【2792】 ◎ ロバート・キーガン/リサ・ラスコウ・レイヒー (池村千秋:訳) 『なぜ人と組織は変われないのか―ハーバード流 自己変革の理論と実践』 (2013/10 英治出版) ★★★★☆

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どうすれば変われるのか。「免疫マップ」という変革アプローチを提案した啓発度の高い本。

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Robert Kegan and Lisa Laskow Lahey
なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践

なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか2.jpg Harvard Graduate School of Educationの発達心理学と教育学の専門家による本であり(原著:Immunity to Change: How to Overcome It and Unlock the Potential in Yourself and Your Organization,2009,Harvard Business Review)、二人の近著には『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか』(2017/08 英治出版)があります。本書によれば、変わる必要性を認識していても85%の人が行動すら起こさないとのことで、それは何故かというと"変革を阻む"免疫機能"が働くからであるとのことです。著者たちは、変革が進まないのは「意志」が弱いからではなく、「変化⇔防御」という拮抗状態を解消出来ないからだと説きます。そのうえで、30年にわたる研究と実践のなかで編み出された「免疫マップ」という変革アプローチを提案しています。これは、「変わりたくても変われない」という心理的なジレンマの深層を掘り起し、変化に対して自分を守ろうとしているメカニズムを解き明かす手法であり、自分のもっている「免疫マップ」、つまり「改善目標や阻害行動、裏の目標、強力な固定観念」を、事実と自分に向き合いながらみんなで見つけ出すことで、様々なレベルでの改革を効果的に展開できるとしています。

 全体で3部構成であり、第1部「"変われない"本当の理由」で「免疫マップ」による変革アプローチの概念を説明し、第2部「変革に成功した人たち」で実際の成功事例を紹介、第3部「変革を実践するプロセス」で自分もやってみようという読者にその実践方法を紹介しています。

 第1部「"変われない"本当の理由」では、大人の知性の発達に関してこの30年間で明らかになった新しい真実、そして、その発見が職業生活に対してもつ意味を簡単に解説しています。第1章では、本書で提案するアイデアと手法の理論的・実証的土台を整え、第2章では、「どうして人は本当に望んでいる変革を実現できないのか」という点について、これまで知られてこなかったメカニズム"変革をはばむ免疫機能"を紹介し、第3章では、本書の考え方を職場で実践し、成果をあげたビジネス界と政府機関の2人のリーダーの実例を取り上げています。

 第2部「変革に成功した人たち」では、"変革をはばむ免疫機能"に対処すれば、個人と組織がどのような変化を遂げられるかを詳しく説明しています。取り上げている事例は、当事者の業種や分野も、実現しようとする目標も様々です。第4章では、グループが集団レベルの"変革をはばむ免疫機能"に対処したケース、第5章と第6章では、2人の個人がそれぞれの"変革をはばむ免疫機能"に対処したケースを紹介し、第7章では、最も野心的な取り組みである、職場グループ全体の成果を高めるためにメンバーの一人ひとりが個人レベルの"変革をはばむ免疫機能"に対処したケースを紹介しています。

 第3部「変革を実践するプロセス」では、読者が個人レベルと集団レベルで"変革をはばむ免疫機能"に対処するための手引きを示しています。第8章では、このアプローチを実践するために必要な3つの要素を指摘し、第9章と第10章では、免疫機能を診断するためのプロセスを段階ごとに説明して、読者が個人レベルの免疫機能を乗り越えるよう導いています。第11章では、チームや組織のレベルで免疫機能を克服するプロセスと、そのために役立つ方法論を紹介しています。そして終章では、チームのメンバーとチーム全体が能力を高められる土壌を作るために、リーダーが備えるべき7つの資質を論じています。

 個人と組織が成功するために避けて通れない変革のプロセスを心理学的な観点から浮き彫りにし、「免疫マップ」を用いた変革のアプローチとその効果を多くの事例を通して明らかにし、更に本書を手にした読者に対し、自分とチームのメンバーが職場で能力を目覚ましく発揮できるようにするにはどうすればよいかまでを説いた啓発度の高い本です(個人的には、「免疫マップ」の手法は、心理療法における「認知療法」とも共通点があるように思った)。実際に行われたワークやエクササイズなどの事例ベースで解説が進むため、読み物を読むように読めてしまうのもいいところでしょうか。それでいて、ポイントはしっかり要約されています。組織を率いるリーダーにとっての組織と自分を変える処方箋となり得る要素があり、個人的にも折々に再読してみたい本でもあると思いました。

なぜ人と組織は変われないのか3.jpg《読書MEMO》
●免疫マップ:変革のプロセスに関する思考の地図というべきもの。
1)改善目標、
2)阻害行動(改善目標の達成を妨げる要因)、
3)裏の目標(不安も含む)、
4)強力な固定観念、
からなる
●変わるために必要な3つの要素(276p~295p)
要素1 心の底―変革を起こすためのやる気の源:目標を成し遂げたいという強力な本能レベルの欲求。ほかに、自己変革の原動力になりうる要素としては、たとえば目標の達成に自信があり、そのための方法がわかっていること。
要素2 頭脳とハート―思考と感情の両方にはたらきかける:"変革をはばむ免疫機能"は、特定の知性のレベルならではの思考と感情の両方を反映するものなので、適応を要する変化を本当に成し遂げようと思えばこの両方にはたらきかけなくてはならない。
要素3 手―思考と行動を同時に変える:既存の免疫機能と衝突する行動を意識的に取ってはじめて変革が可能になる。これを避けていては、既存の行動パターンの土台にある思考様式の妥当性を検証できないからだ。
●リーダーが備えるべき7つの資質(402p~418p)
①大人になっても成長できるという前提に立つ
②適切な学習方法を採用する
③誰もが内に秘めている成長への欲求をはぐくむ
④本当の変革には時間がかかることを覚悟する
⑤感情が重要な役割を担っていることを認識する
⑥考え方と行動のどちらも変えるべきだと理解する
⑦メンバーにとって安全な場を用意する

    〔Kindle版]



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