【1098】 ○ マイケル・カーティス 「汚れた顔の天使」 (38年/米) (1939/11 ワーナー・ブラザーズ) ★★★★

「●か行外国映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2444】 ジョン・カーニー 「ONCE ダブリンの街角で
「●ハンフリー・ボガート 出演作品」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ

ストレートに感動したが、神父の頼みは、いくら相手と強い友情で結ばれているとは言え、酷すぎるのでは?
Angels with Dirty Faces(1938).jpg汚れた顔の天使ポスター.jpg 汚れた顔の天使1.jpg    汚れた顔の天使5jpg.jpg 
Angels with Dirty Faces(1938)/ポスター/「汚れた顔の天使 特別版 [DVD]」/スチール

汚れた顔の天使4.jpg 幼い頃に不良仲間だったロッキー(ジェームズ・キャグニー)とジェリー(パット・オブ「汚れた顔の天使」1.jpgライエン)だが、ロッキーは、2人でやった盗みの罪を自分1人で被ったことから転落の道を辿り、今やいっぱしのギャングとして、街の不良少年のヒーローとなっていた。ある日、刑務所を出所したばかりのロッキーは、今では神父となって貧しい少年達にスポーツを教えているジェリーを訪ね、旧交を温めるも、一方で、金を巡るトラブルで悪徳弁護士(ハンフリー・ボガート)を殺し、警官との大立ち回りの末に逮捕され、裁判で死刑宣告を受ける―。

Humphrey Bogart & James Cagney

汚れた顔の天使3.jpg 自らが死刑なるというのに「電気椅子に座るのなんか、床屋の椅子に座るのと同じだ」と言って平然としているロッキー。このままロッキーにギャングに相応しい堂々とした死に方をされては、少年達がますます彼を敬愛することになるであろうことを危惧したジェリーは、ギャングらしく死のうとするロッキーに対し、全く逆の行動を取るよう最後の頼みを託す―。

 ストレートに感動しました。ちょっと甘い感じもある作品ですが(強面のギャング役で鳴らしたですジェームズ・キャグニーがこの役を受けるかどうか当初は危惧された)、キャグニーがギャングぶりを発揮する部分については犯罪映画としてサスペンスフルかつロッキーの非情ぶりがストレートに描かれていて(脇役時代と言え、あのハンフリー・ボガートが裏切り者としてあっさりキャグニーに殺されてしまうぐらい)、ギャング映画としてのリアリティが、物語に厚みを持たせているように思いました。

『汚れた顔の天使』(1938).jpg でも、ちょっと冷静になって考えると、神父がロッキーに託した願いというのは、ロッキーにとって、自分のように誤った道を歩むことのないようにという子供達へのメッセージになるのかも知れないですが、同時に、自ら人生を全否定せしめるようなものであり、それを受ける側(ロッキー)もともかく、頼む方(神父)も、いくら相手と強い友情で結ばれているとは言っても、よくこんな酷なことを頼んだなあという感じも。ただし、日本でも「大岡越前」でほぼ同じストーリーの話があるそうです。

「汚れた顔の天使」3.jpg 結局、ロッキーは刑吏らにも嘲られながら死んでいくわけで、死に行く者に対してこんなキツイお願いはないだろうなあと。

 ロッキーは土壇場で死刑が怖くなったともとれ、和田誠氏によれば、キャグニー自身、後に自伝で「どちらともとれるように演じた」と語っているそうですが(『お楽しみはこれからだ PART3』 ('80年/文藝春秋))、最後に友人の頼みを聞き入れたととるのがスジでしょう。ジェームズ・キャグニーはこの演技で、ニューヨーク映画批評家協会賞主演男優賞を受賞しています。

 神父は、いつか自分が面倒を見ている子供達が立派な大人になった時に、ロッキーの最期についての真実を話してあげるべきでしょうね。ある意味、ロッキーは、神父が将来そうするであろうことを確信しているから、神父の願いを聞き入れたのかも。そう考えないと、リアリティが弱いような...。

Yogoreta kao no tenshi (1938).jpg「汚れた顔の天使」2.jpg「汚れた顔の天使」●原題:ANGEL WITH DIRTY FACE●制作年:1938年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・カーティス●製作:サミュエル・ビショフ●原案:ローランド・ブラウン●脚本:ジョン・ウェクスリー/ウォーレン・ダフ/ローランド・ブラウン●撮影:ソル・ポリート●音楽:マックス・スタイナー●時間:98分●出演:ジェームズ・キャグニー/パット・オブライエン/ハンフリー・ボガート/アン・シェリダン/ジョージ・バンクロフト●日本公開:1939/11●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★★)
Yogoreta kao no tenshi (1938)

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1