【1172】 × 久新 大四郎 『あなたの会社の評判を守る法 (2007/10 講談社現代新書) ★★

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網羅的なマニュアル、精神論主体の啓蒙書の域に止まり、読後に残らない。

あなたの会社の評判を守る法.gifあなたの会社の評判を守る法 (講談社現代新書)』 ['07年]

 「コーポレート・レピュテーション」という概念を紹介していますが、レピュテーション(reputation)とは「評判」であり、「コーポレート・レピュテーション」とは、「企業人の判断・行動、発言に対して、消費者や投資家、取引先、ジャーナリズム、地域社会といった全てのステークホルダーが下す正または負の評価のこと」であると、本書では定義しています。

 冒頭に、「ブランド価値というのは、基本的にはその企業が提供する商品もしくはサービスに対する評価である」といった、いかにもマーケッターっぽい「ブランド・エクイティー戦略」の話などが出てきて、経歴を読まずとも、著者の出自が推し測れてしまいました(企業のマーティング部門から品質管理・市場対応部門に転属、その後、独立してコンサルタントに)。

 自らの体験に近いところで書かれているようで、「製品不良問題に対する市場対応」問題に話は集中していています(レピュテーションの対象とするものは、これに止まらないと思うが)。
 確かにこれだけでも、石油ファンヒーター、湯沸かし器から食品・菓子類まで、近年の製品事故の事例は枚挙に暇が無いわけで、そうした例を挙げながら、事故対応の問題点を指摘し、あるべき対応策を整理しています。
 但し、素材に新しさはあるけれども、内容的にはマニュアルを圧縮しただけの感じもして、特にハッとさせられるようなものなく、消費者関連法など法律面についても、限定的な紹介しかされていないように思えました。

 「会社の評判」は決して「金で買えるもの」ではないという趣旨は尤もですが、「全てがトップ次第」であると言いつつ、不祥事が起こった際、それに対して真摯に取り組んでいるかいないかは相手に伝わるものであり、「社員ひとり一人がステークホルダーに向き合え」とも言っており、結局、基本は網羅的なマニュアル書で、論説部分は精神論主体の啓蒙書の域に止まっています(読んで目から鱗が落ちたという人がいれば、そちらの方が問題)。

 レスリー・ゲインズ=ロス『「社長の評判」で会社を伸ばす』('06年/日本経済新聞社)ではないですが、受身的なマニュアル本や精神論主体の啓蒙書よりも、何か「決め打ち」的な戦略が示されているものの方が、読んだ後に残るものがあるように思いました。

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