【928】 △ 都留 重人 『経済学はむずかしくない [第2版]』 (1974/04 講談社現代新書) 《『経済学はむずかしくない [初版]』 (1963/03 講談社現代新書)》 ★★★ (△ 伊達 邦春 『経済はなぜ変動するか』 (1970/04 講談社現代新書) ★★★)

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全体としては、それほど「易しい」という感想は持てなかった。

経済学はむずかしくない9767.jpg経済学はむずかしくない.gif 経済学はむずかしくない1 -.jpg 都留重人.jpg 都留重人  経済はなぜ変動するか.jpg
都留 重人『経済学はむずかしくない(第2版) (講談社現代新書)』['74年](表紙イラスト・挿絵:和田 誠)『経済学はむずかしくない (1964年) (講談社現代新書)』 伊達 邦春『経済はなぜ変動するか (講談社現代新書 224)』['70年]

経済はなぜ変動するか975.JPG 本書『経済学はむずかしくない』と同じ講談社現代新書にあった理論経済学者の伊達邦春・早大名誉教授の『経済はなぜ変動するか』('70年)は、経済変動がなぜ生じるかを、ケインズの国民所得決定理論から始めて、ハロッドやドーマーの成長理論などを説いたもので、学部生の副読本に勝るとも劣らないカッチリした内容。

 ヒックスの景気循環モデルに結びつけての新古典派成長理論などにも解説は及んでいて、新書でもムダを省けばここまでカバーできるのかというぐらいの内容ですが、その辺りまでいくと、如何せん、自分の頭がついていかない...。

 この本の前後に、有斐閣新書の古典学派関連の本を読んでいたのですが、そちらは経済思想中心で、それに対し、本書では線形数学による解説がかなりを占めているので、新書スタイルでとっつき易いとは言え、こうした本を読み慣れていない人には、ちょっと難しいのではないかという気がしました(経済学部の学生や出身者にとってはどうなのだろうか)。

経済学はむずかしくない_0235.JPG経済学はむずかしくない_0236.JPG これに比べると、都留重人(1912‐2006、本書刊行時は一橋大学学長)の『経済学はむずかしくない[第2版]』('74年、初版は'64年で講談社現代新書の創刊ラインナップの1冊)は、一応はタイトル通りの「入門書」と言えるものであるようで、"バロメータ"という概念を中心に据え、目には見えない経済の状態を反映するバロメータにどのようなものがあるかを、平易な事例と言葉で解説しています。 

 そうしながら、ミクロ経済やマクロ経済を解説しているわけですが、ミクロからマクロへと話を進める中で、経済の重要なバロメータとして、物価や賃金、利子率や為替率を解説していて、それらの関係はまあまあ把握し易く、マクロ経済の解説も「家計」の事例から入るなど、初学者への配慮が見られます。

 しかしながら、こちらも、利潤の極大化や成長理論の話になると、すぐに微分数式などが顔を出してきて、ちょっと理解しにくいところもあり、結局、全体としては、タイトルほど「易しい」という印象は受けませんでした(元が講談社現代新書の創刊ラインナップの1冊であり、当時はまだこの新書の読者層イメージが固まっていなかったのではないか)。

経済学はむずかしくない1.jpg 本書で、都留重人は、資本主義が変わってきたからこそ、マクロ経済が生まれるようになったのであり、経済の仕組みは一度それが定着すると永久に変化しないというようなものではないとし、また、我々は、資本主義により発展してきた国にいるため、資本主義の「競技規則」に従わざるを得ないが、その中で「必然を洞察した自由」を持つべきで、そのためには資本主義の仕組みをよく知らねばならず、そのことにより、仕組みそのものをより良いものに変えていくこともできるだろうと言っています。

 ハーバード大学出身ですが、アメリカに渡った頃はマルクス主義者だったらしく、アメリカのそうした学者たちに影響を与え、彼自身も「マルクス主義的ケインズ経済学者」と言われたりした人で、自らは、自身を「リベラルな社会主義者」であると言っていたそうです(今で言えば、構造改革路線に近いということか)。

   

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