【2420】 ○ ロマン・ポランスキー 「フランティック」 (88年/米) (1988/07 ワーナー・ブラザーズ) ★★★★

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当時としては新鮮だったハリソン・フォードの役作り。

フランティック ちらし.jpgフランティック dvd.jpgフランティック [DVD]「フランティック」1988年5.jpg
映画チラシ 「フランティック」監督 ロマン・ポランスキー 出演 ハリソン・フォード」エマニュエル・セニエ
フランティック05.jpg 米国人外科医リチャード・ウォーカー(ハリソン・フォード)は、学会で講演するために妻サンドラ(ベティ・バックリー)と共にパリを訪れていた。新婚旅行以来のパリに心を弾ませていた彼だったが、ホテルにチェックインした後、「フランティック」1988年 4.jpgスーツケースが空港で誰かのものと取り違えてしまったことに気づく。明日にでも取り替えてもらうよう妻に言ってシャワーを浴びるが、その間に妻はホテルの部屋から忽然と姿を消してしまう。幾つかの関係先に問い合わせるも本気で取り合ってもらえず、逆に妻の浮気を疑われるという不本意な状況の中、ある目撃情報から妻の装身具を路上で発見、彼は妻は誘拐されたと確信し単身で捜索に乗り出す―。

Frantic 1988.jpg ロマン・ポランスキー監督(左写真)の1988年作品で、タイトルの「フランティック」(frantic)とは、「気が狂ったような」という意味であり、妻の誘拐事件にパニックになる主人公の姿を指しています。ハリソン・フォードはプライベートで妊娠中の当時の妻メッリサ・マシスンとパリ旅行に行った際にポランスキー監督と出会い、その時にこの作品の企画を打ち明けられ、異郷のパリで主人公の心情に近い立場だったこともあって喜んで出演をOKしたという裏話があります(ポランスキー監督はこの映画にミシェル役で出演したエマニュエル・セニエと'89年に結婚した)。

「フランティック」1988年 ミシェル.jpg 主人公が誤って持ち帰ったスーツケースは、運び屋の女ミシェル(エマニュエル・セニエ)が米国から持ち込んだ核兵器の起爆装置が隠されたもので、彼女に行き着いた主人公は、その起爆装置の争奪に躍起になるアラブ人グループとそれを阻止せんとするイスラエル側の攻防の中、ミシェルを救ったりしながら自らも妻の捜索にあたる―。

フランティック07.jpg この映画は、公開時に結構評価が割れたような気がします。ロマン・ポランスキーにしてはクセが無いオーソドックスなサスペンスですが、ストレートにサスペンスとして見「フランティック」1988年 Hフォード.jpgるとやや盛り上がりに欠け、ヒッチコック作品ほどの完成度にも至っていないといのがマイナス評価の理由でしょうか。大掛かりな仕掛けが出てこないこともあって、TVのミステリードラマを見ているような印象もあります。しかしながら、パリの街の雰囲気を自らがエトランゼになった気分で味わえ、ハリソン・フォードの好演もあって、個人的評価としては「○」です。特にハリソン・フォードが、主人公の医師が不測の事態にキリキリ舞いさせられる様を見事に演じていたように思います。

Frantic 1988 06.jpg ハリソン・フォードは当時、「インディ・ジョーンズ」シリーズからのイメージ・チェンジを図っており、既に「刑事ジョン・ブック 目撃者」('85年)に出演しアカデミー主演男優賞にノミネートされたりもしていましたが(ハリソン・フォード自身は「刑事ジョン・ブック 目撃者」を自身の"演技開眼作"と捉えているようだ)、対外的にはやはり、この「フランティック」が1つエポックになったのではないかと思われます。後の主演作品で、愛人殺害容疑をかけられた地方検事補ラスティ・サビッチを演じたスコット・トゥロー原作の「推定無罪」('90年)や、妻殺害容疑をかけられた医師チャード・キンブルを演じた「推定無罪」「逃亡者」「目撃者」.jpg古典的TVシリーズのリメイク「逃亡者」('93年)といった作品におけるキャラクター造型は、この「フランティック」の時の役作りがベースになっているように思います。「推定無罪」や「逃亡者」におけるハリソン・フォードの演技を知った上でこの作品における彼の演技に接すると、そう目新しい感じではないかも知れないけれど、リアルタイムで初めてこの作品を観た時の彼の演技は新鮮に映ったものでした(役者が自身の新境地を開拓した作品というのはやはり注目に値する)。

「フランティック」1988年.jpg「フランティック」●原題:FRANTIC●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ロマン・ポランスキー●製作:ティム・ハンプトン/トム・マウント●脚本:ロマン・ポランスキー/ジェラール・ブラッシュ/ロバート・タウン/ジェフ・グロスン●撮影:ヴィトルド・ソボチンスキ●音楽:エンニオ・モリコーネ●時間:120分●出演:ハリソン・フォード/エマニュエル・セニエ/ベティ・バックリー/ジョン・マホーニー/ジミー・レイ・ウィークス/ジェラール・クライン/パトリス・メレネク/イヴ・レニエ/リシャール・デュー/ドミニク・ピノン/ジャック・シロン//パトリック・フラールシェン/新宿ミラノ座内2.jpg新宿ミラノ座 1959.jpgマルセル・ブリュワル/デヴィッド・ハドルストン/アレクサンドラ・スチュワート/トーマス・M・ポラード/アルトゥ・ドゥ・ペンゲルン●日本公開:1988/07●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場ミラノ座 1983年.jpg新宿ミラノ.jpg新宿ミラノ座 内部.jpg所:新宿ミラノ座(88-07-10)(評価:★★★★) [上写真:「新宿ミラノ座」オープン当初 (1959年)]
新宿ミラノ座 1956年12月、歌舞伎町「東急文化会館(後に「東急ミラノビル」)」1Fにオープン(1,288席)、2006年6月1日~「新宿ミラノ1」(1,064席)2014(平成26)年12月31日閉館。 (閉館時、都内最大席数の劇場だったが、閉館により「TOHOシネマズ日劇・スクリーン1」(948席)が都内最大席数に)

新宿東急ミラノビル4館(シネマミラノ・ミラノ座・新宿東急・シネマスクエアとうきゅう)2005年8月
新宿ミラノ会館4館 20051.08.jpg

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