【462】 ◎ 手塚 治虫 『ブッダ (全14巻)』 (1974/09 潮出版社) ★★★★☆

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"手塚流ブッダ"と見るべき? 物語としてのエンタテインメント性を評価したい。

ブッダ (第1巻).jpgブッダ 第1巻.jpg ブッダ 第2巻.jpg ブッダ 第3巻.jpg ブッダ 第4巻.jpg ブッダ 第5巻.jpg ブッダ 第6巻.jpg ブッダ 第7巻.jpg ブッダ 第8巻.jpg
ブッダ [成人向け:コミックセット]』 潮出版新社(全8巻)['87年]
ブッダ《オリジナル版》復刻大全集 8』 復刊ドットコム (2014/8/15)
ブッダ《オリジナル版》復刻大全集.jpg '72(昭和47)年から'83(昭和58)年にかけて雑誌連載された、ゴータマ・シッダルタの生涯を描いた物語ですが、子どもにも読めるわかりやすさ、大人も満足できる叙事詩性やメッセージ性、そして誰もが引き込まれる展開の面白さ。ブッダを最後まで悩み苦しむ生身の人間として描いているので、ブッダが身近に感じられます。

 動物にのり移る能力を持つパリア(不可触賎民)出身の少年盗賊タッタ、最愛の母親と共に数奇かつ悲劇的運命を辿ることになるスードラ(賎民)の青年チャプラ、放浪のバラモン(僧)ナラダッタなど、冒頭から様々な人物が登場。中盤においても、予知能力があり自分の死期を知る子どもアッサジや、盗賊からブッダの弟子に転じるアナンダなど、魅力的な登場人物は挙げればキリがありません。作者の創作したキャラクターも多いものの、仏典を基にしたストーリーにうまく溶け込んでいます。

ブッダ.jpg 厳密に言えば、基本的には、"手塚治虫が描くところのブッダ"と見るべきなのかもしれません。悟りを開いたブッダに人々が帰依していく様が、超能力対決のようなエンタテインメント性を交えて描かれている一方、仏法の講釈の部分は、輪廻転生など手塚治虫的なものに集約されている気もしました。ナラダッタの贖罪などにも、作者の生命哲学が強く反映されていると思いました。一方で、解脱したはずのブッダが、なおも悩み続け、ブラフマンの導きを乞うている...でも"手塚治虫が描くところのブッダと見れば、これで良いのではと思います。

 完結まで10年を要した本作は、手塚作品の中で繋がった1ストーリーのものでは最長作品ですが、ストーリーテラーとしての作者の本領が遺憾なく発揮されていて、多くの人にお薦めしたいと思います。
 
『ブッダ (全14巻)』.jpg マンガがサブカルチャーとして注目・評価されるずっと以前に、本作や『火の鳥』が既にカルチャー(教養)の側に入っていた時代があったことを思い出しましたが、個人的にはあえて、物語としてのエンタテインメント性を高く評価したいと思います。

 【1974年コミックス版(全14巻)・1979年B5判(全6巻)・1987年四六判(全8巻)[潮出版社]/1983年全集[講談社(全14巻)]/1992年文庫化[潮ビジュアル文庫(全12巻)]/1998年B6判ソフトカバー[潮ライブラリー(全8巻)]/2011年再文庫化[講談社・手塚治虫文庫全集BT(全7巻)]/2011年新装版[潮出版社(全14巻)]/2014年《オリジナル版》復刻大全集[復刊ドットコム(全8巻)]】

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