【2881】 ○ 田中 圭一 『うつヌケ―うつトンネルを抜けた人たち』 (2017/01 KADOKAWA) ★★★★

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うつ病の原因、症状も多様だが、抜け方は人それぞれ。でも、共通項も。

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うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』['17年]

うつぬけロード.jpg 自身もうつ病を患い、快復した経験をもつ漫画家が、同じ"うつトンネルを抜けた"経験者たちにインタビューを重ねた、それを漫画にしたものです。以前に細川貂々氏の『ツレがうつになりまして。』('06年/幻冬舎)を読みましたが、あっちは配偶者がうつ病になったのに対し、こっちは本人です(自身のこと描いているという点で、系譜としては、昨年['19年]10月に亡くなった吾妻ひでお氏の『失踪日記』('05年/イーストプレス)、『アル中病棟―失踪日記2』('13年/イーストプレス)や、統合失調症の漫画家・卯月妙子氏の『人間仮免中』('12年/イースト・プレス) に近いか)。
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 最初に著者自身の「うつ」体験が紹介されており、サラリーマンと漫画家との二足の草鞋で忙しく働いていた著者は、転職を契機ににうつ病に罹ってしまい、医者の「貴方のうつ病は一生もの」との言葉に不信感を抱き、勝手に服薬をやめたり、医者を転々としたりしてますます悪化したとのこと、トンネル脱出のきっかけは、コンビニで見つけた文庫本で、うつ病に罹った精神科医が書いたエッセイだったとのことです。著者は再発と回復を繰り返しながらも、自分の場合は気温の変化が引き金でうつ病になることに気づき、「うつはそのうち完全に治る」と実感するに至りますが、ここまではいわば序章で、以下、著者が会って聞いた、さまざまな人の「うつヌケ」体験談が続きます。

 登場するのは大槻ケンヂ、宮内悠介、佐々木忠、まついなつき(今年['20年]1月に脳梗塞で亡くなったなあ)、内田樹、一色伸幸といった有名人から、OL、編集者、教師と多様な顔ぶれで、こういう人もうつ病になったことがあるのだなあと思わされるし、また、うつ病の症状は人によって様々であり、そこから抜ける契機も人によって様々だなあと改めて思わされました。一方で、個々の「うつヌケ」体験をより大きな括りとして捉えると、そこに共通項も見えてくるように思いました。

 著者は後にインタビューで「漫画のもつ抽象化や擬人化の効果を今回は最大限に使いました。うつヌケした時って本当にモノクロの世界がぱーっと色を取り戻すような感覚なんです」と述べています。

 漫画の特性が活かされて、わかりやすい「うつヌケ」の体験談集になっているっように思われ、本書はベストセラーとなり、一昨年['18年]にはココリコ・田中直樹主演でHulu配信のネットドラマにもなりました。

 本書に関するAmazon.comのレビューなどを見ても高い評価のものが多いですが、ベストセラーの常で、だんだん批判的なレビューも増えてきて、最後は星3つくらいになってしまう...(ただし、本書は、自分がチェックした時点では星4つをキープしていた)。

 批判の1つに、症例が自分に当て嵌まるものがないので役に立たないというのがありましたが、思うにこれは、本書に出てくるいろいろな人たちの症例の多様さからすると、うつ病の症状はそもそも一人一人に固有のものであって、全く同じものは無いという前提に立ち、その中で、何らかの敷衍化することで、自分に応用が可能なものを見出していくしかないのではないかという気がします。これは"考え方"の問題で、先に述べた、「うつヌケ」体験をより大きな括りとして捉えるというのも同じです。

 また、有名人が多く紹介されていることから事前に予想された批判ですが、彼らはもともとアーティストや作家としての特殊な能力を持っている人たちで、その才能があったからこそうつ抜け出来たのであって、そういう才能がない凡人たる自分には参考にならないというものです。自分などは、第一線で活躍している人もかつてうつ病だった時があった、或いは、今もうつと付き合いながら創作活動や社会生活を送っていると思えば、" 元気の素"になりそうな気もするのですが、逆の捉え方をされることもあるのだなあと思いました。これは"考え方"の問題というより"気持ち"の問題であるように思われ、当事者の気持ちにまでは踏み込めないので、これ以上のコメントは差し控えます。

             



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