【066】 ○ 櫻井 稔 『雇用リストラ―新たなルールづくりのために』 (2001/08 中公新書) ★★★☆

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リストラを検討する際に踏まえておいた方がいい基礎知識が整理されている。

雇用リストラ.jpg 『雇用リストラ―新たなルールづくりのために』 (2001/08 中公新書)

biz01.jpg 経営環境が悪くなり、会社の役員会で「リストラするしかない」「いや、ウチは終身雇用だから...」「じゃあ、退職勧奨ではどうか」などの会話が飛び交うとき、そもそもそうした雇用リストラに関するタームを、役員が共通した正しい認識で用いているかどうか、まず懸念される場合があります。

 本書では、雇用リストラの種類とそれがどう計画・実行されているのかを実態に沿って説明していますが、元・労働基準監督官が書いたものだからと言って「リストラ、いかん」という話ではなく、市場経済下ではどの企業も繁栄を保障されているわけではなく、雇用リスクの存在は必然的なものだとし、そうしたリスクを最小化するための社会ルール(例えば解雇制限法)の必要を訴えている本です。

 日本は"終身雇用"で欧米は"解雇自由"という一般認識の誤りを指摘していますが、確かに労基法にも就業規則にも"終身雇用"の文言は無いわけで、一方米国などでは、勤務期間に基づく先任権制があり、レイオフ順位がハンドブック(個人別の就業規則のようなもの)に明記されていたりします。

 また一般に雇用リストラは、採用の停止・抑制、賃金カット、希望退職、正社員解雇などの順序で行うとされていますが、解雇は最後になるべきだがその前段階は固定的な順序設定はないと―。そもそも、賃金カットは雇用に直接的に関係ないが、一方、希望退職は雇用者に選択権があるなど、質的に異なる―。

 雇用問題を扱った本ですが、企業リスクの最小化という観点に立っており、企業が雇用リストラを検討する際に踏まえておいた方がいい基礎知識(前提知識)的なものが整理されているため、一読の価値はあるかと思います。

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月13日 14:38.

【065】 ○ 林 明文 『人事リストラクチャリングの実務―人員削減の効果的な進め方』 (2000/06 実業之日本社) ★★★★ was the previous entry in this blog.

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