【3332】 ○ 柴田 彰 『人材トランスフォーメーション―新種の人材を獲得せよ!育てよ!』 (2019/07 日本能率協会マネジメントセンター) ★★★☆

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ニュータイプ人材(次代の経営者、事業創造家、デジタル人材)に求められる資質を示す。

人材トランスフォーメーション.jpg 『人材トランスフォーメーション 新種の人材を獲得せよ!育てよ! 』['19年]

 コンピテンシー・モデルで知られるヘイグループを一部前身とするコンサルティングファーム「コーン・フェリー」に属する著者による本書では、日本企業はいま、これまで優秀と見なされてきた人材とは明らかにタイプの異なる人材を求めているとし、それはどのような人材なのかを、自社の調査結果やインタビューなどから分析して、人材マネジメントの変革の必要性を説いています。

 第1章では、日本企業が追い求めている新種の人材とはどのようなものかを、コーン・フェリーの22種のコンピテンシーの内、日本企業の直近3年とその前の10年との採択率上位10項目を比較することで分析しています。それによると、「組織志向性」が上位から外れて、「顧客志向性」と「自信」が新たに上位に入り、「分析的思考力」の代わりに「概念的思考力」が登場し、「セルフコントロール」が外れるなどしているとのことです。

 第2章では、次代の経営者はどのような資質を備えているべきなのかを、コーン・フェリーの27種のCEOコンピテンシーの内、日本企業の採択率の上位にランクインした項目をもとに分析しています。そして、その結果から、次代の経営者のあるべき資質を、①広い見識を持って、自分なりの見解をつくる、②経営チームを構築する、③経営者としての覚悟を持つ、④組織をつくる、⑤企業を永続させる、という5つのコンピテンシーに類型化しています。

 第3章では、新しい事業を生み出す事業創造家の特質を、サンプル企業のコンピテンシー診断結果などから分析しています。その結果から、事業創造家には「事業構想人材」と「事業化人材」の二種類があるとし、事業アイデアを構想する「事業構想人材」が高いレベルで持つコンピテンシーは、「自信」「誠実性」「概念的思考力」の3つであり、新しい事業アイデアを確実な収益源として立ち上げていく「事業化人材」が高いレベルで持つコンピテンシーは、「達成指向性」「分析的思考能力」「組織認識力」であるとしています。

 第4章では、最近よく言われているデジタル・トランスフォーメーション(DX)について、DXと何か、日本企業にはどのようなデジタル人材が必要なのかを分析・考察し、DX人材に共通するのは、①デジタル技術の最新のトレンドについて、十分な理解をしていること、②会社が解くべき課題を発見し、デジタル技術を駆使したソリューションを組み立てる能力であるとしています。

 第5章では、次代の経営者候補、新規事業創造家、DX人材などの、これまで述べてきた新種の人材が有している性格的な特性を、①原動力、②認識、③ラーニング・アジリティ、④リーダーシップ特性、⑤阻害リスクの回避、の5つのカテゴリーと17の特性項目に類型別に分析し、その中でも共通して高いスコアとなっている7つの項目に着目して解説しています。

本書が指摘するように、環境変化に対応できる経営人材、事業を創造する人材、デジタル・トランスフォーメーションを実現する人材のいずれも、多くの日本企業がこぞって欲する新しいタイプの人材であり、日本における市場価値も高く、それだけ希少性も高いため、どの企業でもそう簡単には見つからない気がします。

ただし、だからと言って手をこまねいているのではなく、本書が推奨するように、採用基準を根本的に変えるなり、あるいは新種の人材を社外に求めるのではなく、キャリアの動線を見直して社内で内製しようとすることも必要になってくるように思いました。ただし、この部分について本書は、「さまざまな経験を積ませる」的な漠たる結論で終わってしまっているのが、やや物足りなく感じられました。

コンピテンシー・モデルってどうなの?みたいな話もあるやに思いますが、取り敢えずここではその議論は置いておくことにします(笑)。ニュータイプ人材を、次代の経営者、事業創造家、デジタル人材の3つに定義しただけでも分かりやすかったのではないでしょうか。

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