道を尋ねた行きずりの男性たちも変な連中だったけれど、それ以上に可笑しいのがボーイで(客であるレネットからすれば頭にくる相手だが)、翌日、レネットがカフェに金を払いに行った時、「昨日のボーイは?」と訊くと、「彼はアルバイトだから、もういない」と言われます。馘首になったのかなあ。イマイチ、釈然としない...。
 
ヤスミナ・アウリー(万引き犯)/マリー・リヴィエール(詐欺師)
3話「物乞い、窃盗常習犯、女詐欺師」.jpg 物乞いに小銭をやるレネットに影響を受けたミラベルは、ある日、スーパーで万引きする女(ヤスミナ・アウリー)を見つけ、彼女を助ける行為をするが、成り行きから女が万引きした商品はミラベルの手に残ってしまう 帰宅後、二人は彼女の行為について議論する 。ある日 レネットは、駅で小銭をせびる女(マリー・リヴィエール)に会い、彼女に小銭を与えたため電車に乗り遅れてしまう。 電話をしようとするが小銭がないので、彼女も通行人に小銭をせびるがうまくいかない。 すると、先ほどの女がまた通行人から小銭をせびっているのを見つけ、彼女に金を返すように詰め寄るが、彼女が泣き出してしまい 諦める―。(第3話「物乞い、窃盗常習犯、女詐欺師」)

 レネットは、ミラベルが万引き女を助けたと聞き、その理由が「彼女が捕まって懲役になったら可哀そうだから」とのことで、ミラベルを咎めます。ミラベルのやったことは犯罪の幇助であり、それを非難するレネットに分があるでしょう。二人の性格の違いもあるでしょうが、ちょっとミラベルの社会道徳観が心配です(この先、大丈夫か)。女詐欺師を演じたのはロメール監督の「飛行士の妻」「緑の光線」でそれぞれ主役を演じたマリー・リビエールでした。それにしても、3作とも全然タイプの異なる役だなあ(さらに、スーパーの万引き監視員を演じているのは、「美しき結婚」('81年)主演のベアトリス・ロマン)。

ファブリス・ルキーニ(画廊の主人)
4話「絵の売買」.jpg レネットは、今月家賃を払う番だったが、金が無く、 二人はレネットが描いた絵を画廊に売ることにする。 レネットは言葉が話せないふりをして画廊の主人(ファブリス・ルキーニ)と交渉するがうまくいかない。しかし、他の客が画廊に入って来たのを契機に、ミラベルが機転を発揮し二人は大金を手にする―。(第4話「絵の売買」

 これは第2話、第3話に比べて落ちがはっきりしていて面白かったです。画廊の主人を演じたのは、「満月の夜」('84年)で、パスカル・オジェ演じる主人公ルイーズから振られる男性オクターブを演じたファブリス・キーニでした。エリック・ロメール作品に多く出演したほか、フランソワ・オゾン監督の「危険なプロット」(2012年)で主演するなどし、セザール賞に6回ノミネートされた、今やフランスが誇る名優であるとのことです。

「レネットとミラベル」p.jpg1話「青い時間」23.jpg 4話の中では第1話が★★★★、第4話が★★★☆、あと第2話と第3話が★★★といったところでしょうか。どれもユーモアを交えた軽快なタッチで描かれていて、「喜劇と格言劇」シリーズの作品と比べてもより軽いかも。「喜劇と格言劇」シリーズが男女の恋愛模様を中心に描いているのに対して、女性同士のからっとした感じの友情を描いており、そうした男女の情が絡まない分、軽くなっているのかもしれません。

「レネットとミラベル 四つの冒険」●原題:QUATRE AVENTURES DE REINETTE ET MIRABELLE(英:FOUR ADVENTURES OF REINETTE AND MIRABELLE)●制作年:1986年製作(公開は1987年)●制作国:フランス●監督・脚本:エリック・ロメール●製作:マルガレット・メネゴス●撮影:ベルナール・リュティック●音楽:ロナン・ジレ/ジャン=ルイ・ヴァレロ●時間:99分●出演:ジョエル・ミケル/ジェシカ・フォルド/フィリップ・ロダンバッシュ/ヤスミナ・アウリー/マリー・リヴィエール/ベアトリス・ロマン/ファブリス・ルキーニ●日本公開:1989/07●配給:シネセゾン●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(23-02-18)(評価:★★★☆)

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This page contains a single entry by wada published on 2006年7月 1日 00:39.

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