「●労働法・就業規則」の インデックッスへ Prev|NEXT 【2219】 山川 隆一 『労働法の基本』
初学者だけでなくベテランにも。まさに「初級入門者から上級の実務担当者まで必携」。
『基礎から学ぶ賃金・賞与・退職金の法律実務』(2013/04 日本法令)
産労総合研究所の定期刊行誌「賃金事情」に、平成17年4月から平成19年6月までの約2年間にわたって連載された「基礎から学ぶ賃金と法律」を単行本化したものですが、連載が終了してから6年経っているわけで、当然のことながら、その間の労働関連法令の改正、労働契約法の創設などを前提に、専門誌掲載記事の内容を大幅にリニューアルしてあります。
第1章から第6章までは、賃金の定義や賃金の支払いに係る法的制度をはじめ、賃金の決定や計算、支払い等の実務について分かり易く解説しています。また、第7章では平均賃金、第8章では賞与、第9章では退職金の法律実務をそれぞれ解説しています。
また、最近の社会経済情勢を背景に、企業が直面する人事労務の問題や、M&Aに伴う賃金の不利益変更の問題など、現場で人事労務の問題に対応している人事パーソンの実務に供するよう、「補章」として、賃金の不利益変更に関する諸問題を取り纏めて解説しています。
法令の条文だけでなく、行政通達や裁判例がふんだんに織り込まれていて(賃金に関する全通達の内のかなりのものが取り上げられているのではないか)、さらに関連するコンサルティング事例なども載っています。
職場の管理職や一般の従業員にも分かるように心掛けて執筆したとのことで、2色刷りで図説がたいへん多くて分かり易いですが、前述の通り、法律や通達に関してかなり突っ込んで解説しており、更に、年俸制、インセンティブ手当と割増賃金、固定残業代の支払い方などの個々のテーマに関しても、実務上発生する課題に対し、"並みの"実務書には見られない詳細な解説がなされています。
法律についてある程度突っ込んで書かれた本は少なからずあり(弁護士や大学教授が書き手であることが多い)、また、「残業代」や「不利益変更」などの賃金労務に関するテーマに沿って実務寄りに書かれた指南書的な本もあることはありますが(コンサルファームや社労士が書き手であることが多い)、ここまで法律に関して突っ込んで書かれていて、且つ、そのことをきちんとベースにしつつ実務対応についても踏み込んで書かれている本というのは、実際には殆どないように思われます。
帯にも「初級入門者から上級の実務担当者まで必携!」とありますが、初学者だけでなく、ベテランの人事パーソンや社労士にとっても専門能力を深めるうえで大いに参考になると思われ、まず通読して("ベテラン"を自負する人ほど、内容の深さにおいて相当の読み応えがあるのではないか)、その後も必要に応じて読み返したり、手引き的な使い方をされることをお勧めします。
《読書MEMO》
●目次
第1章 賃金とはなにか
第2章 賃金支払いにかかる規制と保護
第3章 賃金決定の実務
第4章 賃金計算の実務
第5章 賃金支払いの実務
第6章 割増賃金の実務
第7章 平均賃金の実務
第8章 賞与支払いの実務
第9章 退職金支払いの実務
補章 賃金の不利益変更等に関する諸問題