【2593】 ○ 恩田 陸 『小説以外 (2005/04 新潮社) ★★★☆

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まさに「小説以外」。いい作家はいい読者でもあることが窺える。

小説以外200_.jpg 小説以外9.JPG  恩田陸 オンダ・リク.jpg 恩田 陸 氏
小説以外 (新潮文庫)
小説以外』(2005/04 新潮社)

 本好きが嵩じて作家となった著者は、これまでどのような作品を愛読してきたのか? ミステリー、ファンタジー、ホラー、SF、少女漫画、日本文学......あらゆるジャンルを越境する読書の秘密に迫る。さらに偏愛する料理、食べ物、映画、音楽にまつわる話、転校が多かった少女時代の思い出などデビューから14年間の全エッセイを収録。本に愛され、本を愛する作家の世界を一望する解体全書。(文庫口上より)

 著者が14年間にわたって様々な場所で発表してきた全エッセイを収録したものとのことで、この人も最初は兼業作家としてスタートしたのだなあと。一番直近のものは、『夜のピクニック』('04年/新潮社)での「本屋大賞『受賞のことば』」になっていますが、この度『蜜蜂と遠雷』('16年/幻冬舎)で直木賞と本屋大賞とを史上初のW受賞し、2回目の本屋大賞受賞(これも史上初)となっています。

 「全エッセイ」とありますが、文庫の解説や書評等もあり、まさに「小説以外」という感じです。もちろん、エッセイ風の小文も多くあり、料理や食べ物、日常生活に纏わる話や子供時代の思い出などの話もありますが、やはり本に纏わる話が多く、あとは映画、音楽に関する話が多いでしょうか。

 本に関する話などを読んでも、いい作家はいい読書家でもあることが窺えました。ただ、いずれも2ページから3ページ前後の小文ばかりなので、気軽に読めることは読めるけれども、意外と後で印象に残らないかも(もっと長いのは書いていないのかなあ。それが不思議)。

 そんな中、出版社などからのアンケートに応えて、「文庫のベスト5」「海外ミステリのマイベスト7」、更には「マイ・ベストPKD(フィリップ・K・ディック)」といったちょっとマニアアックなものまで挙げているのが目を引きました。個人的には、「クリスティー私のベスト5」というのが、ミステリにおける著者の指向性を窺わせていて興味深かったです(『終わりなき夜に生れつく』は、今年['17年]同名の作品を上梓している)。一番好きな映画が「去年マリエンバートで」('61年/仏)であるというのもこの人らしいのではないでしょうか(個人的には、何回観ても理解不能な映画だが)。『夏の名残りの薔薇』('04年/文藝春秋)はこの映画をモチーフに書かれているようですが、『中庭の出来事』('06年/新潮社)もちょっとそんな雰囲気があったように思います(個人的には、構成が複雑すぎて十分に入り込めなかったが)。

【2008年文庫化[新潮文庫]】

《読書MEMO》
●「クリスティー私のベスト5」
①『葬儀を終えて』
②『終わりなき夜に生れつく』
③『メソポタミアの殺人』
④『ねじれた家』
⑤『鏡は横にひび割れて』

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