【2764】 ◎ リッチ・カールガード (野津智子:訳)『グレートカンパニー―優れた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件』 (2015/09 ダイヤモンド社) ★★★★☆

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成功し続ける企業が重視しているソフトエッジ(信頼、知性、チーム、テイスト、ストーリー)。

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グレートカンパニー――優れた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件』(2015/09 ダイヤモンド社)"The Soft Edge: Where Great Companies Find Lasting Success"

ソフトエッジ グレートカンパニー.png 「フォーブス」誌の発行人でコラムニストでもあり、これまでに数多くの経営者に取材し、自らもアントレプレナーとして成功している著者による本書(原題:The Soft Edge―Where Great Companies Find Lasting Success、2014)は、成功し続ける企業(「グレートカンパニー」)に共通する原則とは何かを観察を通して探り、「優れた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件」を紹介しています。

 第1章では、企業の持続的競争優位を導く「三角形」として、戦略的基盤、ハードエッジ、ソフトエッジの3つを挙げ、戦略のない企業が淘汰されるのはもちろんであるが、現代の経営者は、インフラやシステムを整備、活用しスピードや効率を重視した経営を目指すあまりハードエッジ(スピード、コスト、サプライチェーン、流通、資本効率)を重視しがちであり、一方、ソフトエッジ(信頼、知性、チーム、テイスト、ストーリー)はその真価が最も認められていない側面であるとしています。

 第2章では、企業がハードエッジに多くの予算を割く理由を、経営学の発展の歴史を辿ることで探り、ハードエッジの優位性は永遠には続かず、成長し続ける優れた組織は、ハードエッジとソフトエッジの両方で卓越しているとし、本書のテーマであるソフトエッジにも留意を払うべきであり、むしろ、このソフトエッジの重要性がより一層高まっているとしています。つまり、ソフトエッジを構成する信頼、知性、チーム、テイスト、ストーリーの5つの要素こそ「グレートカンパニー」が持つ成長し続ける条件であるとし、以下、第3章から第7章にかけて、ソフトエッジの5要素について章ごとに解説しています。

 第3章では「信頼」について解説しています。社外の人(顧客、サプライヤー、株主)との信頼関係の構築が大切なのはもちろんであるが、優れた会社は社内の人(従業員)との信頼関係の構築をより重視し、それにより社員は働きがいを得て目標達成のための努力し、またイノベーションを生むのも信頼という基盤があってのこととしています。

 第4章では「知性」について解説しています。ビジネスにおける「知性」とはIQの高さではなく、粘り強さや気概のことであり、やり遂げる力こそが「知性」であるとしています。さらに、「知性豊か(スマート)」なリーダーは、業界を問わず革新的な考えを持つ人からどんどん学ぼうとし、スマートな企業は、してしまったミスとその経験から学んだことについて話すよう、従業員に求めるとしています。

 第5章では「チーム」について解説しています。ここでは、大企業においてさえも、多様な10人前後の少人数チームが最もパフォーマンスが高いこと、メンバーの思考スタイルなども含めた多様性が、チームが全力を出すことを促進すること、チームリーダーがメンバーに大きな期待というプレゼントを与えるべきであること、などを挙げています。

 第6章では「テイスト」について解説しています。テイストとは、その企業が生む出す製品やサービスの味わいであり、それはデザインを超える美学であって、人々を幸せな気持ちにし、驚きや喜びを与えるとしています。つまり、デザインや機能だけでは持続的な優位性は築けず、顧客との特別なつながりをもたらす意味が必要となるが、テイストはこれら三大要素を統合したものであるとしています。

 第7章では「ストーリー」について解説しています。グレートカンパニーには心に響くストーリーがあり、ストーリーは人の心に訴えかけるのに最適の手段であって、従業員を一致団結させ、強力なリーダーシップ・ツールにもなるなど、ビジネスに関して行うあらゆることに影響を及ぼすとし、ストーリーテリングの6つコツを紹介しています。

 最後に結論として、データと感性の融合が最強のチームをつくるとしています。経営幹部レベルの人間関係が壊れている会社が、ソフトエッジへの投資をおろそかにしてきたことは間違いなく、ソフトエッジを大切にする会社には「対話」があり、それを支えているのが信頼、知性、チーム、テイスト、ストーリーの5つの要素であるとしています。

 ソフトエッジの5要素は、日本企業がこれまで大切にしてきたものと重なる部分も多いように思われます。著者は、テクノロジーや競争のレベルが上がるにつれ、この5つの要素がさらに重要になってくるとしています。本書にある多くの示唆の中には、日本企業の復活に繋がるヒントになる部分もあるように思われ、一読をお薦めします。

《読書MEMO》
●ストーリーテリングの6つコツ(第7章)
(1)シンプルにする
 多ければ多いほどよいと、たいていの人が思い違いをしている。視覚に訴えるものがあればあるほど、目立てば目立つほど、華やかであればあるほどよい、と。実際には、シンプルであることが、どんなものを生み出すプロセスにとってもカギになる。/小説家であれ画家であれデザイナーであれ、みなオッカムの剃刀で不要なものを削ぎ落としながらイノベーションを図る。そしてシンプルであればあるほど解決策はよりよいものになる。
(2)聴き手についてよく知る
 優れたストーリーの語り手はみな、聴き手がどういう人かをしっかり判断することができる。/「分析好きな人たちに向かって話すなら」とナンシー・デュアルテは言った。「感情に訴えるのを控えて信頼を保つ必要がある。逆に、感動しやすい人たちに向かって話す場合は、分析的な話し方にならないようにする必要がある」。読者のみなさんにしても、ロッカールームでするような話を、よもや会議室ではしないだろう。
(3)ネガティブな要素を強調しない
 ストーリーを語るときは、未来を推測するのは避けよう。むろん、大変なことは起きるかもしれない。今より状況が悪くなる場合もあるだろう。それは間違いないかもしれないが、メッセージは穏やかに伝えよう。不誠実になれとか率直な対話をすべきでないなどと言っているのではない。/誠実であるべきだし、また率直であるべきだ。ただ、欺瞞だとか人の心を操ろうとしているとしてさっさと退けられてしまうような、過激な予想はしないこと。
(4)偽りのない話に聞こえるようにする
 ストーリーを語るうえで、本当らしさは常に重要だ。リアリズムを加えることで言いたいのは、細かい点を詳細に述べると、場面を設定し、読者や聴き手を新しい場所へいざないやすくなるということだ。/しかし、詳細を話して共感を誘えばそれでいいわけではない。製品や事業の背景、つまりそれらが生まれた由来も語る必要があるのだ。アップルの元チーフ・エバンジェリストで『人を魅了する』(海と月社)を著したガイ・カワサキは、社史を語るときは「始まりの物語」を加えることを勧めている。
(5)苦難や失敗を正直に語る
 ストーリーを語って自分をさらけ出すことは、人々を魅了し、その心をつかむ強力な手段になる。成功までの道のりがそれほど簡単ではないことを、聴き手はよく知っている。そのため、ストーリーを語って自分をさらけ出すことは、人々を魅了し、その心をつかむ強力な手段になるのである。
(6)一に練習、二に練習、三、四がなくて五に練習
 ストーリーをうまく語る人は、みな練習を重ねている。それも、少しではなく、大変な量を積む。/スティーブ・ジョブズの伝説的なスピーチ力について私が尋ねると、ネスト・ラボのトニー・ファデルはこう答えた。「伝説的? まさか。マックワールドでプレゼンをするまでに、スティーブは五〇〇〇回も練習したんだ」/ほとんどの人は、最初に一〇回、二〇回あるいは三〇回話しても、下手だったものが並みのレベルになるくらいだろう。しかし、自分が自信と情熱を持っているテーマについて話すなら、TEDトークで証明されているとおり、誰もがとてもうまく語れるようになる─初めのちっともうまくできない間もめげずに努力を続けるならば。

   



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