【105】 ○ ピーター・F・ドラッカー (上田惇生:訳) 『明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命』 (1999/03 ダイヤモンド社) ★★★★

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マネジメントの今日的な問題を重点的にとりあげている読みやすい本。

明日を支配するもの.jpgManagement Challenges for the 21st Century.jpg 明日を支配するもの~Management Challenges for the 21st Sentury by ドラッカー.jpg  d_t.gif 
明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命』〔'99年〕「Management Challenges for the 21st Century」「Management Challenges for the 21St Century」[カセット]/ドラッカー(『明日を支配するもの』刊行の頃〔90歳〕)

『明日を支配するもの命』.jpg 昨年['06年]11月に95歳で亡くなったピーター・F・ドラッカー(1909‐2005)の1999年の著作で(「原題は"Management Challenges for the 21st Century")、世界17カ国で同時出版されベストセラーとなったものですが、章立ては次の通りとなっています。

 第1章 マネジメントの常識が変わる-パラダイム転換
 第2章 経営戦略の前提が変わる-21世紀の現実
 第3章 明日を変えるのは誰か-チェンジ・リーダー
 第4章 情報が仕事を変える-新情報革命
 第5章 知識労働の生産性が社会を変える-先進国の条件
 第6章 自らをマネジメントする-明日の生き方

 こうして見るとマネジメント全般についての集大成的著書にも見え、実際過去の自著からの引用も多いのですが、本書の特徴は、マネジメントにおける21世紀的な問題、つまり今日的な問題(かつ既にその兆しが現れている問題)を重点的に取り上げて説いていることで、常に時代の先を見据える著者らしいものです。

 第1章のマネジメント論では、従来のマネジメントの常識が変わったことを指摘し、第2章の経営戦略論でまず論じているのは、「競争力戦略」のことと言うより「少子化」の問題や「コーポレートガバナンス」の問題です。
 第3章は「リーダーシップ論」と言うより、今後「チェンジ・リーダー」となりうる組織とはどういうものかという「経営組織論」です。
 また、そうした流れの中で、個人としてどう生きるかについて述べた第6章は、仕事・キャリア・人生設計についての示唆の富むもので、これもまた著者らしい内容です。

 最後に日本の読者向けに「日本の官僚制」について述べた文章が付いていますが、日本は官僚主導の社会であり、すべてを先延ばしする「官僚」の本質(そのために経済バブルとその崩壊を招いた)を指摘しながらも、それに代わる指導層が現れない限り官僚支配は続くとし、また、日本というのは、国民の関心もそうだが、「経済」よりも「社会」が優先する国だと言っているのが興味深いです。

 本文中にある多くの例証を見ても、89歳にしてよく社会動態を観察し分析している点に感心させられます。

 彼の「3大古典」などと言われる著作に比べ、取り上げられている事例に近年のものが多く、また、日本について触れられている部分が上記のほかにも多くあります。 
 先進国での人口激変を指摘する際にも、まず日本を取り上げ、日本の人口は21世紀末に5000万あるいは5500万人に減少すると指摘しています。 
 
 全体を通して文章自体がエッセイ風であることなどからも、比較的誰にでも親しみやすい1冊ではないかと思います。

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月15日 09:25.

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