【2653】 ○ 大野 順也 『タレントマネジメント概論―人と組織を活性化させる人材マネジメント施策』 (2015/01 ダイヤモンド社) ★★★★

「●人事マネジメント全般」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2654】 ロッシェル・カップ 『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?

日本型タレントマネジメントの概念的フレームワークをきっちり示していると言えるのでは。

タレントマネジメント概論ド.jpgタレントマネジメント概論.jpg
タレントマネジメント概論---人と組織を活性化させる人材マネジメント施策』(2015/01 ダイヤモンド社)

 近年その重要性が注目されながら、一方で、どことなくもやっとしたイメージでしか受け止められていないフシもある「タレントマネジメント」について、人事戦略的な観点から解説した本です。因みに、本書でも紹介されている米国人材マネジメント協会(SHRM)によるタレントマネジメントの定義は、「人材の採用、選抜、適材適所、リーダーの育成・開発、評価、報酬、後継者養成等の人材マネジメントのプロセス改善を通して、職場の生産性を改善し、必要なスキルを持つ人材の意欲を増進させ、現在と将来のビジネスニーズの違いを見極め、優秀人材の維持、能力開発を統合的、戦略的に進める取り組みやシステムデザインを導入すること。」となっています。

 チャプター1「変化を勝ち抜くためのタレントマネジメント」では、外国企業のタレントマネジメントが次世代の経営者を育てるサクセッションプランに近いものであるのに対し、日本におけるタレントマネジメントは、労働人口の急速な減少傾向などを考慮すると、後継者候補やマネジメント人材、有能なリーダーといった特定人材だけではなく、アルバイトやパートを含めた全ての従業員にあてはめなければならないという考えを示しています。HRM(ヒューマン・リソース・マネジメント)からHC(ヒューマン・キャピタル)そしてTM(タレントマネジメント)への「人材→人財→個」という潮流の変化についての解説はオーソドックスですが、人口構造の変化のみならず、サービス産業の隆盛、情報・IT産業の急伸、グローバル競争の激化、ダイバーシティ、ワーク・ライフ・バランスの浸透、労働価値の変化などを考え併せると、日本においては全ての階層においてタレントマネジメントが求められるとしているのが本書の特徴であり、一方で、「個」の認識について日本は欧米に比べ10年の遅れがあり、一部IT企業や大手企業ではERPシステムを導入するなどの動きはあるものの、全体としてまだまだタレントマネジメントは浸透が浅いとしています(中小企業ほどタレントマネジメントを使いこなしたいともしている)。

 チャプター2「タレントマネジメント実践編」では、タレントマネジメントの実践に際しては 設計・活用・開発・運用という4つのフェーズがあるとして、導入事例なども交えつつそれぞれのフェーズについて解説するとともに、タレントマネジメントを採り入れることで、管理職はタレントマネジャーになり、人事部は処理の人事から「戦略的人事」を担う部門へ変化するとともに、従業員個人にも自らのキャリアへの責任とタレントマネジメントに向き合う姿勢が求められるとしています。

 チャプター3「真の競争力とエンゲージメントのある組織へ」では、個を活かしたタレントマネジメントにより飛躍する企業の事例を、それぞれ〈事象〉〈課題〉〈設計〉〈活用〉〈運用〉〈開発〉〈効果〉という流れで4社紹介するとともに、タレントマネジメントではとりわけ運用のPDSサイクルと開発のPDSサイクルがエンジンとして重要であり、また「人事と現場」(企画と実行)の両輪を回し続けなければならないとしています。更に、タレントマネジメントは会社と個人に大きな変化をもたらし(例えば年功制は無くなるし、過度の成果主義も無くなり、男性・女性の区別も無くなるとしている)、会社は従業員と対等な関係を築くことによりエンゲージメントの高い組織を構築していくことが可能になるとしています。

 単にデータベースを導入しましょうとかいった話ではなく、タレントマネンジメントというものの概念的なフレームワークをきっちり整理したうえで、更に日本的な独自性を備えたタレントマネンジメントというものも打ち出している点は評価できるかと思います。経営戦略としてのタレントマネンジメントというものを考える上で参考になり、ややコンサルファーム出身者系の概念先行的な部分も無きにしもあらずですが、一応、事例を通して制度への落とし込みがされています。タレントマネンジメントに限定せず、これからの人事の在り方を探る上で、啓発的な要素はある本かと思います。

【著者紹介】
大野順也 : 株式会社アクティブアンドカンパニー代表取締役社長兼CEO。1974年生まれ。大学卒業後、株式会社パソナ(現パソナグループ)に入社。営業を経て、営業推進、営業企画部門を歴任し、同社の関連会社の立ち上げなども手掛ける。後に、トーマツコンサルティング株式会社(現デロイトトーマツコンサルティング株式会社)にて、組織・人事戦略コンサルティングに従事し、2006年1月に『株式会社アクティブアンドカンパニー』を設立し、代表取締役に就任。

《読書MEMO》
●目次
第1章 変化を勝ち抜くためのタレントマネジメント(あなたの会社の「タレント」は眠っている/ HRM、HC、そしてタレントマネジメント―世界はいかにタレントマネジメントに行き着いたか/ 日本には日本独自のタレントマネジメントが求められている/ まだまだ浸透が浅い日本企業)
第2章 タレントマネジメント実践編(タレントマネジメントの全体像/ 設計/ 活用・開発/ 運用と役割―各部署の仕事はどれほど変わるのか)/
第3章 真の競争力とエンゲージメントのある組織へ(個を活かして飛躍する企業/ PDSサイクルを回せ/ 経営と従業員の良好な関係―エンゲージメントの実現を)



ブログランキング・にほんブログ村へ banner_04.gif e_03.gif



和田泰明

About this Entry

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1