【1896】 ◎ カーマイン・ガロ (井口耕二:訳) 『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則』 (2010/07 日経BP社) ★★★★☆

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ジョブズのカリスマ的プレゼンの秘密を、フツーの人が共有できるよう具体的に解明している。

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"The Presentation Secrets of Steve Jobs: How to Be Insanely Great in Front of Any Audience"
スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則』['10年/日経BP社] 

 '11年10月にスティーブ・ジョブズが56歳で亡くなった際に、ジョブズ関連本がどっと出ましたが、本書は、ジョブズが亡くなる前の年に刊行されたもので(原著"The Presentation Secrets of Steve Jobs"の刊行も'10年)、個人的には久しぶりの読み返しでしたが、大体、ジョブズ本は、ジョブズが亡くなる前に刊行されたものの方が、ジョブズの死に伴って急遽刊行されたものより翻訳がしっかりしているようにも思います。

 本書は、ジョブズのカリスマ的なプレゼンテーションの秘密を具体的に解明したもので、確かに、ビジョンを誰にでも分かる言葉にしてみせ、多くの人が望むところの自らがありたい姿を明確化することで、周囲を巻き込んで大きなうねりを創り出す、カリスマに不可欠な条件をジョブズが携えていたことは、本書を読んでもよく分かりますが、一方で、プレゼンテーションにおいて彼が周到な準備をし、効果的なプレゼンを行うための細心の準備と最大限の努力を怠らなかったこともよく分かりました。

 本書の優れている点は、ただジョブズを礼賛するのではなく、彼のプレゼンの技法を一般論に落とし込んでいるため、ジョブズの評伝と言うよりもプレゼンのテキストとして読めることであり、また、お手本にしているジョブズのプレゼンのやり方が、決められた方針に則って徹底しているものであるために、その分、退屈な教科書に止まらず、インパクトのある啓発を含んだものとなっていることかと思います。

 本書が紹介しているプレゼンテーションのポイントは、ジョブズが実際に行った数々のキーノートをベースにしているとのことで、「ストーリーを作る」(シーン1~7)、「体験を提供する」(シーン8~13)、「仕上げと練習を行う」(シーン14~18)、という"3幕"構成の中で、「人を惹きつける18の法則」(18シーン)について述べられていますが、個人的にも、どれをとっても啓発される要素の多いものでした。

 その中には、なぜあなたのプレゼンテーションを気に掛ける必要があるのかという「一番大事な問いに答える」(シーン2)という根源的な問題から(そのために、聞き手の悩みや喜びのツボは何か、まずは想像力を逞しくして、紙にペンを走らせてみようとある)、「救世主的な目的意識を持つ」(シーン3)といった壮大なもの、「ツィッターのようなヘッドラインを作る」(シーン4)といったテクニカルなものまで含まれていて、更に「ヘッドラインは70文字以下」といった具体的手法にまで落とし込まれていたりします(原著で「140文字以内」とあるのを、訳者の井口耕二氏が日本語換算しており、こうした翻訳も親切)。

 「ロードマップを描く」(シーン5)にある、要点を3点に纏める「3点ルール」や、ジョブズ自身がマッキントッシュ発売の時に用いた(有名な"1984"のプレゼン)「敵役を導入する」(シーン6)、「正義の味方を登場させる」(シーン7)という手法にも、なるほどと思わされるものがありました。

 「禅の心で伝える」(シーン8)では、箇条書きで文字がずらっと並ぶパワーポイントのテンプレートの問題点、余白や画像・写真の効果を説いており、また「『びっくりするほどキレがいい』言葉を使う」(シーン10)では、言葉はシンプルで具体的であることが重要であることを具体例で説明しいて、忘れられないプレゼンにするためには「『うっそー!』な瞬間を演出する」(シーン13)というのも、フツーのプレゼンの教科書には書いていないことではないでしょうか。

 「存在感の出し方を身につける」(シーン14)、「簡単そうに見せる」(シーン15)、「目的に合った服装をする」(シーン16)などを読むと、ジョブズのプレゼンが天性の才能の導くままに恣意的に行われていたものではなく、精緻な計算のもとに周到な準備を経てなされていたものであることがよく分かり、だからこそ「台本を捨てる」(シーン17)ことが可能であり、またジョブズ自身、プレゼンを「楽しむ」(シーン18)ことが出来たのだなあと。

 とにかく啓発的であると同時に具体的に書かれているので、重要なプレゼンに際して、資料作成に入る前や出来上がった資料の効果をチェックする時、あるいはプレゼンのリハーサルを行う際に改めて一読するといいかも。

 ジョブズの病状が回復の見通しが立ちにくく、彼の新たなプレゼンを聴く機会はそう訪れないかもしれないという状況で書かれた本でもあり(著者自身は本書刊行後の'10年10月に "Back to the Mac"と題した彼の新製品の紹介のプレゼンを聴いたそうだが)、ある意味、彼の"遺産"を、カリスマではないフツーの人が共有化できることを意図した本でもあるように、個人的には思いました。お奨めです。

《読書MEMO》
●人々を惹きつけるプレゼン 18の法則
第1幕 ストーリーを作る
 シーン1 構想はアナログでまとめる
 シーン2 一番大事な問いに答える
 シーン3 救世主的な目的意識を持つ
 シーン4 ツイッターのようなヘッドラインを作る
 シーン5 ロードマップを描く
 シーン6 敵役を導入する
 シーン7 正義の味方を登場させる
第2幕 体験を提供する
 シーン8 禅の心で伝える
 シーン9 数字をドレスアップする
 シーン10 「びっくりするほどキレがいい」言葉を使う
 シーン11 ステージを共有する
 シーン12 小道具を上手に使う
 シーン13 「うっそー!」な瞬間を演出する
第3幕 仕上げと練習を行う
 シーン14 存在感の出し方を身につける
 シーン15 簡単そうに見せる
 シーン16 目的に合った服装をする
 シーン17 台本を捨てる
 シーン18 楽しむ 

    



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和田泰明ブログ

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This page contains a single entry by wada published on 2013年6月24日 06:42.

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