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「超新星爆発」の本。爆発メカニズムや「加速膨張」宇宙発見の契機になったことが分かる。

『ベテルギウスの超新星爆発 加速膨張する宇宙の発見 (幻冬舎新書)』/村山斉『宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)
』
この著者の本は分かり易くて何冊か読んでいるのですが、本書に関してはネットのブックレヴューで、標題の「ベテルギウスの超新星爆発」について述べているのは冒頭だけで、後は一般的な宇宙論の入門書である、といったコメントがあり、ああ、編集部の方でつけたアイキャッチ的なタイトルなのかなあと思いましたが、読んでみたら必ずしもそうでもなかったように思います。
本書刊行と同時期にNHK-Eテレの「サイエンスZERO」でベテルギウスの超新星爆発に特化した番組(「爆発が迫る!?赤色超巨星・ベテルギウス」(2011年11月26日 放送))をやっていたから、そうしたものが期待されたというのもあるのかも知れません。
「冬の大三角形」の一角を成し、オリオン座の左上部に位置するベテルギウスは、大きさは太陽の1000倍、地球から距離は640光年。「ベテルギウスが2012年に超新星爆発を起こすかもしれない」という噂が天文ファンの間で囁かれた「2012年」という言葉が出てきたのは2011年1月のことで、オーストラリアの物理学者が、「もし超新星爆発が起きたら、少なくとも二週間は二つの太陽が見られることになり、その間は夜はなくなるだろう」「場合によってはもっと先かもしれないが、2012年に見られる可能性がある」と言ったことに起因しているそうです。
サイエンスライターである著者によれば、超新星爆発を起こした星は太陽の何億倍、何十億倍の明るさで輝くけれども、ベテルギウスとの640光年という距離からすると、一番明るくなったときでも満月より明るくなることはないと。また、ベテルギウスが超新星爆発の兆候を示していることは確かだが、それは明日かもしれないし、10万年後かもしれないとのこと。また、近年、過去15年間でベテルギウスの大きさは15%縮小したという海外の研究発表があり、これを聞くと「いよいよか」と思ってしまうけれど、日本の研究者によれば、ベテルギウスの表面のガス状の部分の変動は近年大きいものの、核の部分の大きさの変化は見られないとのこと。
赤色巨星であるベテルギウスが爆発すると、色は青くなって、1時間後にはリゲル、2時間後にはシリウスより明るくなり、3時間後には半月ぐらいの明るさになって、明るさのピークに達するのは7日目、その後、ほぼ同じ明るさが3ヵ月続くということなので、見てみたいことは見てみたいけれどね(向こう10万年以内ということは、あと10年内に起きる可能性は1万分の1?)。
「サイエンスZERO」では爆発3時間後に満月の100倍のまぶしさになると言っていたけれど(この番組にはサイエンスライターで自身が物理学者でもある竹内薫氏が出演していた)、結局、取材先(学者)によって諸説あるということなのかな。
「サイエンスZERO」
第2章で星の誕生と進化について、第3章で星の終末について解説していますが、随所にベテルギウスにテーマを絡め、超新星爆発が起こる際のメカニズムを素粒子物理学の観点から詳しく解説しているのもタイトルに沿っていると言えるのでは(サブタイトル「素粒子物理学で解く宇宙の謎」との対応も含め)。
第4章で、人間は宇宙の謎をどのように解き明かしてきたかを、第5章で、その結果、今現在において宇宙はどこまで分かっているかを解説し、この辺りの分かり易い解説は著者の得意と言えば得意とするところ、定番と言えば定番。
但し、第6章で「加速膨張する宇宙の発見」にフォーカスしていて、これはベストセラーとなった村山斉氏の『宇宙は何でできているのか-素粒子物理学で解く宇宙の謎』('10年/幻冬舎新書)でも注目すべき近年の発見とされていましたが(それまでは減速膨張論が宇宙物理学の一般的解釈だった)、超新星がその発見の鍵となったことを、村山氏の著書以上に詳しく書いています。
超新星爆発には、Ⅰ型(小質量星の核爆発)とⅡ型(大質量星の重力崩壊)があるとされてきましたが、その後更に細かく分類されるようになり、連星系の白色矮星の爆発をⅠa型と呼ぶそうですが、このⅠa型の超新星の明るさが予測データより暗かったことから、何だかわからないものが宇宙をどんどん拡げているらしいという結論に達したとのこと(発見者3名は2011年のノーベル物理学書を受賞した)。
宇宙論を解説しながら、最後、ちゃんと「超新星爆発」オチになっている...。



本書は、講談社現代新書としては珍しい(?)カラー版で、同氏の『カラー版 ハッブル望遠鏡の宇宙遺産』('04年/岩波新書)と内容的にかぶるのではないかとも思ったのですが、読んでみて、或いは写真を見て、今回も期待を裏切るものではありませんでした。
老朽化しつつあるハッブル宇宙望遠鏡について、NASAが、国際宇宙ステーションの軌道外にハッブル宇宙望遠鏡があることから、予算難に加えて宇宙飛行士の安全を確保出来ないことを理由に修理見送りの決定を下したため、著者が前著で、"人類遺産"の対語として命名された"宇宙遺産"だが、ハッブル宇宙望遠鏡そのものの"遺産"ということになってしまうのかと嘆いていたのを覚えています。


天体写真に解説文章を添えた野本陽代氏の本は、最初、単行本(『見えてきた宇宙の神秘』('99年/草思社)など)からはいって、その後、岩波新書の「カラー版ハッブル望遠鏡が見た宇宙」シリーズの3冊を読みましたが、ハッブル宇宙望遠鏡が映した天体写真などは、最近ではかなりインターネット上のウェブサイトでも見ることができるようになりました。
ハッブル宇宙望遠鏡による星や星雲の写真がメインであるという点では、岩波新書のカラー版シリーズの第3冊『ハッブル望遠鏡の宇宙遺産』('04年)に内容的には最も近いかも知れませんが、こちらは太陽系まで含まれていて、(単行本の版元も潰れたりしているので)今、ジュニア向けで1冊買うとするならば、本書がお薦めと言えるのではないでしょうか、天文ファンの中にも、本書を薦める人は多いようです。


どうして宇宙の年齢や星までの距離、絶対光度がわかるのかといったことから、最新の宇宙論に至るまでをわかりやすく解説するとともに、現在活躍中の世界中の宇宙物理学者を数多く丹念に取材し、彼らの考え方を、その人となりと併せて生の声で伝えています。