【3118】 △ ケネス・ブラナー (原作:アガサ・クリスティ) 「ナイル殺人事件」 (22年/米) (2022/02 ウォルト・ディズニー・ジャパン) ★★★

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旧作には及ばない。"鬼才"にはリメイク作品は向かない?

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「ナイル殺人事件」('22年/米) アーミー・ハマー/ガル・ガドット/ケネス・ブラナー
「ナイル殺人事件」p.JPG.gif 新婚旅行中の夫婦、そして彼らの招待客たちを乗せた豪華客船がナイル川を進んでいた。そんな中、船内で乗客が次々と何者かによって殺されていく。偶然船に乗っていた名探偵・ポアロは、謎に包まれたこの事件を解明し、犯人を探し出そうと奔走する―。

DEATH ON THE NILE  .jpg「ナイル殺人事件」1354.JPG 先に取り上げた「ウエスト・サイド・ストーリー」('21年/米)と同じくリメイク作品。ジョン・ギラーミン監督の「ナイル殺人事件」('78年/英)のリメイク作に当たりますが、ケネス・ブラナーとしては、「オリエント急行殺人事件」('17年/米)に続いてアガサ・クリスティ原作の映画を監督し、またエルキュール・ポアロを演じたリメイク作になります。

 冒頭、1914年の第1次世界大戦時、ベルギーの部隊に所属していた若き兵士のポアロがいて、そこで上官を爆発トラップで失い、自分も爆発で顔面を怪我し、この顔の傷を隠すため、そして亡き上司への敬意として、ポアロは口髭を持つことにしたというバックグラウンドがプロローグ的にありますが、ポアロの人物像をかなりアレンジしていることになり、英国の「アガサ・クリスティ財団」などはどう思っているのでしょうか、気になります。

「ナイル殺人事件」1355.JPG 登場人物もかなりアレンジしているみたい。旧作でアンジェラ・ランズベリーが演じたサロメ・オッタボーンは作家からソフィー・オコネドー演じる黒人ブルース歌手に、したがって旧作でオリヴィア・ハッセーが演じたサロメの姪ロザリー・オッタボーンも、黒人女優レティーシャ・ライトに。この辺りは人種的多様性であるとしても、彼女と恋仲にあり、また、ポアロの親友でもあるトム・ベイトマン演じるブークは「オリエント急行殺人事件」より続投であるものの、旧作にはないキャラクターで、しいて言えばデヴィッド・ニーヴンが演じたジョニー・レイス大佐でしょうか。

「ナイル殺人事件」1500.JPG レティーシャ・ライトは「アベンジャーズ」シリーズの"シュリ"役の女優だけど、莫大な財産を相続した若き女性リネット・リッジウェイを演じたガル・ガドットも、「ワンダーウーマン」シリーズで、イスラエルでの兵役時代の経験が"ワンダーウーマン"の役作りに役立ったと語っていた女優で、ケネス・ブラナーはその系統の女優が好きなのでしょうか。旧作でリネット・リッジウェイを演じたロイス・チャイルズが醸す富豪の鼻もちならなさや危うさが、今回のガル・ガドットには感じられないと、朝日新聞の編集委員も書いていました。

 ただ、この映画が旧作に比べて最も弱いのは、リネットの旧知の友人でサイモンの元婚約者であるジャクリーン・ド・ベルフォール:を演じたエマ・マッキーで、なぜこの重要な役に駆け出しのような女優を使ったのかよくわかりません。旧作がミア・ファローだけに差が大きいです。また、ミア・ファロー演じるジャクリーンがどこか病的な雰囲気を持っていて、とても男性に好かれそうなタイプには見えないからこそ、ラストのどんでん返しが効くわけで、エマ・マッキーはあまりに美人で魅力的過ぎる気がしました。

「ナイル殺人事件」1359.JPG ケネス・ブラナーが演じるポアロが、被疑者(乗客ほぼ全員だが)に対して強い詰問口調なのも気になりました。挙句の果ては、犯人の前に親友を晒して第三の殺人の犠牲者にしてしまい(原作でも第三の殺人はあるが)、乗客の誰かがポワロを"疫病神"だと非難したけれども、実際その通りになってしまっている印象も受けます。

 旧作の個人的評価○(★★★☆)に対してこの作品の評価は△(★★★)。いろいろケチをつけましたが、ケネス・ブラナーという人は才人だと思います(本作の1つ前の監督作である「ベルファスト」('21年/アイルランド・英)がアカデミー賞作品賞にノミネートされている)。朝日新聞の映画評では彼は"鬼才"となっていて、"鬼才"にはリメイク作品は向かないのではないかとも。確かに、「ウエスト・サイド物語」をリメイクしたスピルバーグ監督のような"職人"の方が向いているのかもしれません。

 ただし、この作品も、原作も読んでおらず、旧作も観ていない人は充分楽しめるのではないでしょうか。しかしながら、それは原作の良さに負うところが大きいのではないかと思います。

朝日新聞(夕刊)2022年3月4日
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「ナイル殺人事件」1356.JPG「ナイル殺人事件」●原題:DEATH ON THE NILE●制作年:2022年●制作202203032.jpg国:アメリカ●監督:ケネス・ブラナー●製作:ケネス・ブラナー/サイモン・キンバーグ/リドリー・スコット/マーク・ゴードン/ジュディ・ホフランド●脚本:マイケル・グリーン●撮影:ハリス・ザンバーラウコス●音楽:パトリック・ドイル●原作:アガサ・クリスティ●時間:127分●出演:トム・ベイトマン/アネット・ベニング/ケネス・ブラナー/ラッセル・ブランド/アリ・ファザル/ドーン・フレンチ/ガル・ガドット/アーミー・ハマー/ローズ・レスリー/エマ・マッキー/ソフィー・オコネドー/ジェニファー・ソーンダース/レティーシャ・ライト●日本公開:2022/02●配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン●最初に観た場所:上野・TOHOシネマズ上野(シアター3)(22-03-03)(評価:★★★)
TOHOシネマズ上野.jpgTOHOシネマズ上野2.jpgTOHOシネマズ上野3.jpgTOHOシネマズ上野
総座席数1,424席(車椅子席16席)。
スクリーン 座席数 スクリーンサイズ
1 97席 7.7×3.2m
2 250席 12.0×5.0m
3 333席 14.4×6.0m
4 95席 8.0×3.3m
5 112席 9.7×4.0m
6 103席 10.0×4.2m
7 235席 13.9×5.8m
8 199席 12.0×5.0m
 
   
ガル・ガドット in「ナイル殺人事件」(2022)/レティーシャ・ライト in「ナイル殺人事件」(2022) 
ガル・ガドット in 「ナイル殺人事件」(2022) .jpg レティーシャ・ライト ナイル.jpg
ガル・ガドット in「ワンダーウーマン」(2017)/レティーシャ・ライト in「ブラックパンサー」(2018)
ガル・ガドット  ワンダーウーマン 2017.jpg レティーシャ・ライト「ブラックパンサー」.jpg


ミア・ファロー_3.jpgナイル殺人事件 べティ・デイヴィス.jpgナイル殺人事件 オリヴィア・ハッセー.jpg「ナイル殺人事件」●原題:DEATH ON THE NILE●制作年:1978年●制作国:イギリス●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ジョン・ブラボーン/リチャード・グッドウィン●脚本:アンソニー・シェーファー●撮影:ジャック・カーディフ●音楽:ニーノ・ロータ●原作:アガサ・クリスティ「ナイルに死す」●時間:140分●出演:ピーター・ユスティノフ/ミア・ファローベティ・デイヴィス/アンジェラ・ランズベリー/ジョージ・ケネディ/オリヴィア・ハッセー/ジkinopoisk.ru-Death-on-the-Nile-1612353.jpgkinopoisk.ru-Death-on-the-Nile-1612358.jpgョン・フィンチ/マギー・スミス/デヴィッド・ニーヴン/ジャック・ウォーデン/ロイス・チャイルズサイモン・マッコーキンデール/ジェーン・バーキン/サム・ワナメイカー/ハリー・アンドリュース●日本公開:1978/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:日比谷映画劇場(78-12-17)(評価:★★★☆)

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