【727】 △ 伊藤 雄一郎 『年金術 (2003/04 文春新書) ★★☆

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「日本版401k」の入門書。「術」というほど特別なことが書いてあるわけでもなく...。

年金術.jpg 『年金術』 文春新書 〔'03年〕

401k.jpg 「年金術」というタイトルですが、本文全5章のうち4章は日本版401kについて述べられていて、日本版401kについての加入者・受給者(つまり一般の人)の側に立った解説書と言えます。

 先行して導入した企業(主に大企業)の事例や金融機関の動きと運用の中心になりそうな商品、制度のあらまし及び仕組み、先例としてのアメリカの401kの歴史と現在の姿、日本版401kの今後のゆくえなどが解説されていて、本書刊行当時('03年)としては、まとまった入門書として読めたかも知れません。

 ただし、著者はジャーナリストということですが、日本版401kをあまりに肯定的に捉えるその姿勢には、同じ新書で『投資信託を買う前に』('00年)という前著もあるように、銀行系の金融コンサルタントのような色合いを強く感じます。

 と言って、タイトルに「術」と付けるほどの特別なことが書いてあるわけでもなく、前著もそうでしたが、読んでも概説的な知識が得られるだけで、具体的にどうすれば良いのかはあまり見えてきません。
 1章だけ公的年金についての問題点や改革の方向性について触れていますが、それらについても一般的な概説の域を出ていないように思えます。

 「日本版401k」という言葉も、現在では「確定拠出年金」と言った方が良いだろうし、加入者の一部についての拠出限度額や確定給付年金からの移換限度額など、すでに細部においては法律が改定されている部分もあり、こうした本をタイムリーであるというだけで新書として出版するのはどんなものだろうかという気がしました(著者にとっては大いに"箔付け"になるかもしれないが)。

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