2007年2月 Archives

「●は行の現代日本の作家」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2105】 姫野 カオルコ 『昭和の犬

「離婚」と対峙する親子を通して、当時としては新しいタイプの家族の形を模索。

干刈 あがた 『ウホッホ探険隊』.jpg ウホッホ探険隊.jpg   ウホッホ探険隊 (P+D BOOKS)2.jpg ウホッホ探険隊 kaeade.jpg
ウホッホ探険隊』['84年]『ウホッホ探険隊 (朝日文庫)』['00年](表紙イラスト:大橋 歩)ウホッホ探険隊 (P+D BOOKS)』['17年2月] 『ウホッホ探険隊 (河出文庫)』['17年12月]

干狩あがた.jpg この作品は、'82年に第1回「海燕」新人文学賞を受賞した作者が、同年、小学生の男の子2人を抱えての離婚を経験し、(多分その経験をもとに)翌年に発表したもので、芥川賞の候補作となりました。離婚に踏み切ろうとしている主人公の女性と、そのことを自分たちなりに受け止めようとしている小学生の長男・次男とのやりとりを通して、当時としては新しいタイプと言える家族の形を模索したものと言えます。
干刈 あがた (1943‐1992/享年49)

 統計によると、本書が発表された頃に離婚率の1つのピークがあり、その後いったん減少傾向に転じたものの、'90年代に入って再び増加し、近年はかつてない急激な上昇ぶりを示しています。つまり、離婚が社会現象化してきた頃の作品であるとは言え、今ほど当たり前のように夫婦が離婚するような時代でもなく、その分、当時の離婚に対する社会的許容度は今よりずっと低かったとみてよいのではないでしょうか。それはある意味、物語の中で息子が言う「僕たちは探検隊みたいだね、離婚ていう、日本ではまだ未知の領域を探検するために、それぞれの役をしているの」という、本書のタイトルにも繋がる言葉に表れており、また、親子の軽妙な会話の中にも、お互いに暗くなるまいとするいじらしい努力のようなものが感じられます。

博士の愛した数式.jpg猛スピードで母は 単行本.jpg 離婚家庭、シングルマザーをモチーフとしたものはその後も多くの作家が書いています。思いつくところでは、芥川賞を受賞した長嶋有の『猛スピードで母は』('02年)のように強烈なキャラクターの母親を子どもの眼から捉えたものであったり、同じく芥川賞作家の小川洋子の『博士の愛した数式』('03年)のように"博士"のような第三者を介入させたり"数式"が出てきたりとかなりひねったものになっていて、こうした子持ち離婚に踏み切ろうとしている時期の迷いや悩みというのは、それだけをストレートに扱うには古すぎるテーマになってしまったのかも。

ウホッホ探険隊 (福武文庫).jpg 文体はドラマの脚本みたいで、実際、森田芳光脚本、根岸吉太郎監督、十朱幸代主演で映画化され('86年/東宝)、ブルーリボン賞の作品賞・主演男優賞(田中邦衛)を受賞しています。

 〈家族社会学〉的要素もある一方で文学としては物足りなさもある作品ですが、'92年に壮絶なガン死を遂げた(享年49)作者の優しいが芯のある人柄が伝わってくる作品です。

福武文庫映画タイアップカバー

 【1985年文庫化[福武文庫]/1998年全集〔河出書房新社(『干刈あがたの世界〈2〉』)〕/2000年再文庫化[朝日文庫]/2017年[小学館・P+D BOOKS]/2017年再文庫化[河出文庫]】

「●な行の現代日本の作家」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1348】 乃南 アサ 『凍える牙
「●は行の外国映画の監督②」の インデックッスへ 「●「フランス映画批評家協会賞(外国語映画賞)」受賞作」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ

「家族」の持つ宗教性? と言うより、ただタチが悪いだけの宗教団体ではないか、これでは。

暗鬼.jpg       暗鬼 角川文庫.jpg           ローズマリーの赤ちゃん』(1968).jpg
暗鬼 (文春文庫)』〔'01年〕 『暗鬼 (角川文庫)』〔'93年〕  「ローズマリーの赤ちゃん [DVD]

 主人公の法子が結婚し、新たに住まうことになった夫の実家は、夫の両親、弟妹、祖父母、曾祖母の住む大家族だったが、皆いい人ばかりのように思えた。しかし法子はある日、近所で起きた心中事件に、夫の家族たちが関与しているらしいという疑いを抱かざるを得なくなる―。

 著者の得意分野であるサイコ・ミステリーで、「家族」というものがかつて持っていた宗教性のようなものがテーマになっているらしいと。...でも、読んでみてかなりガックリ。これでは、かなり低レベルでタチの悪い宗教団体ではないか。折伏といい、何といい...。主人公がなんでこんな家族を捨てて、さっさと逃げ出さないのか不思議。ミステリーで主人公が鈍いというのは脱力します。それでも、結末はどうなるのかという残された唯一の関心だけで最後まで読みましたが、いきなり漫画チックで俗っぽい展開になったりして。

ローズマリーの赤ちゃん』(1968)2.jpgRosemary's Baby.jpg 主人公が夫の家族から薬草を飲ませられるところは、ロマン・ポランスキー監督の「ローズマリーの赤ちゃん」('68年/米)を思い出しましたが、終わり方もちょっと似ているかも。
        
ローズマリーの赤ちゃん5.jpg 「ローズマリーの赤ちゃん」はアイラ・レヴィン(1929-2007.11.12)ローズマリーの赤ちゃん1jpg.jpg同名小説の映画化で、主人公の若妻ローズマリー(ミア・ファーロー)が役者志望の夫・ガイ(ジョン・カサヴェテス)と共に越してきたニューヨークのアパート(ジョン・レノン夫妻のいた"ダコタハウス"が撮影に使われている)で、隣人の老夫婦(シドニー・ブラックマー/ルース・ゴードン)にお節介なほど世話をやかれ、彼女が妊娠すると身体にいいからと薬草エキスのようなものを飲まされるという―。

 『暗鬼』も「ローズマリーの赤ちゃん」も共に個人的にはあまり後味が良くなかったけれども、「ローズマリーの赤ちゃん」のラスト(ミア・ファーローの"母性に目覚めた"表情)の方が怖いかも(ミア・ファーローは、自分が出演した映画のうちこの作品だけは、自分で観直すことはないと言っていたそうだ)。

「ローズマリーの赤ちゃん」(ポスター)
ローズマリーの赤ちゃん(ポスター).jpgローズマリーの赤ちゃん.jpg あの映画のミア・ファーローの疑心暗鬼ぶりには、ポランスキーならではの説得力があったように思え、映画として好きではないのですが(カルト教団に取り込まれた人間の話になっている?)、ホラームービー通の間でクラシックとしての評価が高いのはそれなりに理解でき、それに比べると、『暗鬼』の主人公はタルい...。

Mia Farrow in ROSEMARY'S BABY
ローズマリーの赤ちゃんMia Farrow.jpg「ローズマリーの赤ちゃん」●原題:ROSEMARY'S BABY●制作年:1968年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ロマン・ポランスキー●製作:ウィリアム・キャッスル●撮影:ウィリアム・フレイカー●音楽:クリストファー(クシシュトフ)・コメダ●原作:アイラ・レヴィン「ローズマリーの赤ちゃん」●時間:136分●出演:ミア・ファロー/ジョン・カサヴェテス/ルース・ゴードン/シドニー・ブラックマー/モーリス・ローズマリーの赤ちゃんルース・ゴードン.jpgエバンス●日本公開:1969/01●配給:パラマウント●最初に観た場所:新宿シアターアプル(86-04-06)(評価:★★★)

ルース・ゴードン(アカデミー助演女優賞)
 
 【2001年文庫化[文春文庫]】 

About this Archive

This page is an archive of entries from 2007年2月 listed from newest to oldest.

2007年1月 is the previous archive.

2007年3月 is the next archive.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1