【900】 ○ 鶴見 太郎 『民俗学の熱き日々―柳田国男とその後継者たち』 (2004/02 中公新書) ★★★☆

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周辺学界にこそ柳田の後継者はいた。「現代風俗研究会」もその1つ?

民俗学の熱き日々―柳田国男とその後継者たち.jpg 『民俗学の熱き日々―柳田国男とその後継者たち (中公新書)』 ['04年] 柳田国男.jpg 柳田國男

 柳田國男(1875‐1962/享年87)は、ほぼ独力で日本の民俗学を開拓し、また思想家としても後世に多大の影響を及ぼしたとされる人ですが、その個人としての業績が燦然と屹立する一方で、山口昌男が「柳田に弟子なし」と指摘したように、その影響力が誰によって引き継がれたのかが不明であるという面もあり、本書では今一度、民俗学や思想面での彼の系譜がどこに見られるのかを、文献や資料をあたって検証しています。

 柳田の幼年期の祠での神秘体験とそれに関する記述の変容などは面白い(自ら脚色している!)ものの、本全体としてはタイトルの割には地味で、読んでいて柳田の学界内での保守的な姿勢を知るにつれ柳田が嫌いになりそうな気もし、山口昌男も指摘したように、彼は、分野を異にする「異邦人」を歓待する一方で傘下の弟子に「危険な遊戯」を禁じた(つまり、彼自身の学究分野や学説を超えることを禁じた)、その結果、独創的な継承者が育たなかったということのようです。

 但し、本書で「周辺の人々」「読者群像」として紹介されている、彼の人物や書物に触れて大きな影響を受けた人の中には、「周辺の人々」として今西錦司(1902‐92)、貝塚茂樹(1904‐87)、梅棹忠夫(1920‐)らがおり、「読者群像」として桑原武夫(1904‐88)、中野重治(1902‐79)、花田清輝(1909‐74)などがいて、そのビッグネームの連なりとジャンルの幅広さに改めて驚かされます。

 柳田の本に刺激されてニホンオオカミの絶滅に関する伝聞を地方に聞いて回った今西錦司の初期の仕事は、殆ど民俗学者のそれであり、今西は後に、『遠野物語』を自在に論考し、独自の生態学理論を打ち出すのですが、その今西から『遠野物語』を借りて読み、今西より遥かに早くそれについて言及したのが、仏文学者の桑原武夫だったとか、こうした柳田を軸に交錯した関係が興味深く、結局、著者の言わんとしているのは、柳田の影響は民俗学と言う分野だけでなく、むしろ周辺学界に大きな影響を与え、強いて言えば、それらの人々が「後継者」だということのようです。

 そう言えば、「現代風俗研究会」というのがあって、初代会長が桑原武夫、第2代会長は仏文学者・社会学者の多田道太郎(1924-2007)で、なぜフランス文学者が「風俗研究」なのかという不思議さもありましたが、何となく解ったような...。
 本書の著者の父親で、哲学者・評論家でマンガ評論でも知られてる鶴見俊輔氏も「現代風俗研究会」の草創期からのメンバーです。

  



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