「●リストラクチャリング」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【066】 櫻井 稔 『雇用リストラ』
雇用調整をせざるをえない状況になった時には役に立つ実務書。
林 明文 氏
『人事リストラクチャリングの実務―人員削減の効果的な進め方』 (2000/06 実業之日本社)
雇用調整の考え方と進め方が分かりやすく書かれて、出来ればお世話になりたくない本ではありますが、雇用調整をせざるをえない状況になった時には役立つ実務書です。
本書が強調しているのは、雇用調整の目的を明確化して、それに沿って実施規模を策定し、周到な計画のもとに実施に当たるべきだということで、ビジョン無き雇用調整は、目標の未達、コア人材の流出、残った者の士気の低下などの悲劇を招くと警告しています。
実施規模の策定については、余剰人員をどのように算定するのかを具体的に示していて、人員削減の方法や進め方についても、いきなり指名解雇をするのではなく、希望退職や出向促進、早期定年制度(早期退職優遇制度)の活用などを先ず検討することを勧めています。
さらに実施に際しては、いかにコア人材を確保し不要人材をリリースするか、その手法を示しています。
企業でリストラの嵐が吹き荒れたときに、希望退職と退職勧奨ないし指名解雇が抱き合わせで実施されるケースが多かったようですが、本来は「退職勧奨」は会社業績に関係なく改善の見込みが無いローパフォーマーに対して行うべきもので、一方「指名解雇」は一定基準で対象者を選別するため、ローパフォーマーでなくとも選別対象になることがある性質のものであることがわかり、こうした概念整理をするうえでも役立ちます。
著者は30歳代でアウトプレースメント(再就職支援)会社の社長を務めた人ですが、雇用調整を人材フロー、キャリア支援という観点から積極的に捉える一方で、日本企業の体質に沿った「面談」の細やかなアドバイスがあり、バランスがとれた指南書だと思います。