【1637】 △ 内海 善雄 『「お辞儀」と「すり足」はなぜ笑われる (2010/01 日経プレミアシリーズ) ★★★

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広い意味での国際プロトコルについて書かれた本。実践の場がないとなあ。

「お辞儀」と「すり足」はなぜ笑われる.jpg 『お辞儀」と「すり足」はなぜ笑われる』(2010/01 日経プレミアシリーズ)

 国連機関などで長年に渡って仕事し、国際会議やパーティなどを通じて外国人との仕事・交流の経験が豊富な著者が、外国人の思考・行動特性と日本人のそれとの違いを踏まえた上で、外国人との付き合い方を指南したもの。

 本書の後半では、欧米人と対等に付き合うためのマナーや、レセプションやディナーでの基礎理式、スピーチの秘訣や国際会議での立ち回り方などが書かれていて、最終章が「恥をかかないための基礎的なプロトコル」となっていますが、後半全体が広い意味での国際プロトコルについて書かれたものであり、見方によっては本書全体がそうであるとも言えるのでは。

 但し、前半部分の、日本人がよく使う「すみません」という言葉が欧米人にとっては何を意味しているのか理解されにくい、とか、欧米では、自己主張できなければ無能力と評価されるため、子供の頃からいかに自分の意見を主張し、他人を説得できるかを鍛えられるが、謙虚が美徳の日本社会では「沈黙は金なり」と教えられる、従って、日本人と欧米人とが一番異なる行動をするところは、発言するかしないかである、といったことは、これまでも多くの本などで言われてきたことではないでしょうか。

2011年FIFAワールドカップ日本対アメリカ決勝戦.jpg 日本の社会では、結果よりもプロセスが大事にされるが、欧米社会では結果が全てであるというのは、時と場合によるような気もしました。以前、女子サッカーの2011年FIFAワールドカップの日本対アメリカの決勝戦の選手別採点表の日本版とドイツ版をネットで比較してみたことがありますが(サイトの運営会社は同じ)、日本の場合は優勝したこともあって皆高い評価になっていたのに対し、ドイツの方は、苦戦したプロセスを見ているのか、結構厳しかったように思います(時間ごとに区切った評価の累積が最終評価になっているようだ。海外の方がプロセス重視型であるのが興味深い)。

 尤も、日本人は分析力や総合力に長けているので、問題を分析し、解決方法を探し、自分で改善して行く能力を持っているため、いわゆるマニュアルは不要で、上司の役割も細部にわたる指示ではなく、むしろ問題点を発掘し大きな方針を示すことに重点が置かれるが、一方、西欧では、事細かに何をするのかを指示しなければ人々は動かない、という指摘など、改めてナルホドなあと思わされる部分も多々ありました。
 
「お辞儀」と「すり足」はなぜ笑われる 2.jpg 表題の「お辞儀」に関しては、日本人はやたらとお辞儀をするが、平常の挨拶で頭を下げてお辞儀をする国はあまり無く、殆どの国でお辞儀は君主に会ったりしたときに使う最敬礼の挨拶であるとのことで(だからオバマ大統領は天皇に会った際にお辞儀したわけか)、通常のビジネスの場においては、堂々と胸を張り握手をすべきであり、それが欧米人と対等に付き合うことができる第一歩であると。

 前半は比較文化論的で面白いけれども、聞いたことがあるような内容も多く、後半に行くほど「プロトコル」色が強くなっていくため、知識として持っているにこしたことはないけれど、周囲に外国人がいて実践する機会がないと、応用に繋がらないかなあと(誰かレセプションにでも呼んでくれないと、忘れてしまいそう?)。

 『国家の品格』という本がありましたが、国際社会は闘争の場であり、自国において「誇り」や「品格」を大事にしている外国人でさえも、国際社会に出た途端にそうしたものを捨て去るという指摘は興味深かったです。

 その他にも、外国人間では、相手の家族のことを気に掛けたり、家族同士で付き合ったりすることが、日本人間以上に高い親密度の表れとみなされるといった指摘なども興味深かったですが、やはり、応用の場がないとなあ(実践の場がある人にとってはいいかも知れないが、そうした人達にとっては、すでに分かり切ったことかも)。

女子サッカー.jpg2011 FIFA女子ワールドカップドイツ大会 決勝戦(対アメリカ)先発メンバー個人別評価

女士サッカー.jpg 

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This page contains a single entry by wada published on 2011年12月 2日 23:38.

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