【3139】 ○ マーティン・リット (原作:エルモア・レナード) 「太陽の中の対決」 (67年/米) (1967/10 20世紀フォックス) ★★★☆

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ポール・ニューマンがインディアンに育てられた寡黙な白人青年を演じた異色西部劇。

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太陽の中の対決 [DVD]」ポール・ニューマン/ダイアン・シレント
「太陽の中の対決」2g.jpg 1880年代の東部アリゾナ。ここは元アパッチの地だったが、白人に奪われてから、彼らは保護地に移り住んだ。その中のひとりジョン・ラッセル(ポール・ニューマン)はアパッチに育てられた白人だ。彼は養父からの遺産の下宿屋を売り払い、コンテンションという地で馬を買う計画を立てていて、数日後、南へ行く小型馬車をやっとのことで見つけることができた。というのは、この地方にも鉄道が敷かれ、駅馬車が影を潜める時代が来たのだ。南へ行く馬車の同乗者は、ジョンのほかに、下宿屋のマネージャーだったジェシー(ダイアン・シレント)、ビリー・リー(ピーター・ラザー)とドリス(マギー・ブライ)の新婚夫婦、そして60がらみのフェーバー(フレドリック・マーチ)と若い妻オードラ(バーバラ・ラッシュ)たちだった。馬「太陽の中の対決」5.jpg車が出る間際にグライムス(リチャード・ブーン)と名のる男が強引に乗り込んだ。馬車がけわしい山を越えると、突如行手に3人のガンマンが現れた。ひとりはジョンの下宿屋にいたブレイトンという元保安官。この3人に、一人のメキシコ人が加わりさらにグライムスが合流して、その頭に。5人のガンマンの目的はフェーバーだった。彼はインディアン用の食肉を横流しして儲けていた極悪人。5人はフェーバーの金を奪い若妻オードラを人質にして逃げる。後を追ったジョンは2人を射殺し、金だけは無事に取り戻す。その金を、フェーバーは持ち逃げしようとしたが、逆にジョンに身ひとつで追放された。生き残ったグライムスは、オードラと金を交換しようと言ってきたがジョンは拒絶。するとグライムスは、オードラを強い太陽の下で縛りつける。このままでは、渇きと日射病で死んでしまう。この頃、追放されたフェーバーも戻ってきていたが、なすすべもない。結局はジョンが"(夫フェーバーが)インディアンにひもじい思いをさせた報いだ"と呟きながらも助ける。しかし、金と交換せずにオードラを助けたジョンは、グライムスとメキシコ人の2人を射殺したが、5人のガンマンの最後の一人に倒されてしまう。復讐はビリー・リーがした。そしてジョンの遺体は、かつて彼の下宿屋で働いていたジェシーが町へ持って行き弔うという―。

「太陽の中の対決」原作.jpg村上春樹 09.jpg 1967年公開のマーティン・リット監督、ポール・ニューマン主演の異色西部劇で、両コンビの「ハッド」('63年)、「暴行」('64年)に続く3部作の第3作。原作はエルモア・レナード(1915-2013/87歳没)による1961年の小説「オンブレ」です(村上春樹訳で新潮文庫『オンブレ』に収められている)。エルモア・レナードって西部劇小説がデビュー作だったのだなあ。

オンブレ (新潮文庫)
「太陽の中の対決」pm.jpg.png.jpg ポール・ニューマンがインディアンに育てられた白人青年を演じていて、公金を横領した悪玉と同じ馬車に乗り合わせたために強盗に襲われるという、しかも、インディアンに対して加害者であった白人たちを救い、その一方で、自分は悪者に撃たれて死んでしまうという、なんだかすごくやるせない話でした。

「太陽の中の対決」09.jpg「太陽の中の対決」15.jpg 駅馬車にいろいろな人物が乗り合わせ、それが外部から敵に襲われる(リチャード・ブーン演じる悪党面の男グライムスが敵の側だったのはやっぱりという感じだった)というのは、ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の「駅馬車」('39年/米)を想起させます。ただ、その流れでいくと最後強いヒーローが敵を倒して自らは生き延びるわけですが、そうはならないところがミソです。

「太陽の中の対決」3.jpg ポール・ニューマンが演じる主人公のジョンが寡黙で(これも珍しいのでは)、最初は駅馬車の客たちにも不愛想。でも、馬車が外敵に襲われると、その冷静な行動から、自然と皆のリーダーになっていきます。それでも、ずっと不愛想なのは、彼は別にバーバラ・ラッシュ .jpg駅馬車の客たちに義理があるわけでもなく、むしろ白人に迫害された側にあるからでしょう。敵方によって強い太陽の下で縛りつけられた美しい人妻オードラ(バーバラ・ラッシュ)がどんなに泣き叫んでも助けにに行かない。正義感に溢れる勇敢な女性ジェシー(ダイアン・シレント)にそのことを非難されてもなお動かない。それが最後の最後に―(やはりジェシーに心動かされたか)。

荒野のストレンジャー.jpg すぐに動かなかったのは、白人たちに反省させるためだったのかな。今までさんざん差別しておいて、今は縛られた女性の夫ですら何も出来ずにいるところ、皆が彼に頼り切っているという状態になっているわけですから、皮肉と言えば皮肉なことです(クリント・イーストウッド監督・主演の「荒野のストレンジャー」('73年/米)で、人々を無法者から守るはずの主人公が、無法者が攻めてきても最初は相手のやり放題にさせていたのを思い出した。実はこの主人公は、かつて無法者にリンチされながら住民の誰からも助けがなく亡くなった保安官の生まれ変わり?だったので、住民に少しは反省してもらうためにそうしたのではないか)。

「太陽の中の対決」pn1967.jpg しかし、ポール・ニューマン演じるこの寡黙な主人公の"勇敢さ"は、これではいくら命があっても足りないというもので、ほとんど白人たちのために命を投げ出したに近く、原作がエルモア・レナードだから、陳腐なカタルシス効果を排してリアルな心理劇になっているのはある程度頷けますが、結果としてジョンは"神"のような存在になっていたように思います。

 ポール・ニューマンがインディアンに育てられた寡黙な男を演じているのも異色であるし、一般的なハリウッド型ヒーローとはやや趣の異なる、こうした完全に自己犠牲的な役を、大仰ではなくさらりと演じているのも珍しいように思いました。

「シャラコ」.jpg「太陽の中の対決」6.jpg.png「太陽の中の対決」pg.jpg 主人公の心に大きな影響を与える役どころで要所で物語を転がすヒロイン・ジェシーを演じたのは当時ショーン・コネリーの妻だったダイアン・シレント(「太陽の中の対決」と同年公開の「007は二度死ぬ」('67年/英)の撮影時、海女の役なのに海に潜れないことが判明した浜美枝の代わりに、たまたま夫に同伴していた彼女が急遽スタントとして潜った。彼女は子供の頃から泳ぎが得意で潜水も長時間できた)。ショーン・コネリーがこの「太陽の中の対決」が大のお気に入りで、翌年、本作とそっくりな設定の西部劇「シャラコ」('68年)に主演しています(気丈な女性の役どころはブリジット・バルドー)。

「太陽の中の対決」●原題:HOMBRE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:マーティン・リット●製作:マーティン・リット/アーヴィング・ラヴェッチ●脚本:アーヴィング・ラヴェッチ/ハリエット・フランク・Jr●撮影:ジェームズ・ウォン・ハウ●音楽:デヴィッド・ローズ●原作:エ「太陽の中の対決」4.jpg.png.jpgルモア・レナード●時間:111分●出演:ポール・ニューマン/フレデリック・マーチ/リチャード・ブーン/ダイアン・シレント/キャメロン・ミッチェル/バーバラ・ラッシュ/ピーター・ラザー/マギー・ブライ/マーティン・バルサム/スキップ・ウォード/フランク・シルヴェラ●日本公開:1967/10●配給:20世紀フォックス(評価:★★★☆)
リチャード・ブーン

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