【1515】 ◎ パーシー・アドロン 「バグダッド・カフェ」 (87年/西独) (1989/03 KUZUIエンタープライズ) ★★★★☆

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テーマ曲「コーリング・ユー」がよく、"情"の世界を描いているのにカラっと乾いている。

バグダッド・カフェ.jpg バグダッド・カフェ dvd.jpg  バグダッド・カフェ blueray.jpg    『バグダッド・カフェ』(1987).jpg
バグダッド・カフェ 完全版 [DVD]」「バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版 Blu-ray

バグダッド・カフェ1.jpg 独ローゼンハイムから米国に旅行に来ていた中年夫婦はラスベガス近郊でケンカとなり、夫(ハンス・シュタードルバウアー)は妻ジャスミン(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)をハイウェイの途中に置いて行ってしまう。ジャスミンは大きなトランクを抱えて砂漠を歩き、寂れたモーテル兼カフェ兼ガソリンスタンド「バグダッド・カフェ」に辿り着くが、カフェの女主人ブレンダ(CCH・パウンダー)も夫婦ゲンカをして夫を追い出したばかりで、息子や娘は勝手気ままで母親を手伝おうともしない。そこにステイすることにしたジャスミンは、勝手に店を掃除してしまうなどし、そうした彼女の振る舞いが気に入らないブレンダは最初の内は彼女を嫌うが―。

 '87年の西ドイツ映画ですが、'89年に渋谷のシネマライズで公開され、じわじわとヒット、'94年には完全版がリヴァイバル上映され、更に'08年に、パーシー・アドロン監督が全てのカットの色と構図を調整し直した「バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版」が製作され、日本でも'09年にユーロスペースなどで公開、'10年にはそのブルーレイ版が販売されるなど、根強い人気の作品です。

 先ず、ジェヴェッタ・スティールが歌うテーマ曲「コーリング・ユー」がよく、砂漠に佇むカフェという一見無機質に思えるような設定とマッチしていて、更に、その中で繰り拡げられる緩やかな流れの人間ドラマともマッチしています。

バグダッド・カフェ3.jpg 「バグダッド・カフェ」(奇妙な名前だが、ルート66沿いに実在するモーテルの名)には、女主人ブレンダ(CCH・パウンダーが好演。ギアナ出身の英国育ちで、今でこそ米国の映画やTVドラマなどでお馴染だが、当時はこれが映画での初の大役)のほかに、日々虚無的に夜遊びに明け暮れる娘、カウボーイ気取りの売れない画家、ピアノの弾けないピアニストなどが集い、そこはまるで社会の吹きだまりのような場所です(ローザ・フォン・プラウンハイムの「ベルリンブルース」('86年/西独)にも通じる"西ドイツ"映画っぽい雰囲気)。

「バグダッド・カフェ」.jpg そこにある時から滞在することになった太っちょの外国人女性ジャスミンによってそうした人々皆が癒されていく過程が、劇的な出来事を挿入しているわけでもないのに、旨く描かれています(ジャスミンを演じるマリアンネ・ゼーゲブレヒトはあまり喋らないが、存在感があってその印象は強烈)。そしてやがては、ジャスミンに皆の人気が集まるのを嫉妬していた女主人ブレンダも―。

バグダッド・カフェ2.jpg 労働許可証を持っていないため強制送還されたジャスミンが、再びこの地を訪れブレンダと再会する場面は感動的ですが、老画家ルディのジャスミンによせる恋心(「シェーン」の敵役、故ジャック・パランスが好演)もほのぼのとしたタッチで描かれていて、最後はロマンチックな方法で彼女の労働許可証の問題を解決します。

 "友情"や"愛情"など色々な意味での"情"の世界を描いたという点では日本的な雰囲気もあり、その辺りが日本でも大いに受けた理由かも知れませんが、バックグランドが、まさにこの映画に出てくる砂漠や突き抜けるような青空のようにカラッとしていて、この透明感がまたいいのでしょう(日本映画に通じるものがあっても、日本ではこういう作品は撮れないだろうなあ)。

BAGDAD CAFE 1.jpg『バグダッド・カフェ』(1987)2.jpg "ロード・ムービー"ならぬ"ロードサイド・ムービー"。その"ロードサイド"にあったのは、"血縁"に拠らない「心の家」「アナザー・マイホーム」だったといった感じでしょうか。癒されたい気分の時に観るのにお奨めです。

クリスティーネ・カウフマン in「バグダッド・カフェ」('87年)/「モルグ街の殺人」('71年)
クリスティーネ・カウフマン バグダッド・カフェ.jpg クリスティーネ・カウフマン モルグ街の殺人.jpg
Out of Rosenheim(1987)
Out of Rosenheim(1987).jpg
バグダッドカフェ.jpg「バグダッド・カフェ」●原題:BAGDAD CAFE(OUT OF ROSENHEIM)●制作年:1987年●制作国:西ドイツ●監督:パーシー・アドロン●製作・脚本:パーシー・アドロン/エレオノーレ・アドロン●撮影:ベルント・ハインル●音楽:ベルント・ハインル●時間:91分●出演:マリアンネ・ゼーゲブレヒト/CCH・パウンダー/ジャック・パランス/クリスティーネ・カウフマン/モニカ・カローン/ダロン・フラッグ/ジョージ・アキラー/G・スモーキー・キャンベル/ハンス・シュタードル●日本公開:1989/03●配給:KUZUIエンタープライズ●最初に観た場所:シネマライズ渋谷(地階) (89-03-05) ●2回目:シネマライズ 渋谷(地階)(89-03-12) (評価★★★★☆)
2009年ニュー・ディレクターズ・カット版を渋谷ユーロスペースなどで上映
「バグダッド・カフェ」3.jpg
シネマライズBF館(前・シネマライズ渋谷)
シネマライズ BF.jpgシネマライズ2.jpgシナマライズ 地図.jpgシネマライズ渋谷1986年6月、渋谷スペイン坂上「ライズビル」地下1階に1スクリーン(220席)でオープン。1996年、2階の飲食店となっていた場所に2スクリーン目を増設。「シネマライズBF館」「シネマライズシアター1(後のシネマライズ(2F))(303席)」になる。2004年、3スクリーン目、デジタル上映劇場「ライズX(38席)」を地下のバースペースに増設。地下1階スクリーン「(元)シネマライズ渋谷」2010年6月20日閉館、跡地はライブハウス「WWW」に(地下2階「ライズⅩ」2010年6月18日閉館、地上2階「シネマライズ」2016年1月7日閉館

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This page contains a single entry by wada published on 2011年7月23日 00:52.

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