【434】 ○ 司馬 遼太郎 『功名が辻 (上・下)』 (1965/06 文芸春秋) 《『功名が辻 (全4巻)』(1976/01 文春文庫)》 ★★★★

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プロセスにおいて痛快な出世物語。しかし、その結末は...。

功名が辻 新装版 文庫 全4巻 完結セット.jpg功名が辻1.jpg 功名が辻 1.jpg 功名が辻 2.jpg 功名が辻 3.jpg 功名が辻 4.jpg  NHK大河ドラマ 功名が辻.jpg
文春文庫〔旧版〕(全4巻)(旧版表紙絵:村上 豊)/〔新装版〕『功名が辻〈1〉』『功名が辻〈2〉』『功名が辻〈3〉』『功名が辻〈4〉』/2006年NHK大河ドラマ「功名が辻」上川隆也・仲間由紀恵
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 1963(昭和38)年10月から1965(昭和40)年1月にかけて各地方紙に連載された長編小説で、主人公は、戦前は小学校の国定教科書にまでもの載っていたという「山内一豊の妻」であり、司馬遼太郎(1923‐1996)の小説で女性が主人公というのは珍しいようです。

 しかしながら、読んでいて、司馬遼太郎はこの物語で、山内伊右衛門一豊の妻にばかりに評価が集まる世評に対し、信長・秀吉・家康に仕え一国の主となることができた伊右衛門の、一見凡庸だが粘り強く実直な人間性を描こうとしたのだと、最初は思いました。 

 夫を傷つけずに諭す聡明な妻と、彼女に諭される夫の掛け合いや対比を、ユーモアを交え暖かく描き、夫が功名を得てハッピーエンドへ向かう―。

 しかし物語終盤の土佐入城後から、伊右衛門に対する描き方が突き放したようになっていると感じます。そして終章における、土着の反乱者への虐殺命令を下す夫に対する妻の〈成功とはこれであったか〉という虚無感 ―。

 プロセスは痛快な出世物語と読めるこの小説の寂しい結末が、作品の価値を貶めることはないと思いますが(むしろ逆)、そうした議論とは別に、この小説がもとは新聞連載小説であったことを考えると、作者が当初から考えていた結末だろうかと憶測させるものがありました。それぐらい、伊右衛門の描き方が急に変わっていますから...。

功名が辻 ドラマ.jpg '06年にNHKで大河ドラマになっていますが、ドラマでは当然のことながら、原作の最後に見られる夫婦の齟齬などは描かれるはずもなく、2人は永遠のよき夫婦であったということになっています。
  
「功名が辻」●演出:尾崎充信/加藤拓/梛川善郎●制作:大加章雅●脚本:大石静●音楽:小六禮次郎●原作:司馬遼太郎●出演:仲間由紀恵/上川隆也/柄本明/浅野ゆう子/生瀬勝久/田村淳/乙葉/武田鉄矢/前田吟/多岐川裕美/津川雅彦/松本明子/成宮寛貴/筒井道隆/石倉三郎/高山善廣/大地真央/和久井映見/永作博美/勝野洋/苅谷俊介/名高達男/中村橋之助/榎木孝明/山本圭/江守徹/香川照之/長澤まさみ/中村梅雀/近藤正臣/西田敏行/柄本明●放映:2006/01~12(全49回)●放送局:NHK
舘ひろし(織田信長)/西田敏行(徳川家康)/香川照之(六平太)・仲間由紀恵(千代)/津川雅彦(不破市之丞)
功名が辻 信長.jpg 功名が辻 家康(西田敏行).jpg 功名が辻5koumyou.jpg 津川雅彦 功名が辻 不破市之丞.jpg
柄本明(豊臣秀吉)
「功名が辻」柄本.jpg

「功名が辻」出演者.jpg

【1965年単行本・1974年改訂[文芸春秋 (上・下)]/1976年文庫化・2005年改訂[文春文庫 (全4巻)]】
 
《読書MEMO》
●「伊右衛門殿はよき妻女を持たれている」そのうわさほど、山内家の奥行きの深さを印象させるものはない。(中略)千代は、馬などよりも、その「うわさ」を黄金十枚で買ったといっていい。馬は死ぬ。うわさは死なないのである。(著者)

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